第49話 合意があれば契約を変更できるか?-Amendment 条項
今回は契約の変更、修正に関する「Amendment 条項」を検討しましょう。
どんな規定ですか?
実例を見るのが一番早いでしょう。
1.No amendment, supplement or other modification to any provision of this Agreement shall be binding unless in writing and signed by both Parties.
和訳:
この契約書のいかなる条項の変更、追加、又は修正も、両当事者が署名した書面によるのでない限り、拘束力を持たないものとする。
2.This Agreement may be amended or modified only by an instrument in writing signed by both parties.
和訳:
本契約は両当事者の署名した書面によってのみ、変更、又は修正することが出来る。
1は「禁止型」、2は「条件付きの許可型」ですが、趣旨は同じです。なお、’amend’ と ’modify’ を「変更」「修正」と訳し分けましたが、それほど違いがあるわけではありません。この他にも ’change’、’alter’、’vary’ などといった語が用いられることもありますが、同義だと思ってもらってかまいません。それぞれ名詞で使われることもあります。頻度からいうと ’amend’ でしょう。
これって、当たり前のことじゃないかと思いますが?
前回に「権利の放棄条項(Waiver clause)」を挿入する理由は、権利の行使を怠ったときに、そのことが当該権利の放棄と解釈されてはまずいからだ、といいました。修正条項も目指す「方向」は同じです。理由を説明します。
契約を変更する口頭での契約
多くの国で「契約」は「口頭」でできます(書面を要求する数少ない例外はあるにせよ)。既存の契約を変更するということも「契約の変更」という種類の「契約」です。つまりせっかく当初は「書面」の形にまとめた契約でも、口頭で変更できてしまうというわけです。(☚これがポイント)
しかしそれをゆるすと、手元の契約書面は、その後の変更を反映するものではなくなってしまいます。その上、変更の内容を「証拠立てる」ものは関係当事者の記憶しかない、ということにもなってしまいます。特に会社同士の契約では、担当者の交替、転勤等もあり、口頭での契約変更を許すと、思わぬ混乱が起こることになるのです。
修正条項の効用
というわけで「書面でなければ契約は変更できない」旨を、わざわざ書いておくのです。(☚これがポイント)
それでも口頭で変更に合意してしまったらどうなるのでしょう
契約の変更には面倒な社内手続きがいるものですね。そこで現場では「まぁ、今回限りということで…」とか「急ぐから…」などといって、原契約の条件とは異なった条件で、取引をしてしまうことがなくはありません。
さて、そのようなときに契約書には「この契約は書面でなければ変更できない」と規定してある以上、変更は当事者を拘束しない、ということになるのでしょうか? 口頭でなされた変更に従って、取引が完了してしまった場合に、修正条項の存在を手掛かりに取引を従前の状態に戻すことができるのでしょうか? それは何となく納得がいかないのではありませんか。
その通り!この条項があらゆる場合に文字通りの効果を発揮するかどうかには、理論的に大いに議論の余地があるのです。
では修正条項はなくてもよいのでしょうか?
とはいえ、この条項にまったく利益がないのではありません。それどころか基本原則としての意味は十分あります。ですから Waiver 条項と同じように、やっぱり入れておくべきなのです。
「何も書いていないから書面、口頭を問わず変更が許されている」と取られてしまうのは防がなければなりません。
相手の合意なく契約内容を変更する権利を留保する場合
ちょっとした付け足しです。よくIT製品などに「製品の仕様は予告なく変更されることがあります」と書いてありますね。メーカーは性能改善のために適宜製品の仕様を変更したいと考えます。それは悪いことではないでしょう。またソフトウェアなどのライセンス契約で技術がどんどんアップデートされていくのは当然ですらあります。
当初の仕様は契約書に書いてありますから、このような改善やアップデートは厳格にいうと契約事項の「変更、修正」なのです。でも、そうするためにいちいち相手方の合意を取り付けなければならないとしたら、大変ですね。
そこでこの種の契約では基本となる契約中に、「売主は仕様等を一方的に変更する権利を持つ」旨を明記しておきます。
The Supplier reserves the right to improve or modify any of the Products without prior notice.
和訳:
製造者は事前の通知なく商品を改善、改変する権利を留保する。
勝手に変えないで下さい!
もちろん買主、ライセンシーが「変更を拒否する権利を持つ」、「実質的に性質が変わるような変更をすることはできない」とか、「変更をする場合は迅速にその内容を相手に通知しなければならない」などといった条件をつけることも少なくありません。どのあたりで折り合いを付けるかは、取引の内容、業界の常識などによるようです。
