【創作小説】峠の庵 恩返しー番外編⑤ー
前回、こちら⬇
番外編、最初からはこちら⬇
本編、こちらから⬇
きゅー、きゅー、……きゅー、きゅー、……
たぬき母子の声が響きます。
ここは、村はずれのあばら小屋。
たぬき母子は、〝拉致〟されて、あばら小屋に居るのでした。
きゅー、きゅー、……きゅー、きゅー、……
(ねぇ、ねぇ、そこの暇そうな「見張りの人」、キッツイこの縄をほどいておくんなまし)。
きゅー、きゅー、……きゅー、きゅー、……
哀しいかな、「見張りの人」には、たぬきの言葉は分かりません。変身しないと、人間の言葉は使えないのです。
たぬきのお母さんは、心のなかで泣きました。
(あゝ、これでは、まつりへ行けないわ)
いえいえ、やばいですよ? これは、たぬき鍋のパターンでは?
子狸は、母親を見上げ涙目です。
(かあさん、ボクたち、おまつりに行けないの? )
だから、たぬき鍋のパターンでは……?
そして、村では輪になって、村の踊りが始まりました。
つんつくツクツク……つんつくツクツク……
このリズムが、村の外れのあばら小屋にも、聴こえてきました。
つんつくツクツク……つんつくツクツク……
段々、あばら小屋の、〝拉致はんにん〟たちも、つま先でリズムを取り始めます。
つんつくツクツク……つんつくツクツク……
たぬき母子は、これを見て、なんだか楽しくなってきました。〝拉致〟されてる身にもかかわらず。
つんつくツンツク……
やばい。これは、踊り出すパターン……
つんつくツンツク……
気づいたら、小屋のなかで、たぬき母子と、〝拉致〟はんにん達が、揃ってリズムをとっていました。
これは、愉しい。
たぬきは、縛られてない、尻尾でリズムをとっています。
つんつくツクツク……つんつくツクツク……
その頃、村の人たちは、村の広場で集まって、神輿を担いて騒いでいました。
やれ、えっさか、ほっさい、ほい、さっさ。
みんなで、賑わい、騒いでいましたが、なにか心がかりですみません。
たぬき母子が、気になります。
祭りを楽しみにしていたというのに、強行的に拉致して、来させないというのも、横暴です。たぬきたちが、花火でびっくりして、村から逃げ出さないためとは言え、ちょっとやり方が、まずくはないか?
その時、村の男の子が、鬼ごっこをしていた、村のガキ大将に風車を取り上げられ、泣き出しました。村の他のお母さんが、仲裁に入ります。
村の大人は、見守っています。
お母さん、
「どうしたの?なぜ、風車を取り上げるの?」
「だって、もう、風車が売り切れちゃったんだもん。俺も遊びたいんさ」
「でも、黙って取り上げるのは、よくないでしょう?」
「だって、どうすればいいの?」
「みんなで、話し合えばいいでしょう?話し合いもせずに、取り上げてしまうのは、勝手すぎるよ?悲しいよ?」
「話し合うの?」
「そう、話し合って、『使わせて。いい?』って聞けば、風車で遊ばせてくれたかもよ?」
「そう?」
ガキ大将は、風車の持ち主の男の子に向き直って、照れくさそうに言いました。
「ねぇ、風車を使わせてくれる?」
風車の持ち主の男の子は、もじもじして言いました。
「いいよ?」
男の子たちは、仲良く、颯爽と、風車を回して去って行きました。
村びとたちは、顔を見合わせました。
そして、その中の一人が、言いました。
「たぬきたちに、直談判に行こう。『俺らは、たぬきたちに逃げられたくない。だから、花火の時だけ、耳栓しててくれないか?後の時間は、自由に楽しんでくれて構わない。俺たちと一緒に』と」
村中の人が、頷き合いました。
つづく
©2024.9.3.山田えみこ
トップ画像は、メイプル楓さんの
「みんなのフォトギャラリー」より。
いつも、お世話になっております☺️
続きは、こちら⬇︎
