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【HRコラム#01】心理学で読み解く職場ハラスメント事例|“悪意なき加害”はなぜ起こるのか?

こんにちは!EDIIT Inc.の今岡です。
現代のハラスメントは「殴る・怒鳴る」といった明確な行為だけではないことをご存じでしょうか。
“悪意なき加害”から発生するものが多く、加害者側が自覚していないケースがほとんどで、人事ご担当者様からも、よくご相談を頂きます。

そこで、今回は、職場のハラスメントの構造を心理学の観点からお話しします。

▪️職場のハラスメント、増加傾向に

厚生労働省が発表した令和4年度の調査によると、ハラスメントに関する職場での相談件数は過去最多を記録しました。
中でもパワーハラスメントが全体の82.9%を占めており、その深刻さが浮き彫りになっています。

同時に、リモートワークやフレックス勤務など、働き方の変化に伴い“新しいかたちのハラスメント”も静かに増加しています。

本記事では、こうしたハラスメントの背景にある心理学的な構造について、具体的な事例を交えながら解説します。


▪️"無意識の言動"が招く職場トラブル 

かつては「怒鳴った」「叩いた」といった、目に見える行為がハラスメントの象徴でした。
しかし現在では、「無視された」「配慮がない」「期待に応えられると思われすぎた」といった、“意図なき加害”が問題になるケースが増えています。

では、なぜ人は自覚なく他者を傷つけてしまうのか?
その裏側には、私たちの脳が持つ“思い込みのメカニズム”が潜んでいます。


事例❶思い込みが人間関係をこじらせる…職場での評価と先入観

人間は日々の情報処理を効率化するため、無意識のうちに「自分の信じたい情報」ばかりを集める傾向があります。これを確証バイアスと呼びます。

【事例】
マーケティング部の課長・田中さん(40代男性)は、「女性は細かい作業が得意」「男性は論理的な仕事が向いている」といった信念を持っていました。
新しく配属された女性社員・佐藤さん(27歳)が「企画立案にも挑戦したい」と希望を出しても、「いや、君にはこういう作業のほうが向いているよ」と取り合いません。
気づけば、佐藤さんは常に資料整理やデータ入力など、“見えにくい雑務”ばかりを任される立場に。

これは、田中さんが「女性はこういう役割」と信じているため、佐藤さんの能力ではなく性別に基づいた役割期待で判断してしまっている状態です。


事例❷先入観が生む不公平な扱い、無意識な差別

こうした思い込みの一部は、社会の中で共有されているステレオタイプ(固定観念)によって補強されます。

たとえば、

  • 「若手は体力がある」

  • 「女性は気配り上手」

  • 「年配社員はITが苦手」

といった言説は、誰しもが耳にしたことがあるでしょう。

【事例】
営業部の部長・鈴木さん(50代)は、新人男性社員の高橋さん(22歳)に対して「君は若いしガッツがあるよな、どんどん外回り任せるから」と言って、他の同期より多くの顧客訪問を任せました。
高橋さんはまだ業務に慣れておらず、プレッシャーと疲労で体調を崩してしまいます。

ここでも鈴木さんに悪意はありません。むしろ「期待している」という善意すら感じます。
しかし、年齢や性別といった属性だけで役割を押し付けることは、受け手にとっては過度な負担や不公平感につながります。


事例❸権力勾配が"心理的安全性"を奪う

次に、職場での「上下関係」がハラスメントを助長するケースです。

心理学者エイミー・エドモンドソンが提唱した心理的安全性の概念では、「否定されない」「報復されない」という信頼感がなければ、人は本音を言えなくなるとされています。

【事例】
システム開発部の山田リーダー(30代男性)は、日々のコードレビューのなかで、「こんな初歩的なバグも見つけられないの?」とメンバーの小林さん(29歳女性)に発言。
小林さんはそれ以来、質問や相談を控えるようになり、チーム内の情報共有が停滞
後に起きた不具合の原因は、実は小林さんが抱えていた懸念が表に出ていなかったことにあったのです。

上司が意図せず発したひとことでも、受け手が“萎縮する構造”があればハラスメントは成立するという点が重要です。


事例❹リモートワーク時代の“デジタルハラスメント”

働き方の多様化にともない、オンラインでのやりとりが主流となった今、デジタル空間におけるハラスメントも急増しています。

【事例】
経理部の佐藤課長(40代)は、在宅勤務中の部下に対して1時間おきに「今、何してる?」とSlackでメッセージ。
さらに、「会議中は必ずカメラオン」「部屋の背景が散らかってるよ」といった言葉を繰り返し、部下の田中さん(30代女性)は「家にいても見張られているようで苦しい」と訴えるように。

これは「監視の意図はなかった」としても、リモート環境におけるプライバシーへの無配慮が原因であり、受け手にとっては職場でのストレス源になります。


事例❺Z世代 とのギャップが“常識の衝突”を生む

特にZ世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)は、「仕事とプライベートの線引き」に敏感な世代です。

【事例】
製造業の部長(52歳男性)が、土曜の夜に部下(25歳男性)へ「月曜の会議資料、確認しておいて」とLINEを送信。
部下は「休日に業務連絡がくるのはパワハラだ」と感じ、翌週に人事部へ相談しました。

上司からすると「緊急の案件だし、普通の連絡だった」という認識でも、世代によって“業務の許容範囲”は異なるのです。


▪️ハラスメントは“行為”ではなく“構造”で捉える

ここまでの事例を振り返ると、現代のハラスメントは以下のような特徴を持っています。

  • 確証バイアスやステレオタイプが背景にある

  • 上下関係による心理的な“圧”が影響する

  • デジタル環境におけるプライバシー侵害

  • 世代間での価値観ギャップによる衝突

つまり、ハラスメントとは「明確な悪意」ではなく、職場に潜む“構造的なズレ”によって引き起こされるものが多いのです。


次回予告▶「制度で守る」ハラスメント対策

次回の記事では、こうした課題にどう向き合うか、具体的な制度設計と改善事例をご紹介します。
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