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「コーチングって、何ですか?」本質に立ち返る時間

◯◯コーチと名乗る人はたくさんいます。
日本にコーチングが定着してきたのは喜ばしいことですが、だからこそ今、「そもそも、コーチングって何だっけ?」と考えたくなることが増えてきました。

たとえば、国際コーチング連盟(ICF)では、コーチングを次のように定義しています。

「コーチングとは、クライアントの個人的および職業的な可能性を最大限に発揮させるために、思考を刺激し、創造的なプロセスを通じてクライアントとパートナーシップを組むこと。」

この中には、
・答えはクライアントの中にあること
・コーチは指導者ではなく、伴走者・パートナーであること
・指示ではなく、気づきと創造性を促すこと

という考え方が含まれています。

私自身、NLP(神経言語プログラミング)をベースにコーチングを学び、実践し、教えている立場として、この定義には深く共感しています。

ですが実際の現場では、この定義から少し離れた「コーチング」が提供されているケースも多く見かけます。
だからこそ今、もう一度この問いを丁寧に見つめ直したいと思っています。


コーチは「正解を持たない」存在

コーチの役割は、クライアントの中にある答えを信じ、引き出すこと。
だから、何かを“教える”ことはしません。

コーチは、ただそこにいて、質問し、クライアントの思考と感情が整理されていくのを見守る。
何も教えないのに、なぜそんなことが起きるのか。
それは、深いラポール(信頼関係)を無意識レベルで築いているからです。

「この人には話しても大丈夫」と感じられる空間。
それがあって初めて、クライアントは自分の内側にある思いや葛藤を、言葉にして外に出すことができるのです。


コーチングの土台①:ラポール

クライアントが無意識を開くための絶対的な安心を作る”ラポール技術”。
これについては、具体的なやり方を教えているところがあまりないように伺います。
実際に私のNLPの受講生に、現役のコーチもいらっしゃいますが、コーチングスクールで一切ラポールの具体的な構築方法を学んでいないそうです。
NLPのプラクティショナーコースでは、5つの段階に分けて再現可能なやり方を習得していただいています。
ラポールなしにコーチングは成立し得ないと思うので、
この点はコーチング業界は今後変わっていくのかもしれません。


コーチングの土台②:スタンス

NLPのコーチングでは、柔軟性を大切にしますが、何より大切なのは「スタンス」です。

私が学んだ世界的なNLPトレーナーたち――ロバート・ディルツ氏やティム・ハルボム氏、そしてNLPのルーツであるミルトン・エリクソン――は、スタンスに関して皆同じことを言っています。

「私は、あなたのことを何も知りません。でも、あなたに興味があります」

この「I don’t knowのスタンス」に立つこと。
自分の世界観で相手を理解しようとせず、その人の世界をそのまま受け取ろうとすること。
私たち一人一人が見ている世界は全て違っているからです。
同じものを見ていても、私たちの脳と無意識はそれぞれに違うものを知覚し、違う解釈をしている。NLPでは、これを世界モデル(世界観)と呼びます。
だから、わからない前提から関わること。その上で興味を持つこと。
それがコーチングの本質であり、人と向き合うときに最も大切な姿勢だと私は思います。


質問の本質は「相手の世界観を広げること」

コーチは時にクリティカルな質問をします。
その質問は、決してコーチが知りたいから投げかけているわけではありません。
それでは問診や尋問になってしまいます。

コーチが問いを投げるのは、クライアントの世界を広げるためです。
もし何かに囚われているなら、その世界観を緩める問い。
気づきのきっかけになる問い。
それを探っていくのが、コーチの仕事です。
この質問力についてはたくさんの手法がありますが、それが効果的に作用するかは、「誰のための問いなのか」がポイントになります。


型と柔軟性、そのバランスをどう取るか

コーチングスクールによっては、あらかじめ決められたフレームや時間配分に沿って進める「型重視」のスタイルもあります。
それが合う人もいると思いますが、私はクライアントとしてコーチングを受けたときに違和感を覚えました。

型が先にあって、クライアントがその中に押し込められていくような進め方。
これは、クライアントのためというより、コーチの都合なのでは?と感じることがあったからです。

型は役に立つ。でも、主役は目の前のクライアントであり、そこで起こること、全てに柔軟に対処するスキルこそ重要ではないかと思います。
これは私の好みの問題かもしれませんが。


それは「メンター」か「ティーチャー」か

現場で多く見かけるのは、「教えるコーチ」です。
アドバイスを与え、道を示す。
それが「メンター」「ティーチャー」の役割なら、納得です。
例えば、有名な経営者やその道で先を行く成功者に教えを乞う人がいる事はわかります。そういった方々はティーチングやメンタリングを求めているようです。

でも、それを「コーチング」と呼んでしまうことにより、
コーチングの定義が曖昧になり、本来の意義がぼやけてしまう。

経験や知識を伝えるティーチング、背中を見せるメンタリング。
どちらもクライアントにとって大切な関わりです。
ただ、それと「コーチング」は、やはり立ち位置が違うと私は思います。


進めない“理由”をどう扱うか

最近では、目標設定や行動管理に重きを置いた「タスク管理型コーチング」もよく見かけるようになりました。

「どうなりたいですか?」
「そのために何をしますか?」
「いつまでにやりますか?」
「では次回までに進捗を報告してください」

そんなふうに、ゴールを明確にし、ステップに分解し、期日を設け、実行を促す。
ステップは理にかなってはいます。

こうした進め方は、“アクセルを踏む力”として非常に有効です。
明確な目標があり、目的意識の高い人、たとえば起業家タイプの方には、抜群の効果を発揮するでしょう。

一方で現場では、
「やりたいのに動けない」「目標を立てても、どこかしっくりこない」
といった、整理されていない状態にあるクライアントも多く見受けられます。

ここにあるのは、やる気の欠如ではなく、
本人も気づいていない“無意識のブレーキ”です。

そのまま行動促進だけを行うと、かえって苦しくなってしまうこともあります。
だからこそ、「なぜ進めないのか」という問いに丁寧に向き合える力が、コーチには求められていると感じます。

こうしたケースは、NLPの考え方で言えば“カウンセリング領域”に近いアプローチが必要になります。
現実には、セッション中にゼロからプラス(コーチング)と、マイナスからゼロ(カウンセリング)をシームレスに行き来する場面が多々あります。

けれど、一般的なコーチングスクールでは、「止まっているものをほどく技術」までは扱っていないことも多いようです。

ICFや多くのスクールでは「コーチャブルな状態」=コーチングに適した心理的状態として扱います。
一般的には:
・ゴール志向であり、
・自らの気づきを受け入れ、
・変化に前向きである
という特徴があります。
これはスクールとして誠実な線引きでもありますが、実際の現場にはもっとグレーで揺らいだ人たちが多くいます。

明確な精神疾患がある場合、医療や専門家に委ねるのは当然のことです。
しかし、「変わりたいけれど、何かが止めている」という状態の人まで“非コーチャブル”と判断してしまうのは、少し早計かもしれません。

前に進みたいけれど、何かに足を取られている人に対して、
そのブレーキを丁寧に見つけ、必要であればゆるめていく。

そんな関わりができるとき、コーチングはもっと深く、やさしく、力強い支えになります。


おわりに:改めて問い直したい


私は、主にNLPのコーチングを学び、実践し、教えてきました。
数あるアプローチの中で、NLPは私にとって「現場で役立つ実践知」として信頼してきた手法です。

それが唯一の正解とは思いません。
どのアプローチであっても、人と真摯に向き合い、変化を支える営みに私は敬意を持っています。

その中で、ひとつだけ確かに思うことは

コーチングとは、「導くこと」ではなく、
“その人の中にある答えが見つかるのを支える関わり”だということ。

私は、あらためて問いかけたいのです。

「コーチングって、何ですか?」

原点に立ち返るこの問いを、
コーチングに関わるすべての人と分かち合えたらと思っています。

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セミナー情報はそちらでも随時お知らせしています。



著者プロフィール:
Effica株式会社 代表取締役
全米NLP協会認定トレーナー
柳下早紀

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