給食の食中毒はなぜ消えないか
パンで食中毒、と聞いて違和感を持つ人は多いと思う。最後に高温で焼くのだから、菌は死ぬはずだ、と。
大阪・熊取町の小中学校で起きたノロウイルス食中毒は、その直感を裏切った。給食のパンが原因で、症状を訴えた子どもと教職員は633人。複数の患者と、パンを製造した業者の従業員からノロウイルスが検出された。
焼いたあとに人が触れていた。数を数える、箱に詰める、最終チェックをする。殺菌の山場は工程の前半にある。汚染の機会はその後ろに残る。パンの中心まで火が通ったという事実は、冷めてから入る人の手については何も保証しない。安全のピークと危険のピークが、時間軸でずれている。
加熱信仰の穴
この事例にある救急医がつけていた指摘が鋭い。使い捨て手袋は手洗いの代わりにならない、と。同じ手袋で触り続ければ、むしろ汚染を運ぶ媒体になる。手袋をしているから清潔、という理解は危うい。手指衛生を飛ばしたまま手袋だけ替えずに作業を続ければ、素手より始末が悪いこともある。
同じ構図はすぐ近くでも起きていた。
岡山県早島町の早島中学校。給食を食べた204人のうち72人が腹痛や嘔吐、下痢を訴えた。患者の便からも、調理従事者の便からもノロウイルスが出た。岡山県では2026年に入ってノロの食中毒が6件。前年は通年で4件だから、年の途中ですでに上回っている。
ここで効いてくるのが、ノロは無症状でも感染しうるという性質だ。早島の発表も、感染していても症状が出ないことがある、とわざわざ触れている。本人に自覚がない以上、「体調の悪い人を調理場に入れない」という症状ベースのチェックには、原理的な限界がある。
熊取も早島も、調理に関わった人からウイルスが出た。個人の不注意で片づく話ではない。無症状の保菌者が現場に立ちうる、という前提に対して、現場の善意だけで守りきるのは無理がある。
59年ゼロの会社
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