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【現場から見えた成長の瞬間 #02】ヘルプデスクからSAP会計領域へ。簿記資格が、数年後にキャリアを変えた話。

公務員時代に取った簿記資格が、数年後にキャリアを変えた話

公務員として働きながら取得した簿記資格が、数年後、SAP会計領域へのキャリアにつながるとは、本人も当時は想像していなかったはずです。

IT未経験でディーシステムへ入社し、最初に担当したのはヘルプデスク業務でした。利用者からの問い合わせを受け、内容を整理し、必要に応じて関係部署へ確認しながら回答をまとめていく仕事です。

そこから、問い合わせ対応を通じて業務の背景を理解し、SAPのテーブルやトランザクションを調査する経験を重ね、現在はSAP会計領域へキャリアを広げています。

この事例は、「未経験でもIT業界に入れる」という話だけではありません。

過去の経験は、どのようなときに専門性へ変わるのか。会社は、一人ひとりがすでに持っている経験をどう見つけ、次の役割へつなげていけるのか。

今回は、公務員時代の経験と簿記の知識を持つ社員が、ヘルプデスクからSAP会計領域へ進んだ過程について掲載します。


IT未経験だったからこそ、最初に活きた力があった

IT業界というと、理系出身で、学生時代からプログラミングを学び、技術に詳しい人が活躍する世界だと思われることがあります。

もちろん、アプリケーション開発、インフラ設計、セキュリティ、データ分析、AI開発など、高度な技術力が中心になる仕事は数多くあります。技術を深く学び続けることは、これからもエンジニアにとって大切です。

ただ、すべての仕事がコードを書く力だけで決まるわけではありません。

利用者が何に困っているのかを聞き取る。複数部署で認識が食い違っているときに、どこで話がずれているのかを整理する。必要な確認事項を切り分け、次に誰が何を判断すべきかを明確にする。

ERPやSAPの運用、ヘルプデスク、業務改善といった仕事では、こうした力が顧客の現場で大きな価値になります。

今回紹介する社員は、前職で公務員として働いていました。学生時代からITを専門的に学んできたわけではなく、IT企業で働いた経験もありません。

前職で中心になっていたのは、事務処理、関係者との調整、ルールに沿った確認、必要な情報を整理して伝える仕事でした。

一見すると、SAPやERPとは距離があるように見える経験です。

しかし、現場で働き始めると、その経験は少しずつ別の意味を持ち始めます。システムの知識がまだ十分ではない段階でも、相手の話を整理すること、誤解が生まれないように確認すること、決められたルールの背景を考えることは、すぐに仕事の土台になりました。

IT未経験だったことは、最初から不利な条件だけではなかったのです。

簿記資格は、すぐに使わない知識だった

公務員時代に取得していた資格の一つが、簿記でした。

当時は、その資格がSAP会計領域で役立つとは考えていなかったかもしれません。将来IT業界に入り、企業の会計システムに関わることになるとは、本人も想像していなかったはずです。

キャリアは、必ずしも一直線には進みません。

ある時点では直接関係がないように見えた経験が、環境や役割が変わったことで、思いがけず価値を持つことがあります。

簿記の学習を通じて身につけたのは、単に仕訳の方法だけではありません。売掛金や買掛金はどのような取引の中で発生するのか。費用や収益はどのように整理されるのか。月次処理や決算とは、企業の中で何を確認するためのものなのか。

こうした知識は、資格を取った直後に仕事で使わなければ意味がないわけではありません。

企業のお金の流れを理解するための基礎として、自分の中に残り続けます。そして、後になって新しい業務を学ぶとき、その知識が理解の入口になることがあります。

この社員にとって簿記は、長く「過去に取得した資格」の一つでした。

ただ、ヘルプデスクで会計システムに触れ、問い合わせの背景にある業務を少しずつ理解する中で、その知識は過去のものではなくなっていきます。

ヘルプデスクで学んだのは、「答えること」より「困りごとを整理すること」だった

入社後に担当したのは、ヘルプデスク業務でした。

利用者から問い合わせを受け、内容を確認し、必要に応じて関係部署やサポートセンターへ確認する。回答をまとめ、利用者が次に何をすればよいのかを伝える。業務の流れだけを見ると、問い合わせへの対応が中心に見えるかもしれません。

ただ、現場では、問い合わせの言葉をそのまま受け取るだけでは解決できないことがあります。

たとえば、利用者から「画面の数字が合わない」と連絡があったとします。

画面に表示されている数字が違うこと自体が問題なのか。入力のタイミングが異なるのか。別の処理が完了していないのか。参照している会社コードや期間、データの範囲が違うのか。それとも、利用者が想定している業務ルールと、実際のシステム運用に差があるのか。

一つの問い合わせの中には、複数の可能性があります。

そこで求められるのは、すぐに答えを出すことではありません。何に困っているのか。どの業務の途中で起きたのか。いつから起きているのか。どこまで確認したのか。関係者が判断するために必要な情報は何か。

状況を整理し、確認すべきことを明確にし、必要な人へ正しくつなげる。

ヘルプデスクは、単に質問へ回答する仕事ではありません。利用者の困りごとを、関係者が解決できる状態へ変える仕事です。

この社員は、日々の問い合わせ対応を通じて、その力を身につけていきました。

調査を任された日、仕事の見え方が変わった

ある日、問い合わせを担当するメンバーが不在となり、自ら調査を進める場面がありました。

最初から答えがわかっていたわけではありません。

問い合わせ内容を確認し、SAP上のテーブルやトランザクションを調べ、サポートセンターとの認識の違いを整理する。そこから、どこに原因がある可能性が高いのかを仮説として置き、追加で確認すべき内容を考えていきました。

このとき大切だったのは、最初から正しい結論にたどり着くことではありません。

限られた情報の中で、何を確認すべきかを考えたこと。確認した結果をもとに、次の仮説を立てたこと。関係者の認識がずれている部分を見つけ、話を前に進めたことです。

システムの現場では、すぐに解決できない問い合わせもあります。

原因が一つではないこともあります。ある部署では正しい運用でも、別の部署にとっては困りごとになっていることもあります。設定そのものを変えればよいように見えても、変更によって他の業務や他システムへ影響が出る場合もあります。

だからこそ、現場では「わからないから確認します」だけで終わらせず、「どの可能性を確認すべきか」を考える力が必要になります。

問い合わせを受ける側から、問題を整理して前へ進める側へ。

この経験は、本人にとって、ヘルプデスクという仕事の見え方を変えるきっかけになりました。

「なぜ変えられないのか」を考えると、業務が見えてくる

印象的だったのは、調査後の振り返りです。

単に「問い合わせを確認しました」「原因を調べました」で終わらせるのではなく、その社員はさらに一歩踏み込んで考えていました。

なぜ、この運用は改善されていないのか。

グループ会社全体でコードを共通管理しているのは、どのような背景があるのか。

変更しにくいのは、他システムとの連携や、既存の業務ルールが関わっているからではないか。

システムを扱う仕事では、「変えた方が便利だ」と思える場面があります。

画面の項目が分かりにくい。入力の手間が多い。利用者ごとに異なる運用が残っている。問い合わせが繰り返し発生する。現場の一部だけを見れば、変えた方がよい理由はすぐに見つかります。

ただ、問題はそこではありません。

企業のシステムには、長年の業務運用や組織の事情が積み重なっています。特定の取引先との契約条件。グループ会社間で共通化しているルール。他システムとのデータ連携。会計や内部統制の観点で必要な確認。過去の変更で起きたトラブルを踏まえた運用上の制約。

画面だけを見れば不便に思えることでも、企業全体の仕事の流れを見ると、簡単には変えられない理由があります。

この視点を持てるようになると、ヘルプデスクの仕事は変わります。

利用者の要望をそのまま受け取るだけではなく、なぜその要望が生まれているのかを考えられるようになる。システムの制約だけでなく、業務上の背景も含めて説明できるようになる。変更の可否を考えるときにも、単に便利かどうかではなく、影響範囲まで意識できるようになる。

これは、SAPやERPの現場で求められる専門性の一つです。

過去の資格を、次の役割につなげる

転機になったのは、日々の振り返りとキャリア面談でした。

ディーシステムでは、現場で起きた経験を、その場限りの出来事として終わらせないことを大切にしています。顧客から受けた評価、日報や週報に書かれた気づき、うまく進まなかった場面、任せられるようになった仕事。そうした情報を振り返りながら、本人が次に伸ばすべき力を考えます。

この社員の場合、ヘルプデスクでの対応力と、過去に学んだ簿記の知識が結びつきました。

「以前、簿記を学んでいましたよね。その知識は、SAPの会計領域で活かせるかもしれません」

本人にとっては、過去に取得した資格の一つだったかもしれません。

しかし、会社側から見ると、そこには明確な可能性がありました。

利用者の話を整理できる。業務ルールを丁寧に確認できる。問い合わせの背景を考えながら対応できる。そして、会計の基本的な考え方を学んだ経験がある。

これらは別々の経験ではありません。

SAP会計領域で、システムと業務の間をつなぐための土台になります。

ディーシステムが目指しているのは、社員をあらかじめ決めた型にはめることではありません。

一人ひとりの現場経験を見ながら、その人が持っている知識や強みを見つけ直し、次の実務で試せる形に変えていくことです。

経験を、構造にする。

そして、その構造を次の成長へつなげる。

それが、私たちが考える育成です。

SAP会計領域では、システムと会計業務の両方を見る

SAPの会計領域では、操作方法だけを知っていれば十分というわけではありません。

たとえば、売掛金や買掛金の情報が、どの業務の中で発生するのか。請求や入金の処理が、月次締めや決算にどのような影響を与えるのか。会社コードや原価の考え方が、どのような管理のために使われているのか。

こうした背景を理解していることで、利用者との会話は変わります。

「どの画面を開けばよいか」を案内するだけではなく、「この情報が後続の会計処理にどう影響するのか」「この修正を行う前に、どこまで確認すべきか」まで考えながら支援できるようになります。

もちろん、簿記資格があるからといって、すぐにSAP会計領域を担当できるわけではありません。

SAPの機能を学ぶ必要があります。顧客ごとの会計運用を理解する必要があります。グループ会社の仕組みや連携する周辺システム、利用部門ごとの事情も学ばなければなりません。

現場で求められるのは、資格知識をそのまま当てはめることではなく、業務の実態に合わせて考えられることです。

それでも、簿記の知識があることで、未知の業務を学ぶ際の入口ができます。

仕訳や勘定科目の言葉を、まったく初めて聞く人よりも理解しやすい。利用者が何を懸念しているのかを想像しやすい。会計処理の流れとシステムの処理を結びつけて考えやすい。

過去の経験が、そのまま答えになるわけではありません。

ただ、次の専門性を身につけるための足場にはなります。

この社員は、ヘルプデスクで培った対話力と業務整理力、公務員時代に学んだ簿記の知識を土台に、SAP会計領域へのキャリアアップを実現しました。

企業が求めているのは、技術だけを知る人ではない

現在、多くの企業では、ERPの刷新やSAP S/4HANAへの移行、既存システムの運用見直しが課題になっています。

SAP Business Suite 7のコアアプリケーションは、2027年末まで標準保守が提供され、その後は2030年末まで任意の延長保守が用意されています。企業にとっては、単に保守期限へ対応するだけではなく、これまで使ってきた業務やデータ、運用をどう見直すかを考える時期でもあります。

ただし、ERPの移行や改善は、システムを新しくするだけで終わるものではありません。

長年使われてきたシステムには、その企業固有の業務ルールや例外対応が積み重なっています。会計処理一つをとっても、取引先ごとの条件、締め日の違い、グループ会社との関係、既存システムとの連携など、画面や設定だけでは見えない事情があります。

だからこそ企業が求めているのは、技術だけを知る人材ではありません。

利用部門の話を聞き、業務の背景を理解し、必要な情報を整理して、システム側と業務側の間をつなげられる人材です。

IPAの「DX動向2025」でも、日本企業の多くがDXを推進する人材の不足を感じており、とくに業務や事業の変革を構想し、関係者をつなぐ役割を担う人材の不足が課題として示されています。

技術者が足りない、というだけではありません。

現場の業務を理解し、変えるべきことと残すべきことを見極め、関係者と対話しながら実行へ進められる人材が不足しています。

SAP会計領域においても、こうした人材の価値はこれからさらに高まります。

キャリアは、「足りないもの」を増やすだけではつくられない

転職やキャリアを考えるとき、多くの人は「今の自分に何が足りないか」を考えます。

新しい技術を学ばなければならない。資格を取らなければならない。経験を増やさなければならない。

学び続けることは大切です。特にITの仕事では、技術もツールも業務のあり方も変わり続けます。過去の経験だけで仕事を続けられるわけではありません。

ただ、キャリアは、足りないものを増やすだけでつくられるわけではありません。すでに持っている経験を、別の角度から見直すことも必要です。

公務員時代に培った、正確に情報を扱う姿勢。
関係者と調整し、ルールに沿って業務を進める力。
簿記を学ぶ中で得た、企業のお金の流れに対する基本的な理解。
ヘルプデスクで身につけた、相手の困りごとを整理し、必要な人へつなぐ力。

一つひとつを見ると、ITエンジニアとしての経験には見えないかもしれません。しかし、それらが重なったとき、SAP会計領域という専門的な仕事につながりました。

もし本人が、「簿記はITと関係がない」「公務員時代の経験は使えない」と切り離していたら、このキャリアは生まれなかったかもしれません。

大切なのは、過去の経験をそのまま使えるかどうかではありません。

その経験が、どの業務の理解に役立つのか。どの仕事の中で強みになるのか。次に何を学べば、専門性としてつながるのか。

そこを一緒に考えられる環境があるかどうかです。

「文系」「未経験」で自分の可能性を狭めない

IT業界には、高度な技術力が求められる領域があります。

その一方で、ERPやSAP運用、ヘルプデスク、業務改善の現場では、技術を知っているだけでは仕事を前へ進められない場面があります。

利用者が何に困っているのかを理解する。
複数の部署で異なる認識を整理する。
システムの変更が、会計や購買、販売などの業務にどのような影響を与えるかを考える。
顧客にとって必要な情報を、わかる言葉で伝える。

こうした力は、文系出身者や異業種出身者が、それまでの仕事で培ってきた経験ともつながります。

もちろん、誰もが同じようにSAP会計領域へ進むわけではありません。

簿記があれば必ず会計領域で活躍できるわけでもありません。本人が学び続けること、現場で経験を積むこと、振り返りを受けながら行動を変えていくことが必要です。

会社が人を変えるわけでもありません。

本人の努力、挑戦、継続があって初めて、キャリアは広がります。

ディーシステムは、その努力を本人任せにしないために、現場の経験を振り返り、顧客から得た評価を次の育成へ戻し、次に挑戦すべき役割を一緒に考える仕組みをつくっています。

人を配置するだけではなく、人が育つ仕組みをつくる。

それは、社員の成長のためだけではありません。

顧客にとっても、立ち上がりが早く、業務を理解し、考えて報告できる人材が増えることにつながります。担当者が変わっても、現場で得た知見が次の人材へ引き継がれていけば、組織として提供できる価値は少しずつ大きくなります。

過去の経験を、次の専門性へ変えていく

ヘルプデスクからSAP会計領域へ進んだこの社員のキャリアは、最初から計画されていたものではありません。

公務員として働いた経験。簿記を学んだこと。IT未経験で始めたヘルプデスク。問い合わせ対応を通じて身につけた業務整理力。日々の振り返りと、キャリア面談で見えてきた次の可能性。

一つひとつの経験が、後からつながっていきました。

ディーシステムが目指しているのは、決められたキャリアパスに人を当てはめることではありません。

本人が積み重ねてきた経験を見つけ直し、顧客の現場で役立つ専門性へつなげていくことです。

キャリアを考えるとき、足りないものばかりを見る必要はありません。これまで自分が経験してきた仕事の中に、次の専門性につながる材料があれば、それを育てることで、新しい選択肢が生まれます。

AIやシステムが進化しても、現場で必要になるのは、情報を受け取るだけの人ではありません。業務の背景を理解し、何を確認すべきかを考え、関係者と認識を合わせ、次の行動へつなげられる人です。

ディーシステムはこれからも、経験を、構造にする仕事を続けていきます。


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