『虹いろ図書館のへびおとこ』で辻村深月さんがどこに「ああっ!」となったのか親子で気になった話【読む子育て】
そこは果たして「どこ」だったのかーー。
読書の景色は十人十色。あなたの景色をさがすために今、本を開いて会いにいきます。
ーーというほどのものではないけれど、我が家で起こった読書体験の話を少し😊
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【1】「絶対に負けられない本選び」がそこにあった
ある週末にこんなやりとりがありました。
小4次女(本好き)
「読むものがなーーーい!」
母「あれ、学校の図書室は?」
小4次女「今週は係活動が忙しくて行けなかったんだよ」
母「家の本もあるでしょ。『本好きの下剋上』は?」
小4次女「2周した」
母「漫画でもいいよ。『ドクターストーンは』?」
小4次女「2周した」
母「『鬼滅の刃』は? ほら次の映画に備えて予習を・・・」
小4次女「この数年間で3周はした」
母「おほほほほ・・・なんかゴメン。今日は時間あるから好きなの選びに行こうか。いやちょっと待って! いつか一緒に読みたいと思ってたとっておきの1冊がある。今回はママのおススメにしてもいい?」
小4次女「いいけど私、小説なら自分と同じ年くらいの女の子の話が好きなんだよ」
母「小学生が主人公なら大丈夫だよね? よし決まった。買いに行こう」
--選書って失敗することもあるけれど、次女を喜ばせるために「今日は一発で決めたい!」と考えて、浮かんだのが1冊の本でした。
【2】というわけで読むことになった『虹いろ図書館のへびおとこ』
いつか読もう。面白いに違いない。と思っていた有名な小説『虹いろ図書館のへびおとこ』。
著者は櫻井とりおさん。
第1回氷室冴子青春文学賞大賞を受賞し、2019年11月に単行本が発売されました。
どんな話かーーを簡単に説明すると、主人公は小学6年生の火村ほのか。いじめがきっかけで学校に行けなくなったものの、家族には相談できず、たどり着いたのはオンボロな図書館。
そこには「顔の半分」、おでこもほっぺも、耳も首も半分緑色をした司書さんが働いていました。いじめっこのかおりちゃんが前に「へびおとこ」と呼んでいた人。
ほんとの名前はイヌガミさん。
愛想もなく、いつも「つまらなそうな顔」で働いているイヌガミさん。でも「本」の知識はさすがのもの。押し付けず、さりげなく「その時のほのかに会った本」に出会わせてくれます。
これが、いいんですよね。こういう人に私もなりたいなぁと。
ほのかも最初こそ戸惑っていたものの、それらの本を通して少しずつ変わっていきます。
そして。
謎の少年「スタビンズ君」との出会い。
誰にも邪魔されない「居場所」をもてた安心感。
どの本を読んでもいいし、読まなくてもいい「図書館」のほどよい自由。
つかみどころのないイヌガミさんのーー実はあったかい人間性。
(ほのかからは飄々とした大人に見えますが、彼の心のうちはシリーズが進むごとに明かされます)。
さまざまな要素が絡み合い、ほのかは少しずつ、でも確実に成長していくんですね。

そしてほのかには「詮索せず、見守ってくれる人」がいました
【3】「『ああっ!』がどこかわからなかったの」
数日後。
読み終わったようなので次女に感想を聞こうとしたら、意外な展開になりました。
小4次女「面白かったよ~。ほのかちゃん、どうなるかドキドキしたけど、最後もよかったし、イヌガミさんもいい人だった」
母「よかった~。シリーズは6巻まであるみたいだから、次も買っておくね」
小4次女「うん。でも・・・その、辻村さんっていう人が『ああっ!』ってなったのがどこなのか、わからなかったの」
母「ん? あ・・・『ああっ!』の場所? あぁ・・・はい。はいはいはい」
小4次女「その帯の」
母「この帯の!」
ーーそうなのです。
『虹いろ図書館のへびおとこ』単行本の帯には、こう書いてあります。
🔳辻村深月さん 絶賛!!
「この小説の中盤、とある場面が登場した瞬間、私は「ああっ!」と顔を覆い、その場にくずおれるほどの感動を味わいました。私は、この小説が大好きです。」
小4次女「読んだらわかると思ったんだけどね」
ーー私はハッとしました。
確かにこの帯、気にはなりましたが、次女は私以上に「知りたい」と思い読んでいたのです。そして私の中の何かのスイッチが急に入ります。
母「わかった! 任せて! そのうち読もうと思ってたけど今日読むね。そしてママが解明してあげる。だってママは辻村深月さん好きだし、ミステリも好きだから(関係ない)」
--なぁに、『もうここしかないやん』というポイント的な場面がすぐわかるだろう。そう思ったのです。
母「まーーかして!」
小4次女「あ・・・うん」
それでどうなったかと言いますと。

【4】「謎はすべて解けた!」と言うつもりが・・・
謎を解明するーー。
いやそれはともかく、物語の面白さに純粋に引き込まれてページをめくっていった私。
読みやすい文章のおかげもあってサクサク進み、やがて後半の、ある場面にさしかかった時ーー。
「あぁ・・・」と思い、目からポロポロと涙がこぼれました。
感動したのです。
評判の作品だけあって、やはり大人の心にも響くものがある。
詳しくは書きませんが
・クリスマスの出来事で
・ほのかの心の成長が『相手への言葉』にはっきりと表れる場面
とだけ添えておきます。
ここだ。ここに違いない。
私はそう思い込みました。
と同時に「次女にはまだ難しかったのかも・・・だってここ、大人から見て『子どもの成長は素晴らしい』と感じる場面だもんね。うんうん」と勝手に納得。
いやぁ、お恥ずかしい。
いずれにせよ、これは間違っていると後になって気付きました(根拠は後述します)。
ベストセラー作家・辻村深月さんの名誉にかけて、私が思った「その場面」を、辻村さんもそう思ったはずだなんて、おこがましいにも程があり(笑)。いやもちろん名場面なんですよ。
とにかくその時は思い込んでいたので、次女に話してみたのです。
結果として、そのやりとりが私の大切な思い出となりました。
※以下、ネタバレというほどではありませんが、後半の展開に少しだけ触れるので未読の方はご注意ください

この時期に読む本としてもオススメ。
そしてこれを読むと折り紙がしたくなります
【5】それは私がまだ恋を知らないから?
母「ねぇママはこの場面だと思ったんだ。ほのかちゃんがこの人にこれを言う場面。ママ泣いちゃったよ」
小4次女「そうなんだ。 私は特に、泣くほどじゃなかったけど・・・」
母「もしかしたら、あなたにはまだ響かなかったのかもしれないね」
小4次女「どうして? 私がまだ本当に人を好きになったことがないから?恋を知らないから?」
ーードキリ、としました。
なんて可愛らしいことを言うんだろう。
その時の、私をまっすぐに見つめる次女の瞳がとても澄んでいて、胸を打たれてしまったのです(親バカ)。
母「ううんそうじゃないの。これは大人の読者ならよりいっそう、『ほのかちゃん成長したな』って感じる場面だと思うんだよね。だって行き場がなくて図書館に通っていた子が、こんな風に人を思いやれるようになるなんて・・・」
小4次女「ふ~んそうなんだ。まぁいいや。とりあえず2巻も読んでみるね!」
【6】あれ?違うかも…そして子どもが教えてくれたこと
かくして、ムダに格好つけて「読書の先輩風」を吹かせた私。
次女に断言したものの、「本当にあの場面であっているのか」と不安を抱き、冷静になって考えてみたのです。
ーーすると、あれ、違うな・・・と気づきました。
簡単なことです。
帯の文章にはこう書いてありました。もう一度引用させていただきます。しつこくてスミマセン。
🔳辻村深月さん 絶賛!!
「この小説の中盤、とある場面が登場した瞬間、私は「ああっ!」と顔を覆い、その場にくずおれるほどの感動を味わいました。私は、この小説が大好きです。」
そう、「中盤」「とある場面が登場した瞬間」なのですよね。
私が感動し、次女に伝えた場面は、どう考えても「終盤」なんです。
そして、よくよく考えるとニュアンス的に「とある場面が登場」という流れではありません。
ーーとすると、あそこかな・・・と浮かびました。
確かに私も「おお!」とワクワクしましたし、本好きの人ならそうかも。とは言え私のNo.1エピソードは終盤のあの場面だったのです。好みの問題ですね。
結局はわかりません。
でも、それでいいと思いました。
一応、誤解させたまま(?)では悪いので、次女に「違うかもしれない」と伝えました。
でも予想通り次女は「ふ~ん」。
たぶんもう、どちらでもいいのでしょう。
最初は気になったけど、今はもう。
この小説を絶賛しているベストセラー作家さんの感想も、ママの感想も、参考にはするけれど、次女にとって大切なのは次女の感想なんですよね。
一周して、最後に私が感じたのは
「結論はともかくとしてこの探求、なんだかすごく面白かった!」でした。

【7】 続編も名作揃いーー1冊からこんなに広がるなんて
さてこの件。
後でいろいろ検索すると、辻村深月さんによる「氷室冴子青春文学賞」の選評を読むことができました。
それでも、「たぶんこの場面だろう」しかわからなかった。
具体的に明かさないからこそ、いいのかもしれません。
そうなんですよね。
なんとしても解明しようとして私、未熟ものでした。
ミステリ好きの血が騒いだもので(笑)。
でもこの1冊を通して次女と、「書かれた物語を読む以上の楽しみ」を得ることができたんです。
素敵な物語を書いてくださった櫻井とりおさん。絶妙に「考える機会」を与えてくださった辻村深月さん、ありがとうございました!
ーーこの話はこれでおしまい。
【8】 へびおとこ=イヌガミさんの本音を知りたければ
ちなみにこの『虹いろ図書館』シリーズ。
6巻まであり、ぜんぶ読みましたが、最終巻の『虹いろ図書館 司書のぼくと運命の一年』が個人的にはいちばんグッときました。
1巻ではほのかちゃんの目線でしか語られなかった「へびおとこ=イヌガミさん」の本音や舞台裏がわかります。
どんな思いで図書館に来る子ども達と接していたのか。どんな思いで司書の仕事に取り組んでいたのか(もちろんそれ以前の巻でもいろいろわかります)。
ミステリじゃないけれど「そうだったのか」がたくさんあって、しみじみと心に残る最終巻でした(もちろん2巻~5巻あっての感動です)。
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とにもかくにも、『虹いろ図書館のへびおとこ』に出会えてよかった。
「子どもと同じ本を読む機会」って、読み聞かせの時期を過ぎると減っていくものですが、やっぱりたまにはいいですね😊
こうした具体的なやりとりも、「読書に対するポジティブなイメージ」を子どもに根付かせるのではないかと思っています✨
ーーそしてどうか次女がこのシリーズを何周もして、効率よく暇つぶししてくれますように(笑)←再読のたびに気づきのある内容です!

この時のテーマは『指輪物語』と『ロード・オブ・ザ・リング』。
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「これはとてもよくできた映画だ。『指輪物語』ファンの間でも評判がいい。だけどこの世界には、読んだ人の数だけ『指輪物語』が存在する。この映画は、そのたくさんのうちのひとつにすぎないんだ。ピーター・ジャクソン監督をはじめとする、スタッフが考えた『指輪物語』だ」
(中略)
「本を読んでるときに想像するのと、映画に出てくる登場人物はちがうの?」
「たぶん違うね」イヌガミさんは考え考えいう。
「でも、映画を先に見てから本を読むと、自分で想像する世界を作り出せない。映画を思い浮かべるだけになっちゃうんだ。本が先なら、自分が想像するおはなしの世界と、映画のスタッフの考える世界と、両方とも楽しめるんだよ」
(『虹いろ図書館のへびおとこ』p226-227より)
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
素晴らしい読書体験がたくさんの方に訪れますように!
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〈本データ〉
『虹いろ図書館のへびおとこ』(著者 櫻井とりお)
・単行本発売日:2019年11月
・文庫本発売日:2024年7月
※手元にあるのは単行本です(河出書房新社/税別1350円)
※以下、シリーズをタイトルのみ記します
『虹いろ図書館のひなとゆん』
『虹いろ図書館のかいじゅうたち』
『虹いろ図書館 司書先輩と見習いのぼく』
『虹いろ図書館 半分司書のぼくと友だち』
『虹いろ図書館 司書のぼくと運命の一年』
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