定年退職して2年が経ちました3 「働かないという選択、妻の返答」
働かないという選択、妻の返答
65歳まで再雇用される予定だった私が、
妻に相談もなく、60歳で辞める――
そんな話、簡単に通るはずもありません。
でも、言わなければ始まらない。
…正直、怖かった。
「ちょっと落ち着いて話があるんだけど」
「何の話?」
「仕事の話で…」
「仕事?」
「……再雇用のことだけど、辞めようかなって…」
「え?じゃあ、どうするのよ?」
「退職金で、65歳までは問題なく生活できると思う」
「何?再雇用辞めて、他でも働かないつもり?」
「……はい。おっしゃる通りです」
少し沈黙があって、妻が言った。
「ええ〜、朝昼晩、食事の支度して片付けして、あなたとずっと顔合わせるの〜? 嫌ですよ〜」
「……本当に働かないの?」
「……はい」
少しの間、妻は黙っていた。
「生活費は大丈夫なんでしょうけど……ちょっと考えさせてください」
数日後。
「あなた、ちょっといい?」
「は、はい」
「あなたが退職するなら、私、パートに行きます」
「へ?」
「ご飯の支度はしておきます。洗い物は自分でやってくださいね」
「は、はい……」
こうして、再雇用を辞めるという話は、
妻にギャーギャーわめかれることもなく、
「私がパートに出るから」という形にすり替わって終わった。
ちなみに、退職した日の「お疲れ様でした」は、なかった。
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