『面使い』第ニ話
○山門
扁額に『閻魔堂』の文字。
ノミのかつらを槌で叩き面を削る音が響いている。
○閻魔堂・中
面をノミで削っている手が見える。
○同・境内・中
颯斗、ひかり、法派の一団が、入ってくる。
ノミの音がピタリと止まる。
颯斗・ひかり「!」
颯斗、ひかり、法派の一団も、ピタリと止まる。
閻魔堂の扉が開く。
颯斗、ひかり、法派の一団が、身構える。
僧侶が、立っている。
僧侶「なにか御用かな?」
颯斗「面、欲しいんだけど」
ひかり「ちょっと!」
颯斗「霊撃刃の」
ひかり「あんた、バカなの?」
僧侶「何面欲しいのかな?」
颯斗「あるだけ全部」
僧侶「今、五百面しかないが、よろしいかな?」
ひかり「え?」
○同・中
颯斗、ひかり、法派の一団、僧侶が、座っている。
五百面の面がいくつもの箱に分けられ入れられている。
僧侶、霊撃刃の面を一つ取り出し、
僧侶「法派の人々ならば、有意義に使い、世の中を平安に導いてくださるでしょう」
と、ひかりに差し出す。
ひかり、霊撃刃の面を受け取り、
ひかり「はい。きっと暴力のない、法にのっとった世をつくります」
僧侶「着けてみなされ」
ひかり「はい」
と、霊撃刃の面を着ける。
僧侶「どうかな?」
颯斗、獅子面を着ける。
ひかり「?」
颯斗「勝負だ」
と、ひかりに斬りつけ、庭に飛び出る。
ひかり、颯斗の刃を受け、颯斗を追う。
ひかり「どういうつもり?」
颯斗「どっちが強いか知りたい」
と、連斬刃の大きく伸びる刃で次々と斬りつける。
ひかり、霊撃刃の大きく伸びる刃で受ける。
颯斗、さらにスピードアップして連斬刃の大きく伸びる刃で次々と斬りつける。
ひかり、霊撃刃の大きく伸びる刃で全て受け止める。
颯斗「クソ。強えな」
と、さらに斬りつける。
ひかり「やめて!」
と、颯斗の頭上めがけて霊撃刃を振り下ろす。
霊撃刃の大きく伸びた刃が、颯斗の全身を縦に真っ二つに斬る。
しかし、斬られたのは、真っ二つにきれいに割れた獅子面だけである。
ひかり、ハッと我に返り、
ひかり「大丈夫?」
と、颯斗に駆け寄る。
颯斗「う、ううう」
と、悶えているが、
颯斗「斬られても、死なねえ」
和尚「霊撃刃は、面の持つ妖力だけを断ち切るのです」
ひかり「なんで、こんなことをするのよ!」
颯斗「霊撃刃がどんなものかと思ってよ」
ひかり「死んでたらどうするの!」
颯斗、フラフラと立ち上がり、歩いていく。
和尚「心配だったのでしょう、あなたが」
ひかり「私が?」
和尚「いきなり、霊撃刃の面で、他の面使いと闘わせることが」
ひかり「自分で予行演習させたってことですか?」
和尚「そうです」
ひかり「死んでたかもしれないのに。なんで?」
和尚「好きなんでしょう」
ひかり「誰を?」
和尚「あなたを」
ひかり「!」
フラフラと歩いていく、颯斗。
○平原
ひかり、法派の法被に『霊撃刃』の面を着け、『雷神刃』の面を着けた面使いと闘っている。
雷神刃使いの男が、刃を振り下ろすと共に雷が放たれ、雷が次々に襲ってくる。
ひかり、刃と雷を難なく避け、霊撃刃の大きく伸びた刃で雷神刃使いの男を真っ二つに斬る。
雷神刃の男「ぎゃああ、やられた」
『雷神刃』の面が真っ二つに割れる。
雷神刃の男「あれ? 切れてない」
と、体を不思議そうに触っている。
ひかり、雷神刃使いの男を連行していく。
○村・外
法派の法被に『霊撃刃』の面を着けた法派の人間A、『風撃刃』の面を着けた面使いと闘っている。
霊撃刃使いの男が、刀を振ると巨大な風の刃が出現する。。
法派の人間Aは吹き飛ばされながらも、霊撃刃の大きく伸びた刃で風撃刃使いの男を真っ二つに斬る。
風撃刃の男「やられた」
『風撃刃』の面が真っ二つに割れる。
法派の人間A、不思議そうに体を触っている風撃刃使いの男を連行していく。
○町・郊外
法派の法被に『霊撃刃』の面を着けた法派の人間B、『炎乱刃』の面を着けた面使いと闘っている。
炎乱刃使いの男が、刀を振ると巨大な炎の刃が出現する。
法派の人間Bは、焼かれそうになりながらも、霊撃刃の大きく伸びた刃で炎乱刃使いの男を真っ二つに斬る。
炎乱刃の男「ぎゃああ」
『炎乱刃』の面が真っ二つに割れる。
法派の人間B、不思議そうに体を触っている炎乱刃使いの男を連行していく。
○各地
法派の法被に『霊撃刃』の面を着けた法派の人間たちが、他の面使いを次々に倒し、面を真っ二つに割り、連行していく。
○収容所・全景
○同・中
面使いたちが、収容されている。
○同・前
住民たちが集まり、歓声を上げている。
ひかり、住民たちを前に演説をしている。
ひかり「私たちは、面使いたちを捕まえました」
住民たち、『うお~、いいぞ!』と歓声を上げる。
ひかり「これからは、暴力ではなく、法に従った世の中になります」
住民たち『いいぞ!』と歓声を上げる。
ひかり「争いやもめ事があれば、法派に言ってください。法派が調停します。暴力や殺し合いをすることなく、平和に解決する社会にします」
住民たち『これで平和な世の中になる』『安心して暮らせる』と口々に安堵の声を上げ拍手する。
○村・中
村人たち、にこやかに話をしている。
その周りを律たちが笑顔で駆けている。
○同・中(夕)
各家の窓から一家だんらんの夕食の笑い声が聞こえてくる。
○町・中
町の人たちが、笑顔で楽しそうに歩いている。
ベンチに座ったり、買い物したりと思い思いに楽しそうに過ごしている。
○同・中(夕)
各家の窓からは夕食の楽しそうな声が聞こえる。
レストランのオープンテラス席では、恋人や友人や家族たちが楽しそうに食事をしている。
× × ×
夜になり、盛り上がり大きな声で話したり歌い始める。
法派の法被を着た一団、やってきて、注意する。
颯斗、それを見ている。
法派C「静かにしなさい」
客A「なんだと?」
客B「いいじゃないの。楽しく飲んでるだけなんだから」
他の客たち『そうだそうだ』『いいじゃないか、これくらい』と口々に反論する。
法派C「もう、九時になりました」
他の客たち、『もうって、まだ九時じゃないか』『そうだ。そうだ』と、法派の集団ともめ始める。
法派C「連行します。(他の法派に)連行しろ」
颯斗「ちょっと、これくらいで、ひどいだろ」
法派C「命令です、ひかり代表の」
颯斗「!」
と、連行されていく客たちを見送る。
○村・中
村人たちが、歩いている。
その中の一人の村人が、道に唾を吐く。
すかさず、法派の一団が連行していく。
颯斗、それを見ている。
○町・道
町の人たちが、歩いている。
その中の一人が、ごみを道に捨てる。
すかさず、法派の一団が連行していく。
颯斗、それを見ている。
○同・道
犬を散歩している人がいる。
犬がした糞をそのままに去っていく。法派の一団が現れ、キャンキャン吠える犬ごと飼い主を連行していく。
颯斗、それを見ている。
○収容所・前(夜)
『ギャアー!』と拷問をされているような叫び声が響いてくる。
颯斗、それを聞いている。
○法派の本部・中
ひかり、机に向かい事務仕事をしている。
颯斗、法派の男たちを押しのけながら入ってくる。
颯斗「どういうつもりだ?」
ひかり「なにが?」
颯斗「なんで、町の人たちを連行する?」
ひかり「ささいなことから厳罰に処すれば、自然と法に従うようになる。むちが必要なの」
颯斗「住民たちは、馬やロバじゃないぞ」
ひかり「似たようなものじゃない」
颯斗「違う! 俺たちと同じ人間だ」
ひかり「そう? 私、忙しいの」
と、法派たちに颯斗を出ていかせるように促す。
法派たち、颯斗の腕をつかむ。
颯斗「やめろ!」
と、振り払う。
法派たち、刀を抜き颯斗を取り囲む。
颯斗「(ひかりに)勝負しろ」
と、刀を抜く。
ひかり「(法派たちに)やめなさい。私が、相手になるから」
○同・庭
颯斗、ひかりが、向かい合っている。
面は着けていない。
ひかり「私のやりかたが気に食わないなら、私を倒せばいいわ。倒せるものならね」
颯斗「ああ、倒してやる。面なしで勝負だ!」
と、通常の刃で斬りつける。
ひかり、通常の刃で難なく受ける。
颯斗「君は間違ってる」
と、連続で斬りつける。
ひかり「間違ってないわ」
と、難なく受ける。
ひかり「私が、導いてあげてるのよ。愚かなロバたちをね」
と、斬りつける。
颯斗、なんとか受け、
颯斗「みんなで、民主的に決めて律していくべきだ」
ひかり「そんな甘っちょろいことを」
と、斬りつける。
颯斗、なんとか受ける。
ひかり、連続して斬りつける。
颯斗、なんとか受けたり身をかわし、反撃にでる。
ひかり、なんなく受け、身をかわし、斬りつける。
颯斗、身をかわすことができず斬られそうになる。
颯斗「!」
律、走り出て、
律「やめて! ひかり姉ちゃん!」
と、叫ぶ。
ひかり、寸止めにして、
ひかり「律に免じて勘弁してあげる。その代わり……」
と、颯斗の腰に下げた袋ごと獅子面を真っ二つに斬る。
颯斗「あ!」
と、地面に落ちた真っ二つに割れた獅子面を見る。
ひかり「これで、私との闘いは終わったな」
と、身を翻し去っていく。
○町・郊外
颯斗、歩いている。
○村・中
颯斗、歩いている。
○山道
颯斗、歩いている。
徐々に細く険しくなっていく道。
○山道
颯斗、両側が断崖の細く延々と続く石
段を登っていく。
○山門
扁額に『閻魔堂』の文字。
○閻魔堂・境内
和尚、境内を掃いている。
颯斗、入ってくる。
和尚「金獅子の面を打っておきましたよ」
颯斗「え?」
○同・中
颯斗、和尚が、金色に輝く獅子の面を間に話をしている。
和尚「獅子の面より、強力な『連斬刃』を繰り出すことができます」
颯斗「『裂元刃』とは?」
和尚「互角でしょう」
颯斗「互角か……なぜ、こうなると?」
和尚「力を正しく使うことは、難しいものです」
颯斗「……」
と、金獅子面を手に取る。
○山道
颯斗、両側が断崖の細く延々と続く石段を下っていく。
○山道
颯斗、歩いている。
徐々に広くなっていく道。
