第6話 シャトルが結ぶお嬢の恋〔2〕~ラリーは場外!
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第2章 ラリーは場外!
近所の小学校の体育館、金曜日の19時前。
毎週水金が活動の日だ。地域のバドミントンクラブというのは全国どこでもあるそうで、だいたい小中学校の学区単位くらいに、父母さんたちなどが結成していることが多い。全国選手権まである。僕は町内の回覧板でメンバー募集を見つけ、入れてもらった。
更衣室で着替え、クラブの所定エリアに近づいて行くと、みんながネットを張ったりして準備作業をしていた。
「あ! 『ゲキツリ君』じゃない!」
女性が、俺を見つけて声を上げた。
(あああああ?女神様じゃないか!彼女はうちのメンバーだったのか!)
彼女もかなり驚いたようだったが、嬉しそうに歩み寄ってきた。
年配の世話役が「おお、神崎君、彼女に会うのは初めてだね、うちのビーナス、琵琶舘さんだ、みんなびわちゃんって呼んでるけど。」
「ま~た、遠藤さん、ビーナスなんて。」
「びわとビーナスって、似てるじゃないか。」と遠藤さん。
(なるほ、ど…?)
彼女も照れてはいるが、満更ではないようだ。
お互いに軽く自己紹介。彼女の本名は「琵琶舘琴音」か。(ことね…)
…そして驚いたことに、彼女はめちゃくちゃ強かった。
曲がりなりにも、大学まで「一応経験者」だった僕のスマッシュを涼しい顔でレシーブし、鋭いヘアピンで返してくる。

カン、カンというガットにコルクが当たって放つ鋭く乾いた音、パシッ、パシッと羽根が擦れる音、床がシューズの弾みできゅっきゅっと鳴くような音…ほぼ互角の相手とのラリーは実に楽しい。互いの息までが嚙み合ってくる。ちょっと一休み、と一緒に汗を拭く。彼女のうなじを伝う一筋の汗…。

久しぶりの充実感の中、クラブの時間が終わると、「おつかれ~」とビーナスは僕に(と信じたい)笑顔を見せて颯爽とSUV、僕はニヤニヤチャリで、それぞれの帰路へ。
シャトルが結ぶ軌跡が、二人の距離を急速に縮めた気がした。
翌土曜日の朝。
起きて窓を開けると、例の「お隣の豪邸」のベランダに、見覚えのある洗濯物。あれは、彼女が夕べの練習で着ていたウェアと全く同じものだ!
「まさか…」思わず声が出る。
(つまり…あの「あぶない背中」の主が、スーパーの女神で、クラブのビーナスなのか!これはすごいことになった!)
世界が開けるとは、こういう感覚なんだろう。
(よおし、ならば…)
僕は一計を案じることにした。同じく自分が着ていたウェアと、(こっちが本命なのだが)下着のパンツを並べて、窓の外の最も目立つ場所に干すのだ。
翌、日曜の朝、満を持して隣の様子をうかがう。
「あっ!」
なんと、今度はいかにも高級そうな黒いレースのブラとパンティが、いくつも風に揺れている。
「っしゃあ!通じたぞ!」
ガッツポーズした。
(しかし、あんなエッチなのを着けてるのか?)
思わずその妖艶な姿を想像してしまう。僕はさらに心の中でガッツポーズを繰り返した。
事(ラリー)は続く。
その日の午後のサンフレッシュ店内。
シフトの関係なのか、なかなか遭遇できない女神だったが、今日はセルフレジコーナーのサポート担当らしく、コーナーの端のところに控えている。日曜午後は庶民の買い物タイム、ひどく混んでいて、あちこちから声がかかって忙しそうだ。
(この店、彼女で持ってるよな…話せるチャンスがないかな…)

一通り店内を巡ってセルフレジへ。
だが、「あ、ヤバい。ポテトサラダ忘れた」、よりによって大好物を…ここのポテトサラダは実にうまい、外せないのだ。
するとジャストタイミングで、彼女のほうが「お客様、どうされました?」と寄ってきてくれた。彼女は「行ってきなよ」と、おそらくそういう意味で、ウインクしてくれた。
「すみません!、すぐ戻ります!」
(ちぇ、こんな展開かよ(涙)…)

日頃のフットワークを生かし、ダッシュでポテトサラダを掴みすぐさまリターン。
「ありがとうございました!」
「いえ、お買い上げありがとうございます。」
と言いながら、彼女は意味深にクスクスと笑って持ち場に戻る、その時、再びウインクが放たれた。
(たまらん!)
その瞬間、シャトルが股間を直撃した。
残りの品物をスキャンして会計処理を済ませ、エコバッグを持ち上げてレシートを見た。
「あれ?」
「スパークリングワイン(ハーフ)」と「フォンダンショコラ×2」…んん?買った覚えはないぞ。ごそごそバッグの中身を見てみると、確かにある、ピンクのボトルと、何とかかんとか。
あ、手書きのメモまで入っているぞ。
メモには、女性ぽい特有の文字で、『今度の土曜日まで預かってネ』だと。
急いで振り返って向こうの彼女を見る。人差し指を唇に当てて「しー」と悪戯っぽく微笑んでいた。
僕は、周りに目立たぬよう、親指をグッと立てて合図した。
(…参ったな。女神というより、いたずら子猫だな)
店を出るまでかろうじて我慢し、その後は寝るまで、ニヤニヤが止まらなかった。
(前半終了、後半の3つの章に続きます。インターバルをいただきますね)
