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【まとめ】バッド・バニー NFLハーフタイム・ショウ

ショーから一週間経ってもまだ色々な声がSNSで上がってますね。日本では「初めて見たけどいいね!」「スペイン語わかんなくても、メッセージが伝わる」的な声が多くてよかったです。アメリカでも肯定感強い中にも、トランプ/MAGA側から否定など様々な想いが発信されてて面白いです。

とはいえ、周囲で「NFLに出たバッド・バニーって何?」って友人もいるので、ちょっとまとめて見ました。未体験の方は、まず以下のYouTubeの映像を楽しんでみてください!ほんの13分です。
https://youtu.be/G6FuWd4wNd8?si=pclfcvvZk77A1CZu

13分にはめちゃ情報量がありますが、【クイック】(700字くらい)、【そこそこ】(2000字くらい)、【細かすぎる】(18,000字くらい)を用意しました。体調に合わせてお楽しみ頂けたら!


ではお楽しみ下さい!

1.【クイック】予備知識なしのひと用(700字)

『NFL バッド・バニーハーフタイムショー』
バッド・バニー
プエルトリコ(カリブのアメリカ領)生まれのラッパー/歌手。31歳。

バッド・バニー

いわゆるトラップとか、レゲトンとか、ヒップホップの「アーバン」とくくられるビートの強い音楽を、スペイン語オンリーで発表しているアーティストです。

2016年に1枚目アルバムを出し、現在コラボ盤入れて7枚を発表してますが。最新盤『デビ・ティラール・マス・フォトス』(写真を撮っておかなくちゃ)まで4枚すべてが全米チャート1位を獲得。(写真の④~⑦)すごくないですか、全部スペイン語なのに全米チャート1位。

①『X 100pre』(2018)、『オアシス』(②、J.Balvinとコラボ)、③『YHLQMDLG/ジョ・アゴ・ロ・ケ・メ・ダ・ラ・ガナ』(2020、④『エル・ウルティモ・ツアー・デル・ムンド』(2021)、⑤『ウン・ベラノ・シン・ティ』(2022)、⑥『ナディエ・サベ・ロ・ケ・バ・ア・パガール・マニャナ』(2023)、⑦『デビ・ティラール・マス・フォトス』(2025)。

2020年以来グラミー賞もラテン系の最優秀賞を3回獲得していましたが、2026年の今年は、レディ・ガガ、テイラー・スイフトなどを排して、前述のアルバムで最高の賞である最優秀アルバム賞を受賞。スペイン語のみの作品では史上初の快挙です

そしてアメリカ最大のスポーツ・イベント、アメリカンフットボールの決勝戦、NFLチャンピオンシップのハーフタイム・ショーに出演し、その13分のパフォーマンスで視聴者を圧倒し、絶賛の嵐となりました。それはエンタテイメントとしてたっぷり楽しめると同時に、こんな理由がありました。

  1. 単なるエンタメではなく、「ヘイトより強いのは愛」「南北アメリカ大陸は一つ」「あなた自身を信じる事が大事」と、ポジティブなメッセージ性があって、それが音楽・文化・社会問題などを統合した表現になっていたこと。 

ヘイトより強いものは愛

2.演出・映像・衣装の完成度の高さ :大物スターのサプライズ・ゲストや音楽のステージの枠を超えたビジュアル体験としての楽しさもたっぷり。

レディ・ガガも登場

3.観客との双方向的な感情共有 :実際の結婚式を組み入れるなど一般の観客が参加する部分や 一瞬で共感・感動を生むような強い内容が詰まっていた。

南北アメリカ大陸の旗がたなびくエンディング

13分間にそんな前例のない、いろいろな事が詰まったショウだったのが多くの支持や賞賛を集めた理由でした。

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2.【少し長め】知ってる人用(2000字)


『NFL バッド・バニーハーフタイムショー』

◆NFLの歴史の中でも出色の出来

アメリカン・フットボールは野球、バスケットボール、ホッケーと並ぶアメリカ人の大好きな、大切にするスポーツですが、アメフト/NFLは飛びぬけて収益規模が大きな、そして国内のファンが主のスポーツです。

そんな「アメリカ合衆国」のファンで出来上がっているNFLの観客を前にして、バッド・バニーがスペイン語でパフォーマンスを行う事が昨年発表になった時は、合衆国の保守派や、トランプ系/MAGA系からは強い反発が起きました。

FOXニュース
ニューズウイーク

ところがNFLは意に介さず進めます。NFLは2019 年にジェイ・Z(ラッパー、プロデューサー)とパートナーシップを組んでから選んでからハーフタイムショウの人選がとんがって来ました。

2020年のシャキーラとジェニファー・ロペス、2021年のザ・ウィークエンド、2022年はDr.ドレーとスヌープ・ドッグ、エミネム、メアリーJ・ブライジ、ケンドリック・ラマー、2023年はリアーナ、2024年アッシャー、そして昨年はケンドリック・ラマーと、アフロアメリカン中心の選択、そして反トランプも多い人選です。

2025 ケンドリック・ラマー

今年はスペイン語のみのパフォーマンスを宣言したバッド・バニー。
そして蓋を開けてみれば、歴代に例のない素晴らしいステージ

今までは「ステージ」という形の上でのショウの制作や多様なダンスが見せ場のという形でした。しかし今回はステージというより、一種シアターや映画を見るようなイメージ。様々なコンセプトの異なるシーンを、バッド・バニーが動き回り、ハンドカメラを始めとして、様々な撮影機器がダイナミックな動きで彼を追うという、映像的にも優れたもの。そしてそれを貫く、大きな見せ場やメッセージがありました。5つに分けてまとめてみます。

① パフォーマンスの多層的な演出:レゲトンやトラップ、サルサやプエルトリコ固有の音楽など、多彩でエネルギーある音楽を瞬時に切替えるストーリーある構成がエキサイティングでした。

各シーンの音楽、服装、背景、ダンスを連動させて瞬時に切り替えていく

そしてそれを支える、ただのステージを越えた会場づくり、カメラワークの巧みさ、ドローン/ハンドカメラ/望遠など多数の機材で躍動感ある映像をつくり、13分のナマ放送というちょっとのずれがダレに繋がる場で、瞬時に切り替える技術と綿密な進行案、アメフト・フィールドにダメージを与えないため、瞬時に移動できる人間サトウキビ(下記)のアイディアなどなど、相当作り込まれています。

設置から撤退までも綿密に計画され、400人のクルーを使ったパフォーマンスが実現しています。

② 文化的なアイデンティティの表現:スペイン語が主体なのに、英語圏の観客にもノリや映像で直感的に伝わる演出。

プレーナのシンプルなリズムに分かりやすいメロディ。南北アメリカの国旗というシンボリックな事を見せるだけで、扱っている事の意図が分かります。

またルーツであるプエルトリコの様々な文化や生活、音楽から社会問題までを表現しました。それは彼のプエルトリコへの愛であると同時に、ラテンアメリカの文化と存在を米国のオーディエンスに対し可視化し、ラテンアメリカの人たちは自己の存在の誇りを確認する表現でした。

左上から右下へ、プエルトリコのかき氷、ポピュラーなドミノ・ゲーム、プエルトリコの伝統の楽器「クアトロ」、NYや米国のラテン人地域の典型的な食料品店

③ インタラクティブでサプライズ要素が豊富:サプライズの大物ゲスト、本物の結婚しを織り込むなど、観客参加型のわかりやすい様々なエピソードを織り込んだエンタテイメント(そして各々に意味が)として楽しい。

左上から右下へ、レディ・ガガが突然登場、リッキー・マーチン、本物の結婚式を挙行、少年にグラミー賞のトロフィーを手渡し。

身体を動かして参加したくなる音楽とダンスで魅せたり、場面の様々な設定ごとに衣装や背景の変化を設定して飽きさせないアイディアが溢れました。

④様々な形でのポジティブなメッセージ:子供からシニア、男性・女性、結婚など人生と愛を感じさせるエピソード、そして「ヘイトより強いのは愛」「南北アメリカ大陸は一つ」「あなた自身を信じて」など、今の分断、差別などが蔓延する社会に力強いメッセージを自然な形で提示しました

左上から右下へ、「あなた自身を信じて」「ヘイトより強いのは愛」「我々は一つのアメリカ」「さあ、いこう」

⑤SNS・メディアでの拡散性:映像的に映える構図や衣装、象徴的演出がSNS映えで若い世代への文化的リーチが非常に強く、様々なポイントへの意見が拡散。重層的、多様的なショウの意図が、バッド・バニーが説明せずとも、見た人の声を通して拡散しました。


こんな様々な面白さと、シンボリックで多様な解釈、個人の色々な経験と重ね合わしたくなる、本質的な表現などが、怒涛の13分にきっちり織り込まれたショウ。トラブルもなく完成させた、参加者全員に拍手を送りたくなりました。


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3.【細かすぎる】細部までしゃぶりつくしたい人用(18,000字くらい)

長いので別ページにしました。以下をクリックしてどうぞ!

スペイン語のみのパフォーマンスを意識させないくらい、様々なものが詰まっていた13分ですが、ポジティブなメッセージが浮ついたりしないのは、バッド・バニー自身の等身大に生きる思いからの表現のためだと思います。

スペイン語で表現するのが自然でベストだからそれを続ける、振られて落ち込んでも強がらず、泣きが入る曲を作る、社会問題がおかしいと思えばそう表現する、自分が自分である事が大事だから、人が自分でいる事をレスペクトする、自分の音楽は自分だけで作ったのではなく、自分が聴いてきた色々なもの、色々な先人が道を開いてくれた為だから強く感謝する…

そんな考えが音や今回のパフォーマンスに表れ、言葉にもなったのだと思います。2026年に日本に来てくれるのかどうか分かりませんが、引き続き、活躍を楽しみにしたいと思います。
(追記)2/18発表で、3/7のSpotifyのイベントで来日と発表に。但し一般公演ではなく、Spotify Top Listenerの為のClosedのライブとのこと。ちょっと残念。

【追伸】ラテン音楽に興味を持たれた方へ

もしこの記事を読まれて、ラテン音楽や、バッド・バニーの周辺にある音楽に興味を持たれた方がいたら、以下の本を!(ちょっと宣伝です)

『ゼロから分かる ラテン音楽入門』
監修:伊藤嘉章・岡本郁生 (世界文化社)

昨年10月に出たばかりのラテン音楽の入門書です。ラテン音楽の起源から、キューバ音楽、ラテンアメリカ各国の音楽、サルサ、ラテン・ロック、バッド・バニーの事やレゲトン、トラップなど今の音、ラテンとジャズ、ラテンとクラシックなど多くの切口でラテン音楽が理解できる本です。
書店で見かけたら手に取ってご覧ください。ネット書店でも購入可能です。

以上、読んで頂きありがとうございました!(伊藤 嘉章)

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