【現場から見えた成長の瞬間 #01】監視業務から上位レイヤーへ
「監視は監視のまま」と思っていたエンジニアが、次の役割へ進めた理由
インフラエンジニアとしてキャリアを始めると、最初に運用や監視の現場へ入ることがあります。
アラートを確認し、定常作業を行う。障害が起きれば一次対応に入り、必要に応じて上位担当者や関係部署へつなぐ。
システムを止めないために欠かせない仕事です。
ただ、数年続けていると、少し違う不安が出てくることもありますよね。
「このままずっと監視業務なのではないか」
「設計や構築、運用改善へ進みたいが、きっかけが見えない」
「現場では頼られているのに、役割は変わらない」
一見すると、本人のスキルや努力の問題に見えるかもしれません。実際には、それだけで説明できないこともあるんです。
監視業務に慣れ、障害時にも落ち着いて対応できる。後輩を支え、シフトをまとめ、現場からも信頼されている。
そういう人ほど、「この人が抜けると困る」と考えられ、同じ役割にとどまり続けることがあります。
評価されるほど、次へ進みにくくなる。
少し皮肉ですが、現場では起こり得ることなんですよね。
今回紹介するのは、開発領域で思うような評価を得られなかった一人の社員が、インフラ運用・監視の現場で経験を積み直し、顧客から次の役割を期待されるまでに変わっていった事例です。
監視の経験を、同じ作業を繰り返した実績で終わらせず、次の役割を任せてもらう根拠へどう変えていくのか。
そのために、本人、顧客、会社の間で何が起きていたのか。
実際にあった一つの事例から見ていきます。
評価が伸びなかった時期に、何が起きていたのか
この社員は、数年前まで開発領域の業務に携わっていました。
当時、目立って高い評価を得ていたわけではありません。
本人にも改善すべき点はあったはずです。
ただ、振り返ってみると、本人の能力だけで説明できる話でもありませんでした。
任されていた役割や上司との関係、現場の進め方。求められる報告の粒度や、チームの中で期待されていた動き方も関係していました。
仕事では、同じ人でも環境によって発揮できる力が変わります。
たとえば、確認に時間をかけることで「判断が遅い」と受け取られる現場があります。
一方、障害対応や運用では、状況を確認してから動く姿勢が周囲の安心につながる。
同じ人の同じ特徴でも、仕事によって見え方が変わるんです。
だからといって、「環境が合わなかった」で終えるわけにはいきません。
本人は何を苦手としていたのか。どんな場面なら力を出しやすく、次の現場ではどんな経験を積むべきなのか。
そこまで見なければ、配置を変えても同じことが起きます。
一度ついた評価は、過去の事実として残ります。
でも、その評価だけで、次にどんな仕事で力を発揮できるのかまで決める必要はないと思うんです。
過去の評価をなかったことにするのではなく、新しい現場で別の評価軸をつくる。
この社員にとって、次の現場はそのための場所になりました。
監視業務は、「画面を見る仕事」では終わらない
その後、この社員は24時間365日のインフラ運用・監視を担う現場へ異動しました。
受け入れ先には、以前の現場で評価が伸び悩んでいたことも、新しい環境でどこまで力を発揮できるかはまだ分からないことも率直に共有しています。
「優秀な人材なので、すぐに活躍します」と送り出したわけではないんです。
過去の印象ではなく、目の前の仕事を通じて、もう一度評価してもらうところからのスタートでした。
監視の現場では、アラートの確認や定常運用、障害時の一次対応、関係者への連絡などを行います。
外から見ると、決められた手順を正確に実行する仕事に見えるかもしれません。
手順に沿うことは大切です。特に障害時は、むやみに操作せず、状況を確認しながら対応しなければなりません。
それでも、実際の運用では手順書だけでは判断に迷う場面が出てきます。
同じアラートでも、本当に緊急対応が必要なのか、どのシステムまで影響する可能性があるのかによって、見るべきポイントは変わります。
深夜帯なら誰に連絡するのか。一次対応を進めながら、顧客への連絡準備も始めるのか。
状況を見ながら決めていく場面があります。
重要なのは、アラートそのものではありません。
そのアラートが、何を意味しているのかです。
サーバーのリソース使用率が上がっていても、それだけですぐ障害とは判断しません。
月末処理のタイミングなのか、業務開始前の時間帯なのか。関連するシステムとのつながりまで分かっていれば、次に確認する場所も変わってきます。
監視の仕事は、異常を見つけるだけではないんです。
限られた情報から状況を整理し、影響を考え、適切な相手へ正確につなぐ。
この社員も、日々の業務の中で少しずつその力を身につけていきました。
最初から大きな改善提案をしたわけではありません。
障害が起きるたびに状況を確認し、次に似たことが起きたらどこを見るのかを覚えていく。その中で関係者との会話も増えていきました。
一つひとつは、小さな経験です。
後になって、その積み重ねが大きな違いになりました。
転機は、「原因がわからない障害」に向き合ったときだった
転機になったのは、年度末から4月上旬にかけて続いた障害対応でした。
別領域の作業をきっかけにトラブルが発生し、影響範囲も原因もすぐには見えない状況になりました。
人員が少なくなる深夜帯や休日帯にも対応が必要で、この社員も現場対応に入っています。
その場で求められたのは、設計書を書くことでも、高度な構築作業でもありませんでした。
現場で何が起きているのかを把握し、確認できた事実と、まだ推測の段階にあることを分ける。そのうえで、上位担当者が次の判断をするために必要な情報を共有していきました。
状況によっては、
「まずはこちらを確認した方がよいのではないか」
と提案することもありました。
障害対応って、手順書通りに進まないことがあるんですよね。
原因が特定できず、複数のシステムが関係している。利用部門からの問い合わせも増えていく。
復旧を急ぐのか、先に影響範囲を確かめるのか。
判断に迷う場面もあります。
そんなとき、現場で頼られるのは、答えを知っている人だけではありません。
今分かっていることを整理し、次に確認すべきことを考え、関係者が動ける形で共有する。
そういう役割を担える人も必要なんです。
この社員が評価されたのも、目立つ発言をしたからではありません。
日常の運用で身につけたシステムの見方や、関係者との連携、確認の順番、慎重に情報を扱う姿勢。
積み重ねてきたものが、障害対応の場面で機能しました。
監視業務で重ねた経験が、ここでは「判断力」として見えたんです。
顧客が評価したのは、過去の経歴ではなく、目の前の仕事だった
障害対応が続いた後、顧客からこの社員に対する前向きな評価が寄せられました。
「本当によく対応してくれている」
「役割に見合った評価をしてほしい」
「今後は、より上の業務にも関わってほしい」
こうした声が、現場から自然に出てきたんです。
SESでは、単価や契約条件について営業や管理側が顧客と交渉します。
そのとき大きな材料になるのが、顧客から見た社員の評価です。
この人がいることで報告が早くなり、障害時の状況も整理しやすい。関係者との連携もスムーズで、安心して仕事を任せられる。
その実感が積み重なると、「この人をもっと評価したい」「次の役割を経験させたい」という言葉が顧客側から出てきます。
ここで見落としたくないのは、顧客が見ていたのは数年前の評価ではなかったということです。
目の前で働く姿や障害時の対応、周囲との連携。日々の仕事への向き合い方を見ていました。
過去の評価より、今の現場でどんな価値を出しているのか。
新しい環境で周囲が納得できる仕事を積み重ねたことで、評価も変わっていったんです。
キャリアパスは、会社だけではつくれない
監視の現場で信頼されている人ほど、「今の体制に必要だから」という理由で動かしにくくなることがあります。
顧客にとっても、会社にとっても、その人が現場にいてくれることは大きな安心です。
だから、キャリアの話は本人の希望や会社の制度だけでは完結しないんですよね。
このプロジェクトでは、監視領域だけでなく、L2のインフラ運用・保守を担当する社員も参画しています。
ディーシステムでは以前から顧客と、監視・運用でシステム全体を理解し、現場で信頼を積み重ねた人には、次のレイヤーへ挑戦する機会をつくっていくという考え方を共有してきました。
日々の業務を安定して遂行し、障害時にも落ち着いて対応できる。
相談や報告の質が上がり、顧客やチームとの関係も築けている。
そうした変化が現場で見えるようになると、次の役割を任せる根拠が生まれます。
その根拠がそろったとき、本当に次の機会へつなげられるか。
ここは、会社だけの意思では決まりません。
「この人にL2の業務も経験させてみましょう」
「次は、定常運用だけでなく、改善や保守の側にも関わってもらいましょう」
こうした会話ができるのは、顧客がディーシステムを単なる人材提供会社ではなく、現場をともに支えるパートナーとして見てくださっているからです。
目の前の業務を安定して回すことは、当然の責任です。
そのうえで、担当者が次の役割へ進み、より広い範囲で顧客に価値を出せるようになるところまで一緒に考えていただける。
これは、当たり前のことではありません。
会社も、顧客の期待に応え続けながら、現場で得た信頼を本人の次の成長へつなげていく必要があります。
キャリアパスというと、社内資料に書かれた段階表を思い浮かべる人もいるかもしれません。
でも、実際の仕事は、それだけでは動かないんです。
顧客と社員、会社の間で「次の役割を任せる意味」が共有されたとき、初めて実際の仕事として動き始めます。
監視から次へ進む人は、何を積み上げているのか
監視業務から次の役割へ進むために、特別な才能が必要だとは限りません。
技術を学び続けることは欠かせません。
Linux、ネットワーク、クラウド、監視ツール、スクリプト、セキュリティ。
知識が広がれば、担当できる範囲も変わります。
ただ、現場で次の仕事を任せてもらう人を見ていると、技術知識だけでは説明できない部分もあるんです。
作業の意味を考えている人は、アラートを確認しても、
「手順にあるから対応する」
で終わりません。
そのアラートが、どの業務に影響する可能性があるのかを見る。定常作業でも、なぜこの確認が必要なのかを理解しようとします。
相談の仕方も変わっていきます。
「わかりません」だけではなく、
「ここまでは確認しました」
「この点が判断できません」
「次にここを見ようと思います」
と、確認した範囲と迷っている点を整理して話せるようになる。
障害や問い合わせの対応が終わったあとも、「次回は何を早く確認すべきか」「手順に不足はないか」と、次の対応へ目が向きます。
こうした行動が、すぐ肩書きや役割の変更につながるわけではありません。
それでも、現場で見ている人には伝わります。
そして障害や大きな変更が起きたとき、日常の積み重ねがある人は、単なる作業者ではなく、状況を前に進める人として見られるようになるんです。
キャリアを変えるのは、異動そのものではない
「監視から抜けたい」と考えたとき、異動や転職が答えに見えることがあります。
そう考える気持ちは、分かる気がします。
次の役割へ進む道がまったく用意されていないなら、別の選択肢を考えるのも自然です。
ただ、キャリアを考えるときに見たいのは、職場を変えるかどうかだけではありません。
今いる場所で、どんな経験を積めるのか。
顧客や上位担当者から、何を評価されているのか。
次の役割へ進むには、どんな仕事を任せてもらう必要があるのか。
そこが見えないまま場所だけを変えても、同じ不安を抱えることがあります。
「監視を何年やったか」だけで、自分のキャリアを判断しないことです。
その期間に何を見て、どんな障害に関わってきたのか。誰と連携し、どんな判断を支え、その経験からどんな改善の視点を持つようになったのか。
経験の中身を言葉にできるようになると、監視業務は単なる経歴ではなく、次の役割へ進むための材料になります。
一度ついた評価を、次の評価で塗り替える
この事例では、本人が目の前の運用業務に向き合い、できることを増やしていきました。
顧客は、その変化と価値を現場で見ていました。
そして会社は、そこで得られた信頼を次の役割につなげようとしています。
その積み重ねによって、過去の評価とは別の評価軸が生まれました。
一度ついた評価は、すぐには消えないかもしれません。
でも、現場で積み重ねた仕事は、新しい評価をつくります。
顧客との信頼があれば、その評価を本人の成長だけで終わらせず、次の役割と、より大きな顧客価値へつなげていくこともできます。
監視はキャリアの終着点ではありません。
同時に、何もしなくても次へ進める入口でもないんですよね。
日々の運用で何を学び、誰からどんな信頼を得て、それを次の仕事へどうつなげていくのか。
数年後のキャリアを考えるなら、見ておきたいところだと思います。
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