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その石には意思がある【1/3】発見:天音町の奇妙な冒険

『¥0』

「何でもお宝鑑定スペシャル」テレビスタジオに、司会者の威勢のいい声が響き渡る。 きらびやかな電光掲示板に表示された数字は、冷酷なものだった。

スタジオに微妙な空気が流れる。 依頼人の男は顔を真っ赤にし、鑑定台の上の「石」を指さして叫んだ。

「嘘だろ!? 記号だか古代文字だかが知らないが、刻まれているんだぞ! 貴重な石だって30万円もしたんだ!」

初老の鑑定士は、眼鏡の奥の目を憐れむように細め、穏やかな声で言った。

「お気持ちは分かります。しかし、これはただの奇妙な模様が描かれた石です。古代人のタイムカプセルでもなく、歴史的価値も、鉱物としての価値もありません」

「どうか、思い出として大事になさってください」

「ふざけるな! こんなゴミ、いらん!」 男は石をひったくると、スタジオの隅にあるセットへ向かって投げつけた。

そこは『供養の池』と呼ばれる、番組で値がつかなかったガラクタを処分するための、プラスチック製の書き割りの池だった。

<男が怒りながら退場し、収録の終わりを告げるブザーが鳴った>

スタッフたちが撤収作業に追われ、スタジオが薄暗くなった頃。 誰もいなくなったセットの影から、先ほどの鑑定士が音もなく姿を現した

彼は『供養の池』の底に手を伸ばし、男が投げ捨てたあの石を拾い上げた。 その手は、先ほどステージで見せた哀れみの態度とは裏腹に、歓喜でわずかに震えていた

「……この石。価値のわからない大衆にとっては、これはただの『0円』の石だ」

鑑定士は、石に刻まれた歪な古代文字を愛おしそうに指でなぞる。 彼の持論は明快だった。

モノの価値とは、歴史や品質といった「希少価値」などではない。売れるから価値があるのだ。つまり、どんなモノであっても、それを欲しがって買う奴が一人でもいるのなら、価値は無限に跳ね上がる。

さらに、偽物本物かもどうでもいいことだ。


鑑定士はとある奇妙な収集家の大富豪の屋敷を訪れ、「今日は、とっておきの品をご用意しました」と石を差し出した。

…これさえ売れれば、俺は本物の鑑定士として認められる

大富豪は石を手に取り、刻まれた文様を確認する。

鑑定士は話を続ける。「事前に鑑定したところ、商品ロゴマーク、どの古代文字にも該当しません。これは新発見です」

大富豪は石を見つめたまま話し始めた。

「君のような商売人には言っても無駄だが…私は芸術を愛しているのだよ」

かの有名な、世界で最も有名でミステリアスな未解読の奇書、「ヴォイニッチ手稿(Voynich Manuscript)」本全体が、世界中のどの言語にも当てはまらない奇妙なアルファベット(暗号)で書かれており、カラーのイラストには実在しない植物、天文学が記されている。

オカルトマニアは、古代に宇宙人がいた証明だの、異世界の存在などと騒ぐが…

__そんなものはないのだ。

もしも、現代が核戦争で滅びて廃墟になった後、未来人が自由の女神等の遺跡を発見した時に、地球には過去に「巨人」や「ゴジラ」がいたことの証明になるのか?」

「だからといって偽物でもない。古代人の想像の産物であっても、天才詐欺師による最高級の捏造物であっても、魂が宿っていれば、それは芸術なのだ」

富豪はそう語ると、再びテーブルの上の石を手に取った。 その時、富豪の手の中で、石がカラカラと奇妙な音を立てた。

富豪はニヤリと笑うと、デスクの引き出しから無骨なハンマーを取り出し、鑑定士の目の前でその石を思い切り叩き割った。

パキィン!

軽い音を立てて、石はあっけなく真っ二つに砕けた。 あまりの脆さに鑑定士が目を見開く。割れた石の断面、その空洞の奥から覗いていたのは、一枚の小さな銀色の丸シールだった。

『天音町観光協会・公認グッズ』

「こ……これは……!?」 鑑定士は声を震わせ、ガタガタと椅子から立ち上がった。 「駅で売られている……ただの観光のお土産、だったのか……!?」

「マジシャンと超能力者の違いとは何だ? スプーンを曲げる等の超能力の存在は科学的に立証されていない。ただの曲芸だ。プロのマジシャンにとって、そのような技術も疎い偽物が、本物を愚弄している」

__数千万円で売りさばくはずだった石は、古代人の想像の産物でも、天才詐欺師が夜な夜な削り出した芸術品ですらなかった。ただの観光客向けの、大量生産された土産物。

鑑定士の顔からスーッと血の気が引いていく。 そんな彼を見下ろしながら、老富豪は部屋中に響き渡る声で高笑いした。

「ハハハハ! 君のような鑑定士が、観光ビジネスモデルに騙されるとは滑稽だな! おい、その曇った眼鏡を替えたらどうだ!」

「くっ……失礼、します……っ!」 鑑定士は恥辱と落胆にまみれ、這う失意のままに富豪の屋敷を飛び出していった。

静まり返った応接室。 鑑定士が帰り、一人になった大富豪は、デスクの上に散らばった「お土産の石」の破片をじっと見つめていた。

その体は、先ほどとは全く違う理由で、激しく震え始めていた。 富豪の興奮は、収まるどころか、今や爆発しそうになっていた。

「……素晴らしい。素晴らしいぞ……!」

富豪は割れた破片を拾い上げ、狂おしいほどの笑みを浮かべた。

「あの鑑定士の金の亡者には、この石の本当の価値も意味も分からんだろう!

「お土産ということはイミテーションで、原型となった本物が存在するということだ……!!」

富豪は、シールに印刷された「天音町」という文字を睨みつけるように凝視した。頭の中で、すべてのパズルのピースが急速に噛み合わさっていく。

ダイヤモンドは本来、採掘量が多くそのままでは暴落するはずの石だが、特定の巨大企業が流通量を制限し、「永遠の絆」といったイメージ戦略(フィクション)を植え付けることで高額な価値を維持している。

ダイヤモンドは「大量にある石ころを」価値を高めて本物にした。 なら、この石はその真逆だ。

なぜ、こんなチープな観光土産が、世界中のどの古代文字にも該当しない独自の完璧な規則性を持っているのか? なぜ、わざわざ「大量生産の偽物」として、世間に広くバラ撒かれているのか?

「そうか……そういうことか……!」

ゾクゾクとするような快感と恐怖が、富豪の背筋を駆け上がる。

「意図的に、大量の『チープな偽物』を創り出してバラ撒くことで……大衆に『ただの価値のない土産物だ』と思い込ませ、本物の価値を薄め、その存在を隠蔽しようとしているんだ……!」

ダイヤモンドとは真逆のコントロール。本物の恐ろしい力を隠すため。これこそが、この天音町を支配する黒幕が仕掛けた、世界を騙す最高峰の「マジック(隠蔽の芸術)」ではないか?

「天音町……。そこに、本物が眠っている」

#天音町の奇妙な冒険 🥚風景を投稿します。
studio_maki🍀note.2025.4.17_φ(・_・☘ 様より引用

次回お話の続き

その石には意思がある【2/3】解読

こちらのお題です

主催者も投稿するのがスタイル

キーワード:
「落とし物」「パズル」「偽物本物」「幸運中毒」「最後の1個」「幸せ加速器」「ビジネスモデル」「交換アイテム」「誰も知らない罠」「タイムカプセル」「未解読予言」

上記のキーワードのどれか3つを入れる

作品はこちらからいただきました。
studio_maki🍀note.2025.4.17_φ(・_・☘ 様

ありがとうございます!使わせてもらいました。

以上

よろしくお願いいたします_φ(・_・☘✨🍀



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