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痛みに鈍感だった私が、人の痛みには敏感だった理由

「新学期が始まると、子どもの自殺が増える」
そんなニュースが流れる季節になると、心臓が少し重くなる。

私は学校が嫌で死にたいと思ったことはなかった。
それでも、あの頃を思い出すと真っ先に浮かぶのは“苦しさ”だ。
何がそんなに苦しかったのか。長いあいだ、わからなかった。

大人になり、心と向き合い続けてきた。
NLPに出会い、学び、実践するなかで、ようやく“使える言葉”を手にした。

だからこれは、誰かに向けたメッセージというよりも、
「生きづらさをうまく言えなかった昔の私」への手紙に近い。

学校は“大丈夫なふり”ができる場所だった


私は、生まれた家ではなく、三歳の頃から親戚の家で育った。
形式上は親戚でも、私にとっては育ての親だった。

小学生の頃、学校が嫌だった記憶はない。
いじめもなかったし、行きたくないと思ったこともない。

むしろ学校は、家庭より安心できる場所だった。
家ではいつも張りつめていたから。

私は「いい子」でいようと必死だった。
空気を読み、機嫌を損ねないように、期待を裏切らないように。
息をひそめるように暮らしていた。

愛されていなかったわけではない。
「ちゃんと生きていてほしい」と願われていたこともわかっていた。
それでも、重かった。
「預かっている子だから、しっかり育てなければ」という圧力が、幼い私には重すぎた。

だから、楽しいかどうかなんてよくわからなくても、
それでも学校で友達と笑顔でいることで、「ほら、私は大丈夫」と信じたかった。

“大丈夫なふり”を続けられること。
それが私にとって、唯一の救いだった。

“痛い”に蓋をした子ども時代

小学校に上がる前のこと。
髪を結ってもらうとき、くしが頭皮を強く引っ張って痛くてたまらなかった。

「痛い」と言えば、「我慢が足りない」と叱られる。
涙が出るほどの痛みでさえ、否定された。
後になって頭皮が赤く腫れてから、「あら、本当に痛かったのね」と言われた。

私は学んでしまった。
「痛みを感じてはいけない。」
「感じても、それは私が弱いだけだ。」

その感覚は身体に染み込み、私は自分の痛みに鈍感になっていった。


それでも“他人の痛み”は感じてしまう


誰かが無視されている。
一人で浮いている。
泣きそうな顔をしている。

そういう場面に出会うと、どうしても放っておけなかった。
自然に隣に座り、声をかけていた。

不思議だった。
自分の痛みには鈍感なのに、他人の痛みにはすぐ気づいてしまう。

その理由が腑に落ちたのは、HSC(Highly Sensitive Child)という言葉を知ったときだった。
「繊細すぎる」「気にしすぎ」と言われてきた反応が、実は気質のひとつだと知ったとき、長年のふるまいが一本の線につながった。

小さな頃の私は、いつも願っていた。
「誰も悲しまないように」
「誰も怒らないように」

誰かが泣いたり怒ったりすると、その空気が自分の中まで入り込み、息ができなくなるようだった。
だから、波風が立たないようにと、祈るように過ごしていた。

「いい子」でいたかったわけではない。
ただ、その空気が痛すぎたのだ。

私の感受性は、自分には向けられなかった。
その代わりに、他人の痛みに反応することで生き延びていたのだと思う。


育ての親に宿っていた“戦争の記憶”


私を育ててくれたのは祖父の妹。
戦争を生き抜いた、強い女性だった。

彼女にとって「痛い」と言うことは、生き延びられないことだったのだろう。
「苦しい」と立ち止まることは、命を落とすことにつながる。
食べられない、寒い、怖い、痛い。
そんな感情を口にする余裕などなかったはずだ。

だからこそ彼女は「感じない」ことを選び、無意識に私にも求めたのだと思う。

私が育った家庭には、「ネガティブを感じること」に対する微かな抑圧があった。
誰も悪くない。
それは時代から受け継がれたものだった。

そう理解できたとき、ようやく私は自分の痛みにも居場所を与えられるようになった。

どれだけ自分が苦しくても、誰かのせいにする事は、結局自分に罪悪感を植え付けることだったから。
誰のせいでもない、誰も悪くないとわかったときに初めて解放された。

“始め直し”としての感受性


他人の痛みに敏感で、自分の痛みには背を向けてきた私。
でもいま、少しずつ自分の痛みにも気づけるようになった。

それは弱さではない。わがままでもない。
私の感受性は、他人のためだけでなく、自分のためにもある。

押し込めてきた痛みの奥には、ずっと無視していた“私自身”がいた。
その存在に「ここにいていい」と言えるようになった。


人生は、何度でも始め直せる。


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