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一万円の安全対策費

2026年2月、今から数年前。

テレビアンテナの設置から15年が経過した頃、テレビの映りが悪くなってきた。

長年使い続けた設備の寿命だと思い、近所のホームセンターに交換工事を依頼した。

​窓口で告げられたのは、少し意外な条件だった。

「見積もり後にキャンセルされた場合、調査料をいただきます」


​金額は3,000円から5,000円ほどだった記憶がある。

どのみち直すつもりだったので、私はその条件を飲み、見積もりを依頼した。

​違和感のある項目

​数日後、手渡された見積書の中に、どうしても気になる項目があった。

『安全対策費:10,000円』

​「これ、具体的には何をするんですか?」

「作業者の落下防止対策ですね。今の時代、安全確保は必須ですので」

​なるほど、昨今のコンプライアンス重視の世の中だ。作業員の命を守るための経費なら仕方ない……。

私は自分を納得させ、契約書にサインをした。

​目の前で行われた「安全対策」

​そして迎えた工事当日。

私は、作業の様子を少し離れた場所から眺めていた。

​だが、作業者が「安全対策」として行った動きを見て、思わず言葉を失った。

彼は、持参した脚立をベランダの柵に「紐」で縛り付けただけだったのだ。

​(え……。これで、1万円?)

​怒りというより、あまりの拍子抜けに膝から崩れ落ちそうになった。

確かに「落下防止」という説明に嘘はないのかもしれない。だが、私が想像していたプロの安全設備とは、あまりにかけ離れた光景だった。

​というより、本当に安全意識はあるのだろうか?

​結局、家を守るのは「自分の目」

​以前、カーポートをホームセンターに依頼してアフターフォローで後悔したことがあった。

今回もまた、同じ轍を踏んでしまった。

​見積書をチェックする際、金額の多寡だけを見ていてはいけない。

その「中身」が自分の常識と照らし合わせて妥当かどうか。

それを現場の感覚で問い直す必要があったのだ。

だが、ここで一つ大きな壁にぶつかる。

今の時代、本当の意味での「専門業者」を探すのは、砂漠で針を探すようなものではないか?

​今回のアンテナ工事だって、昔ながらの「街の電気屋さん」が近所にあれば、きっと話は早かった。

顔見知りのよしみで、屋根に登るついでに他の不具合も見つけてくれたかもしれない。

​しかし、今やそんな個人店は次々と姿を消し、私たちは「とりあえず」で大手ホームセンターや量販店のカウンターに並ぶ。

​ネットで検索すれば業者は無限に出てくるが、そこに並ぶのは「広告費を払った順」のリストだ。

信頼できる専門業者を根気よく探す。

十数年前、私は良い工務店と出会った。
真摯な対応と良心的な価格が気に入っている。

「次はここに頼もう」

そう心に決めた。

​家を守るということは、業者選びという「終わりのない宝探し」を続けることと同義なのかもしれない。

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