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ワークライフバランス-"論議はなぜかみ合わないか?働く幸福の観点から"

ワークライフバランスが昨今話題になっているので(笑)
私のワークライフバランスに関する考え方を述べます。

ワークライフバランスは一般的に大切です。ただ、ワークライフバランスは動態的バランスであり、必ずしも毎日固定的割合を厳格に守るべきものではありません。緊急事態はワーク、ライフどちらかに全振りすることも必要となります。一時的にワークライフバランスを捨てることが人生の長期的ワークライフバランスに資することになるのです。
ワークライフバランスは、その人のワークとライフの本質的関係の違い、「自己実現」の有無、「生産手段」所有の有無、ノブレス・オブリージュ的ポジションの違いにより異なります。
ワークとライフの関係が本質的、根本的に異なる人同士が議論してもかみ合わず平行線です。いずれのタイプも共通して大切にすべきライフの要素は「健康」と「家族」です。ただしワークとライフの関係をどうするかは選択の問題ですからワークライフバランスの最適解は自己の中にあり、外形的に縛られるものではありません。本記事では上記の内容について詳しく解説します。


1.ワークライフバランスは大切

結論から言うとワークライフバランスは大切です。

ただし、最終的には選択の問題ですから
覚悟を持ってバランスを超越し
ワーク即ちライフ(人生)という選択
もあり得ます。

このような例外的選択はあるとはいえ、
一般的原則としては
大切にした方が望ましいと考えます。

理由は
ワークライフバランスを顧みないのは
自己の健康を損ない、

第一に
天職と確信を持つ自己実現を果たした人の
ワークの土台たる生命を失い、
ワークの達成を不可能とするリスクであること。

第二に
家族との絆を損なうことで
家族の幸福を危機に陥れ、ひいては
自己の幸福も損なうリスク
と考えるからです。

2.ワークとライフバランスは動態的、長期的視点で考えるべき

ワークライフバランスが大切といっても、
必ずしもワークとライフの時間的割合を
毎日固定的に厳格に守るべきものではない
と考えます。

働く環境、私生活の環境は日々変化し、
ときには仕事の絶好の機会もあれば
重大な危機が訪れる場合もあります。

緊急事態にはメリハリをつけて
一時的にワーク、ライフどちらかに
全振りすることも必要となります。

自分の自己実現がかかっていると思えば
全てをワークに集中しての勝負する
ことも必要です。

私生活で重要な出来事
家族が災害や病気等に見舞われれば
大切な仕事をかなぐり捨てることも
あるでしょう。
ることもあり得ます。

一時的にワークライフバランスを捨てることが
人生の長期的ワークライフバランスに資する

ことになるのです。

ワークライフバランスは
毎日のミクロ的なバランスでなく、
月単位、年単位の長いスパンで
取れていればいいでしょう。

毎日のワークライフバランスにこだわりすぎると、
かえって人生のダイナミックなバランスを損ない

ちっぽけな箱庭的ワークライフバランス
に終わるでしょう。

3.人は「自己実現」「生産手段」の所有の有無でワーク・ライフのバランスが根本的に異なる

ワークライフバランスは
十把一絡げに考えられません。

私の考えるところ、
そもそもワークとライフの関係は、
その人のワークのあり方によって
本質から根本的に異なります。

分かつ基準は二つ。

  • 「自己実現」の有無と

  • 生産手段所有の有無 です。

この基準により下図のように大別されます。

人びとのワークライフバランスのあり方は
これにより下記三種類に大別されます。

  • A.完全自己実現ワーク・ライフ融合型

  • B.自己実現ワーク・ライフ分離型

  • C.生活手段労働ワーク・ライフ対立型

の二種類の人間です。以下、
それぞれの特性を解説します。


A.完全自己実現ワーク・ライフ融合型

ワーク(働くこと)で自己実現を達成し、
生産手段を完全に所有
している人です。

生産手段とは、仕事(ワーク)をするのに必要な手段全て(人・物・金etc.)です。

生産手段を所有している人は、言い換えると
オートノミーを実現している人です。

オートノミーとは古代ギリシャ語の
"autos(自己)"と"nomos(法、規則)"が語源で、
「自分自身の法にのみ従う」という意味合いを持ちます。
自主性・自律性・自己決定権を意味する言葉で、外部からの干渉や拘束を受けずに、自分自身の意思で主体的に物事を決定し行動する能力、状態を持つ人を指します。

「自己実現」し、かつ
生産手段を所有している人
は、

Work(ワーク)こそLife(人生)であり
Life(人生)の意味はWork(ワーク)にある

ととらえている人です。

具体的には、芸術家、
フリーランス、オーナー経営者等で
かつ自己実現を達成している人
が想定されます。

自分のワークを天職ととらえ、
全人生をかけて取り組んでおり、かつ
ワークの成果まで全て自分のものであり
ワークに関わる全てが
自分のものと実感することができます。

自分の人生の意味
ワーク(仕事の意味)=ライフ(人生の意味)
というふうに捉える人なので、
ワークとライフの垣根がなく融合しています。
マズローが示唆した
「自己超越」に到達した人と
言ってもいいでしょう。

完全自己実現ワーク・ライフ融合型人間
時間的にも精神的にも
人生全てを自分の裁量で総動員して
ワーク・ライフの区分を超越し
天職と信じるMissionに殉じる
覚悟を決めた人と言えるでしょう。

B.自己実現ワーク・ライフ分離型

ワークで自己実現を達成しているが、
生産手段を所有
してない人です。

「自己実現」はしているものの、
ワークに関わる要素、
人・物・金を自分の裁量で
コントロールできない(個人差有り)ので、
オートノミーを完全には実現できない人です。

自分の人生の意味をワーク(仕事の意味)と
捉えてはいるものの、
生産手段は所有していないので
ワークは部分的に疎外
(自分のものでない)
されており、程度に違いはあるものの
ワーク(働く意味)とライフ(人生の意味)
は分離
しています。

ここで言う「疎外(Alienation)」とは、マルクスの概念で、資本主義社会において人間が本来の自己や労働の意味から切り離され、他者的な存在として扱われる状態を指します。

出典:K.マルクス,第1草稿「疎外された労働」『経済学・哲学草稿』1844,岩波文庫,pp. 81–91

具体的には、
自己実現を達成して、
会社に雇用されている従業員、
公務員等が想定されます。

時間の裁量も限られ、
決められたスケジュールで
外部の職場に出勤しないといけません。

最近は在宅ワークも普及してるものの、
外部から縛られることに変わりはありません。

自分の仕事をする仕組みが自分のものでなく
ワークの成果を最後まで見届けることもできず
成果物のリターンも直接受け取れません。

それゆえ、
ワークの成果を十分実感できず
ワークから得られるリターンを
部分的にしか自分のものにできません。

仕事は働きがいを持ってやれているが、
疎外されている要素はあるので
プライベートは明確に分離したいという
意識を持っている人が多いと思われます。

私も若い頃から独立するまではこの型でした。
自己実現はしているつもりでしたが、
超長時間労働だった事もあり、
数少ない休みの日は
仕事とはしっかり分けて休みたかったですね。

C.生活手段労働ワーク・ライフ対立型

ワーク(働くこと)で自己実現していない人です。
生産手段の所有・非所有、
いずれの場合も
あり得ます。

ワークは「自己実現」の場ではなく、
生活の糧を得る場が主体であり、
承認欲求を満たすことに
喜びを見出すことはあっても、
真の働く幸せには到達していない人です。

具体的には、
仕事は「飯の種」の延長の域を出ず
月曜朝出勤が憂鬱になるサラリーマン、
オーナーではあるものの
仕事に自己実現を見出せず
単に家業だから跡を継いだ
世襲経営者というところでしょうか。

4.ワークとライフの関係が本質的に異なる人を比較してもかみ合わない

地位の違いによるギャップ

ノブレス・オブリージュ(仏: noblesse oblige)
という言葉があります。

高い地位や特権を持つ者は、
それにふさわしい責任と義務を果たすべき
であるという道徳的理念を指します。

私が仕事でお世話になった経営者も
社内で誰よりも早く出社し
誰よりも遅く退社し、
誰よりも休日は少なく、
長時間働く人が多いのが実態です。
(そうでない経営者もいるでしょうが)

その根底には
「自己実現」を果たし
「生産手段」を所有し
オートミーを実現しているから
喜んで働けることと共に

ノブレス・オブリージュ的観点から
ワークライフバランスを犠牲にすることを
自分の義務として課していると思われます。

これをもって
上から下までトップのように
ワークライフバランス度外視で働け
と言っているわけではないことは
既に多くの人が指摘している通りです。

「自己実現」の有無によるギャップ

ゴーリキー『どん底』の中に

「仕事が楽しみなら人生は楽園だ。仕事が義務なら人生は奴隷だ。」

マクシム・ゴーリキー『どん底』米川正夫訳、1956年、岩波文庫p. 45

という台詞があります。

ワークを「自己実現」の場ととらえ
プライベート・ライフと
良き相乗効果を産んでいる人と

ワークは生活の糧を得る苦役でしかなく
プライベートの生活は苦役の癒やしか、
下手をすると逃避の場になっている人
との会話は噛み合いません。

「生産手段」所有の違いによるギャップ

「生産手段」を所有している人は
完全なオートミーを実現
ワークの全てを自分のものと実感し、

ワークとライフは対立概念でなく、
融合した包括的人生の意味
ととらえています。

「生産手段」を所有していない人は
オートミーの実現は一部にとどまり、
ワークはかなり疎外されているので
ワークを完全に自分のものと実感できません。

ゆえにワークとライフは対立概念となり、
疎外されたワークの人生を取り戻す
プライベート・ライフの時間が必要です。

この両者の立場は、根本的に異なり
噛み合いません。

このように十把一絡げに
ワークライフバランスを論じると
少なくとも3つの次元でかみ合わないのです。

とはいえ
ワークライフバランスに無縁の人は存在しません。
ゆえにワークとライフのあり方が異なる下記のタイプ別に
ワークライフバランスを考えることが必要です。

5.A.完全自己実現ワーク・ライフ融合型のワークライフバランスのあり方

このタイプが留意すべきワークライフバランスは
「健康」と「対人関係(特に家族)」です。

Work=Life、Life=Workの人なので
自らの生きる意味として
人生の全てをWorkに捧げて悔いのない人です。
「自己超越」に到達した人とも言えます。

ノブレス・オブリージュとして自己犠牲を受け容れる人のワークライフバランス

完全自己実現ワーク・ライフ融合型の
典型のひとつは
経営者、政治家として「自己実現」を達成し
かつ高い地位にあるリーダーです。

先に述べたようにこういう人は
ノブレス・オブリージュとして、
喜んで自己犠牲を受け容れます。

マズローの言葉を借りれば
理想、高い社会水準、高い価値
なにより殉教者になり、
理想、価値のために、
莫大な犠牲を払っても
すべてを諦められる人です。

(自己実現を達成している)彼らの創造性は、基本的満足により生じた自己実現としてではなく、基本的満足を欠いているにもかかわらず出現するのである。はっきりしたヒエラルキーの逆転が生じることを説明するもう一つの側面は、(中略) おそらくこうした例外より重要なのは、理想、高い社会水準、高い価値などを含んだものである。このような価値により人は殉教者になる。ある理想、価値のために、すべてをあきらめられるのである。(中略)。このような人は、意見の相違や障害を容易に乗り越えることができ、世論の傾向に逆らって歩むことができ、莫大な犠牲を払っても真理の擁護者となることができる強い人である。

A.H.マズロー『人間性の心理学- モチベーションとパーソナリティ-』小口忠彦訳,産能大学出版部,昭和62年,pp80-82

果たして、こういう人にとって、
ワークライフバランスは、どうなるのか?

Work=Life,Life=Workで
WorkとLifeが融合している人なので
そもそもバランスという概念を持たない人
も多いと推察するのですが、

「健康」という観点での
オン-オフのバランスは意識された方が
いいと思います。

短期的には、Workに振り切るバランス
も必要になる立場であることは
先に述べた通りですが。

「健康」はWorkの源泉

自己のWorkにあまりに集中しすぎることは、
「健康」を損ない、最悪の場合、死を招くと
最も大切なWorkさえ全く失うリスクです。

私のお客様でも、
そういう方がいらっしゃいました。

ある会社の社長さんですが、
自らカリスマ・エンジニアで
会社に泊まり込んで徹夜も少なくなく、

月曜日の朝、まだ50代の若さで
会社で亡くなっているところを発見されました。

死因は心筋梗塞、
明らかに仕事の過労が原因でした。

「健康」はWorkの源泉でもあるのです。

「対人関係」特に「家族」

「完全自己実現ワーク・ライフ融合型」
の人は芸術家も典型です。

私の知人のプロのミュージシャンも
睡眠等生活に不可欠の時間を除き
「全て音楽に打ち込んでいる」
という人がいます。

まさにWorkすなわち人生という生活で、
幸福の極みとも言えますが、

全てをWorkとしての芸術に捧げている人も
「対人関係」は大切
です。
ワークライフバランスの問題というより
Workに必須の能力というべきですが。

Workとしての芸術の出来映えも
チームワークに支えられる部分が多いからです。

「家族」は芸術家にとり
愛情で結ばれたセーフティネットであると同時に
最高の「ミューズ」
でもあります。

家族をモデルにした作品も
枚挙に暇(いとま)がありません。

「ミューズ」とは、ギリシャ神話の女神、音楽、詩、舞踏などの諸芸術を司る9人の女神(ムーサ)を指します。芸術に霊感を与える存在で、芸術家が女神の力を借りて霊感を得ると信じられていました。
「ミューズ」は転じて、芸術家や作家に創作のひらめき(インスピレーション)を与える人物や事物を指します。「music(音楽)」や「museum(美術館)」という言葉は、この「ムーサ」が語源です。

6.労働疎外有りワーク・ライフ対立型のワークライフバランスのあり方

B.自己実現ワーク・ライフ分離型
C.生活手段労働ワーク・ライフ対立型
の人たちの場合のワークライフバランスは

「自己実現」の有無にかかわらず、
「生産手段」を所有せず、
自己の労働の一部が「疎外」されている人

「生産手段」は所有しているものの、
「自己実現」に至らず、主に
Workが生活の糧を得るにとどまっている人

これらの人々の場合
Workから離脱するLifeの時間的確保
仕事場からの物理的隔絶等の
外形的ワーク・ライフの区分は必須です。

7.両者が共通して大切にすべきワークライフバランス要素は「健康」と「家族」

A.完全自己実現ワーク・ライフ融合型
B.自己実現ワーク・ライフ分離型
C.生活手段労働ワーク・ライフ対立型

のいずれも大切にすべき
ワークライフバランスの要素があるとすれば
「健康」と「家族」です。

「幸福」の三大リスクは
「健康」「お金」「対人関係(特に家族)」ですが
このうち二つが「健康」と「家族」です。

いくらWork=Lifeと一体化した
「自己実現」を果たしている人でも
あまりに長期間、仕事に集中すると、

交感神経優位の状態が継続し続けることで
「健康」に異変か生じるリスクが大きくなります。

「家族」はWorkの困難を感じる場面
Workに過度の負担を強いられる時の
シェルター、最後のセーフティネットであり、
Workの創造力をもたらすミューズでもあります。

8.最終的には選択の問題、ワークライフバランスの最適解は自分の中に

ワークライフバランスの問題は、
最終的には本人の選択の問題です。

ワークライフバランスの最適解は自己の中にあり、
必ずしも
外形的に縛られるものではありません。

「生産手段」を持たず
Work(仕事)の内容、労働時間、勤務場所等
を外形的に制約され、
自己のWorkに疎外されている部分があれば
労働時間等の法的保護の規制が必要ですが、

「生産手段」を所有市、
Workの全てでオートノミーを実現している人は
ワークライフバランスの最適解
は自己の内面にあります。

ただし「健康」面のバランス
には留意するのが望ましいでしょう。

まとめ

1.一般原則としてワークライフバランスは大切。
2.ワークライフバランスは動態的、長期的にとらえるべきであり、静的、短期的バランスにとらわれすぎるとワークとライフのシナジーが制約される。
3.ワークライフバランスは「自己実現」の有無「生産手段」の所有の有無で根本的に異なる
4.ワークとライフの関係は、地位の違いによるノブレス・オブリージュ的ギャップ、「自己実現」の有無によるギャップ、「生産手段」所有の違いによるギャップがあり、本質的に異なる人を比較してもかみ合わない。
5.共通して大切にすべきワークライフバランス要素は「健康」と「家族」。
6.最終的には選択の問題、ワークライフバランスの最適解は自分の中にある。

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