女子校の文化祭で始まる恋(リライト版)【第10話】彼女の友達
安奈の高校の文化祭で告白してから二年が経ち、二人は高校三年生になっていた。その間、お互いの家でおうちデートをしたり、手渡しの文通を重ねたり、大和が安奈の誕生日にネックレスを贈ったりした。バレンタインには安奈手作りのチョコが大和に渡されもした。
ゆっくりと、しかし順調に育んできた二人の恋は、未来へ続いていく……はずだった。
最上級生になった大和は、立ち上げたクラブでの責任も重くなり、さらに文化祭実行委員長を任されたことで、学校からの帰宅時間が一気に遅くなっていた。
それに加えて週末の掛け持ちバイトや夏休みのバイトもあり、朝デート以外で安奈と話す時間はほとんどなくなっていたのだった。
−安奈の手紙−

『こんばんは。……そう、この手紙を大和くんの家のポストに入れるの、こんばんはの時間なんだよ。だから読むのは明日になるのかな〜?
最近話ができるのって、朝だけになっちゃったね。
私の部屋から大和君の部屋の明かりが見えるんだけど、夜中まで電気が点いてたり、逆にいつまでも点かなかったり……何をしてるのかな〜って気になっちゃう日が多くなりました。
帰りが遅くなる日はバイトなのかな? でも、かなり遅いよね?(ごめんね、監視してるみたいで……)
夜遅くまで明かりが点いているのは、時期的に中間テストの勉強なんだろうな〜って分かるけど、早く前みたいに長電話できるようになると良いな……。
じゃあ、おやすみなさい。
安奈』

−翌朝−
「おはよう」
「おはよう。ねえ大和くん、中間テストはいつから?」
「来週かな」
「勉強はどう?」
「頑張ってるつもりだけど……。でも俺、進学しないから、勉強を頑張るのも就職試験までかな」
「もう将来のこと、決めてるの?」
「うち貧乏だったから早く稼ぎたいんだ。欲しい物もあるし、自分のことは自分でってね」
「そうなんだ……」
安奈は(手紙、まだ見てないのかな……)と思いながらも、会話を続けた。
「じゃあさ、バイトって何時までやってるの?」
「ラストを任される時は、夜10時過ぎるかな」
「え、帰ったらご飯食べて、お風呂に入って……いつ勉強するの?」
「だから、真夜中になる時もあるよ」
「そっか……。風邪引かないようにね」
「うん、ありがとう」
安奈は、通学路を歩きながら不安に苛まれていた。
(週末のバイトがそれじゃ、週末の夜電はできないか……。でも最近、ゆっくり話す時間が本当になくなっちゃったな。大和くんはそれで良いのかな……? 大和くん、かなり鈍感でデートらしいデートもしたことないし……『大切に思ってる』って言ってくれたの、信じて良いのかな……)
−夏休み−
夏祭りの日。大和のバイト先に安奈と親友の内海真理が遊びに来た。甘味を少しだけオマケして出せたものの、基本的に大和は厨房担当だ。安奈とは「オマケしておいたから」と一言二言交わすのが精一杯で、大和の暑くて短い夏休みは終わった。

そして、夏休みが終わった週末のある日。安奈の親友である真理が、突然バイト先に現れた。
「今日からアルバイトすることになりました。内海です、よろしくお願いします!」

「えっ!? 内海さん……な、何してるの?」
「家、母子家庭なんだ。だから……」
「でも、何でここに?」
「……ここで大和くんと一緒に働きたかったの」
「え?」
「私、大和くん推しなんだ!」
「えっ、え〜!? でも、まずいよ……」
「それから、私のことは『真理』って呼んでね」
「いや、だから……佐藤さんに何て言えば……」
「安奈には内緒!」
そう言いながら、真理は裏で安奈にアレコレと話しまくっていた……らしい。
安奈にとっては自分との時間が減っているのに、真理とは毎週末会う関係になっていること。そして真理からかなり尾ひれのついた話を聞かされていたことで、二人は出会ってから一度もしたことがなかった喧嘩をすることになった。
「大和君、真理と毎週会ってるんだって?」
「う、うん……いきなりバイト先に来ちゃってさ」
「何時間も仲良く話してるって、本当?」
「バイト上の仕事のやり取りだよ」
「……でも、ずっと一緒なんでしょ? 私との時間は?」
「いや、それは……。でも、安奈のことは……」
「言い訳は良いよ。大和くん、私に何も言わなかったじゃん」
「……ごめん。でも、真理とは何も……」
「真理?」

安奈は驚きを声にした。
「もう名前で呼ぶ仲なの?」
「いや……内海さんが、そう呼べって。彼女、苗字で呼ぶと返事しないんだ……」
「私の名前を呼ぶのには、一年以上もかかったのに……真理にはすぐなんだ」
安奈は涙を浮かべ、唇を強く噛んだ。
「大和くん……『大切に思ってる』ってあの言葉、私、嬉しかったし、忘れてない。でも、今の大和くん……分かんなくなっちゃった。真理も真理だよ……。もう親友には戻れない」
安奈はそのまま背中を向け、自宅へと消えてしまった。
翌朝から、彼女はいつもの待ち合わせ場所に姿を見せなくなり、二人の朝デートはなくなった……。

季節は秋祭りの頃。
この時の俺は、まだ安奈のことが好きだった。けれど、毎週何時間も一緒に過ごす真理に惹かれている俺も確かにいて……安奈は、それを敏感に感じ取っていたのかもしれない。
本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。
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