第53話 表明と保証条項-Representations and Warranties 条項(2)
相手方が「契約締結前」に言ったことを、証拠として契約書中に残しておくことに「Representations(表明)」に関する規定の大きな意味があることを前回に説明しました。
今回は「Warranties(保証)」の部分に光を当ててみましょう。
保証とは何でしょうか
’warranty’(動詞は’warrant’)とは、当事者の「約束(promise)」を指します。これを日本語では「保証」と訳しています。
’warranty’ という言葉がよく使われる、商品の「品質保証」を考えてみましょう(ときに ’guarantee’ ともよばれます)。売主は、商品が合意された仕様にもとづいて製造されていること、一定期間その性能を維持すること、違反があれば修理または交換をすることといった約束をします。
'warrant' ≠ 'promise'
ただ、次のように注意すべき点が2つありますので、'warrant' と 'promise' に互換性があるとは考えないでください。
1つは、動詞 'warrant' は契約書(不動産に関するものを除きます)の中で、表明/保証の場合と、品質保証の場合以外に使われることはめったにないということです。
2つ目は、名詞 'warranty' には、英国契約法上「約束」であることに加えて、「その違反の場合に契約解除はできない」という性質があることです。
このことを含めて「約束(する)」という意味の英語については、「国際契約英文法」の「「約束する」は英語で何といえばよいのですか?」で取り上げます。
さて戻りますが、「表明と保証」条項における「保証」も約束です。保証は表明とは違って、事実以外のことや、将来のことについてでもできますし、単なる意見でもかまいません。
また保証という行為は、契約前ではなく、契約書の中ではじめてするのですから契約の一部です。(☚これがポイント)
表明と保証の違いはどこに出てきますか?
まず、表明違反は不法行為だということを思い出して下さい(前回参照)。これに対して保証は「契約の一部」ですから、その違反は契約違反です。そして表明と保証の違いは、違反したときの救済方法にあらわれます。
「表明」の違反に対しては、その相手方には「結んでしまった契約をなかった状態に戻す」権利がありましたね(前回参照)。
「保証」に違反した場合には、相手方に損害賠償を求める権利が生じます。
損害賠償の権利は表明、保証いずれの違反の場合にもあるのですが、「表明違反」と「保証違反」では損害賠償の内容や範囲などが異なります。(☚これがポイント)
表明と保証の両方を入れておくとどうなりますか?
ここからが大事なのですが、この条項の違反の場合には、英国法の下では契約違反に対する救済のほかに、違反が ’misrepresentation’ でもある場合には、相手方は表明違反の救済を求めることもできるのです(もっとも、よいところの取り放題ではありませんが)。(☚これがポイント)
だから、前回に紹介したようにこの種の条項は ‘Seller hereby represents and warrants to Buyer as follows: …’ と書かれるのです。こうしておけば救済の可能性が広がるのです。
契約の準拠法が英国法以外だったら、どうなるのでしょうか?
これはとても値打ちがある条項だと思われたことでしょう。でも上の話は「英国法」の下でのことです。(☚これがポイント)
もし、契約の準拠法(契約に適用される法。第14話から16話参照)が、英国法(少し広くいうなら「英米法」)以外の法だったら、 ’represent’ や ’warrant’ のそれぞれにどんな意味が与えられるかとか、それらの違反の効果がどうなるかは、適用される法律に従って考える必要があるのです。
つまり、英国法下で得られる救済と同じものが与えられるかどうかは、準拠法によるということです。(☚これがポイント)
