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今から30年前ベランダの壁にキノコが生えました

2026年2月。

今から33年前、私は家を新築した。

​新築場所は、当時の自宅から車で約1時間。

その気になれば、いくらでも現場を見に行くことはできた。

​だが……私は何も知らなかった。

建築の知識も、水回りの本当の恐ろしさも。

​そしてその無知は、完成した後も続いていた。

​予兆と誤算

​入居して3年ほど経った頃。

ベランダのサイディング壁が、ボロボロと剥がれていることに気づいた。

​「まあ、表面だけだろう」

​そう軽く考え、市販のセメント用接着剤で補修を試みた。

だが、剥がれは止まらない。

それどころか、じわじわと侵食の範囲は広がっていった。

​そして……ついに「そいつ」は姿を現した。

キノコだ。

​壁の向こうの真実

​「え、壁の中からキノコ……?」

​冗談ではない。

意を決して内側のサイディングを部分的に剥がしてみると、そこには目を疑う光景が広がっていた。

​中の木材は無残に黒く腐り、茶色いキノコが不気味に群生していたのだ。

壁がボロボロになっていたのは、膨潤した木材と、増殖を続けるキノコの圧力に内側から押し出されていたからだった。

​原因を探ると、すぐに答えは出た。

「笠木(かさぎ)」のコーキングが、隙間だらけだったのだ。

​そこから長年、雨水が音もなく染み込み続けていた。

紛れもない、プロにあるまじき施工不良だった。

​怒りと、拭えない不安

​私は、ブチ切れた。

証拠写真を撮り、メーカーの社長宛に叩きつけた。

​「あんたの会社は、いつもこんな仕事をしているのか?」


​後日、慌ててリフォーム担当者が現れた。

交渉の末、無償での修理が決まり、ベランダの壁は見違えるほど立派になった。

​だが……。

笠木は古いものが再利用され、肝心のコーキングもどこか甘さが残る仕上がりだった。

​「まあ、無償だしな……」

当時はそう自分を納得させた。

​祈りの日々

​あれから数十年。

表面上、立派な壁が崩れることはない。

​だが、「崩れない」ということは、

「中の状態が、もう誰にも分からない」ということでもある。

​33年経った今も、私は1階の壁紙に目を向ける。

どこかに染みが出ていないか。

あの茶色い影が潜んでいないか。

​今日も私は、静かに祈るような気持ちで家を見守っている。

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