国際契約英文法ー契約書における主語の扱い
英文には主語が必要です(命令文などでない限り)。契約書といえどもこの点は一般の文章とかわりません。しかし契約書を書くに当たっては、いくつか気をつけたいことがあります。
主語は必要です
日本語では契約書においてさえ、自明であると思われるときは、主語を省略することがあります。
「期日に商品代金の支払を怠ったときは、不払いの翌日から年率***%の割合で、遅延利息を払わなければならない」
商品代金を支払ったり、遅延利息を支払う義務を負うのは「買主」ですから、分かり切ったこととして文章に出てきていません。日本語としては不完全ではありませんし、意味は通じます。しかしこれを英文に直そうとすると、だれだって ‘the Buyer’ という主語を置くでしょう。
If the Buyer fails to pay the Price on its due date, the Buyer shall pay delay interest thereon at the rate of *** % p.a. from the day after the due date.
英文契約書で主語が省略されることはありません。(☚これがポイント)
主語は当事者が好ましい
契約書というのは「当事者の権利・義務」を述べた書面ですから、「誰々は何をする・しない」と書ける限り、主語は当事者にする方がよいのです。
そうすれば「何々はこれこれでなければならない」とか「何々はこれこれであるものとする」と書くより文章がずっと直截的になり、説得力がでてきます。「モノ、こと」が文章の主語になる場合については第36話をご参照ください。
もちろん「こと」を主語にしないと書けないこともあります。第15話に出てきた「準拠法」条項の主語は当事者にしようがありません。
This Agreement shall be governed by the laws of Japan.
主語は義務者に
当事者のうちで権利者、義務者のどちらを主語にするかといえば、答は「義務者」です。このことは第23話、第36話などでしばしば触れてきました。
日本語の契約書には「誰々は何々をする権利を有する」と書かれる場合がありますが、英文契約書の書き方の基本は「当事者」そして「義務者」です。(☚これがポイント)
1文の中に主語の数は1つだけ
1つの文章の中では主語は1つにするのがわかりやすい文章を書くコツです(基礎からわかる英文契約書 第38話)。複数の主語が出てくると、思考の流れが妨げられるからです。(☚これがポイント)
もちろん同一文章の中で1回目は Buyer という言葉を使うが、2回目以降は 適宜 'it'(契約書では当事者は 'he'、'she' ではなく 'it' で受けるのが普通です)となることはあります。主語は「1つ」であって「1回だけ」というのではありません。
主語の数については例文と対処法を含めて、もう少し詳しく別の項でお話ししたいと思います。
