見出し画像

水栓の介護リフォーム

「あなた、お母さんまた水出しっぱなしでしたよ。いい加減、言ってやってくださいよ」

​妻の言葉には、隠しきれない疲労と苛立ちが混じっていた。

認知症を患う母との暮らし。

些細な「し忘れ」が積み重なり、家族の心の平穏を少しずつ削っていく。

洗面台から響くチョロチョロという水の音は、今の妻にとって苛立ちの材料でしかなかったのだ。

​しかし、母に注意を促そうとした私の頭に、ふとした疑問が浮かんだ。

「母は本当に『閉め忘れている』のだろうか。単に『閉める力』が足りないのではないか?」

​我が家の洗面台は、昔ながらの『2ハンドル水栓』だ。

左右のハンドルをギュッと捻るタイプで、長年コマパッキンを交換していないせいか、近頃はある程度の力を込めないと水が止まりきらない。

​もし、母が自分なりに精一杯ハンドルを回しているのだとしたら。

それでも水が止まらないのだとしたら、それは母の不注意ではなく、この家の「不備」ではないか。

​私は翌日、馴染みの工務店に連絡し、早速リフォームする事にした。

古い洗面台ゆえ、最新の「シングルレバー混合水栓」を据えるには洗面台と新しい水栓の取り合いサイズが合わず、業者は申し訳なさそうに、隙間をアルミテープで補修する不格好な仕上がりとなってしまった。

けれど、指一本で操作できる軽やかさがそこにはあった。

​それ以来、妻から水の出しっぱなしを報告されることはなくなった。

​個人の「できないこと」を責めるより、負担を分かち合う道具を探すこと。

介護に必要なのは忍耐だけでなく、こうしたちょっとした「気づき」と「工夫」なのだと。

#スキしてみて
#介護リフォームの提案
#エッセイ
#水栓のハンドルを閉めるのは大変
#要介護者の目線で考える
#介護は忍耐だけではやり切れない
#混合水栓シングルレバー

いいなと思ったら応援しよう!

chintakaこと柊 聖月 私の活動の励みになります。記事が気に入りましたら、また、よろしければ応援お願いします!

この記事が参加している募集