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女子高の文化祭で始まる恋(リライト版)【第9話】バレンタイン、想いを伝える朝

高校一年の秋、文化祭で大和に告白されたけれど、最初のバレンタインデーに安奈はチョコをあげなかった。あの日、自分の中で「大和くんが好きだ」という確信が持てず、気持ちの整理ができていなかったのだ……。だからと言って「義理チョコ」で済ませるような関係でもないと思っていた。

​でも、朝デートや交換日記のような手紙のやり取りを重ねて、大和の優しさに触れてきた。そしてあの夜……電話で相手を間違えたとは言え、姉にはっきりと「好きだ」と告白もしているし、何より彼の文化祭では自分の絵に【大好きな彼女】なんてタイトルまで付けてくれていた。

​もう迷わない。私、大和君が好きだ。

​だから今度のバレンタインデー、チョコを渡して自分の気持ちを伝えよう。大和君はお姉ちゃんにはっきり「好き」と言ったし、文化祭であんな絵も描いてくれたんだから。大丈夫……、きっと受け取ってくれる。

週末、安奈は地元商店街ではなく、電車で一時間ほど離れた街のデパートに向かった。そこには有名な老舗デパートがあり、大きなバレンタインの特設コーナーがあるからだ。

​「うわあ、いっぱいある……あ、これ可愛い。あ、こっちは大人っぽい感じ……。大和君、どんなのが良いかな〜」

​安奈がソワソワしながらチョコを探していると、店員が声をかけてきた。

​「バレンタインチョコですか? 差し上げるお相手はどんな方か伺ってもよろしいですか?」

「えっと、まだはっきりお付き合いしてないんです。だから、きっかけにしたくて……」

「でしたら、こちらがお勧めですよ」

示されたのは、手作り用のキットだった。

​「難しくありませんか?」

「大丈夫ですよ、こちらのレシピ通りにしていただければ」

「……ちょっと見てからで良いですか?」

「はい、ゆっくり確認してくださいね」

安奈は手作りキットを2セット購入した。

​帰宅後、姉の杏里に助けてもらいながらチョコを作った。

​「お姉ちゃん、ちょっと手伝ってもらいたいんだけど、いい?」

「まあいいけど、なんで2つあるんだ?」

「ひとつはお姉ちゃんと一緒にする練習用。渡すチョコは、私だけで作る本番用」

「でもさ、結構手間かかるよ、これ」

「分かってる……それを選んだんだから」

「なるほどね〜。安奈、必死だね〜」

「う、うるさい!」

​杏里は、安奈を手伝いながら思いを馳せた。

​(安奈も本気になったんだ。大和くん、優しいしな。私を安奈と間違えて色々話したから、よ〜く分かる。安奈、頑張れ)

安奈はレシピと睨めっこをする。

​『生クリーム、はちみつを鍋に入れ、中火にかけて木べらで混ぜる。沸騰したらすぐに火を止め、火から外して細かく刻んだチョコレートを入れて静かに混ぜ、なめらかになるまで溶かす……』

​「お姉ちゃん、中火ってこれで良かった?」

「火の先が鍋底に少し触れるくらいだから、良いんじゃないかな……。焦がさないようにしっかりかき混ぜるんだよ」

「わ、分かった」

​型に入れて、冷蔵庫で冷やして……。

​いつもの家庭科の授業とは違う。絶対に失敗はできない。安奈は「思いを大和君に伝えるんだ」と、チョコに願いを込めていた。

そして、二月十四日の朝。

いつものように、短い朝デートが始まった。

​「おはよう、今日寒くない?」

「そうだね。でも自転車漕いでるとすぐに暑くなって汗出るけどね」

「え、寒くないの?」

「うん、学校に着く頃には汗だくだよ」

「そう、なんだ……」

安奈は急にソワソワし始めた。

「どうかした?」

​(いつ、切り出したら良いの? まずい、どうしよう……!)

​「あ、ヤバい、そろそろ行くね。また明日!」

「あ、ヤバい、そろそろ行くね。また明日!」

​大和が自転車を漕ぎ出そうとした瞬間、安奈は慌てて引き留めた。

「待って!!」

「え? 何?」

​心臓が飛び出すんじゃないかと思うほど緊張しながら、安奈は声を絞り出した。

​「あ、あの……これ……!」

​大事そうに鞄から取り出したラッピング箱を、大和に差し出す。

​「え、これって……」

「う、うん、バレンタインのチョコ。頑張って作ったんだ」

「え、手作り!?」

「うん……! これからもよろしくね、じゃあね!」

​安奈は顔を真っ赤に染め、逃げるように学校へと走り出した。

小走りで去っていく安奈の背中に向かって、大和は叫んだ。

「安奈〜! ありがとう――!」

​大和は生涯で初めての本命チョコをもらった。

それも、安奈から。

大和は溢れ出す喜びとハヤる気持ちを抑えきれず、ニヤニヤ顔を隠せないまま学校へと向かった。


本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。


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