『私の話』第7話 言えなかった気持ち
母もまだ20代。
恋をして、遊びたくて当然の年齢だったのだと思います。
子どもながらに、
母が何人かの男性とお付き合いしていることを、なんとなく感じ取っていました。
一度、母と再婚相手の人と三人で旅行へ行ったことがあります。
どう接すればいいかわからず、ただ「気に入られたいと」思っていました。
その人からもらった、キティちゃんの文房具セットのことは、今でも覚えています。
小学6年の秋。
母から、突然こう訊かれました。
「結婚しようと思うけど、いいかな?」
最初は、「一緒に暮らせるのだ」と思いました。
でも話の流れで、そうではないことに気づきました。
私は精一杯の気持ちで、言いました。
「ママが幸せになるなら、いいよ」
本当は――
寂しかったのだと思います。
でも、それを言ってしまったら、
母を困らせてしまう気がして、言えませんでした。
反対なんて、できませんでした。
母は幸せをつかもうとしていたし、
お腹の中には新しい命があったからです。
⸻
母は再婚後、しばらく別の家に暮らしていましたが、頻繁に実家に来ていました。
そして数年後、「家賃がもったいない」という理由で実家に戻り、同居が始まりました。
12歳年下の弟は、とても可愛くて、
一緒に過ごす時間は自然と増えていきました。
けれど戸籍上、私は祖父母の養女。
つまり、
弟は 「弟」ではなく「甥」、
母は 「母」ではなく「姉」という立場でした。
⸻
中学から高校にかけて、私は自由に過ごしていました。
ちょうどバブル時代。
私の娘は信じられないほど真面目ですが、
私は――少し、羽目を外していたと思います。
高校卒業後はいくつかの仕事を経験し、恋もしました。
建設会社で事務の仕事をしていた頃、
会計事務所の年配の女性に可愛がっていただき、お寿司屋さんに連れていってもらうこともありました。
その女性は、会社の社長のお姉さんでした。
社長は私より23歳年上で、離婚歴があり独身。
母より2歳年上で、6人兄弟の下から2番目。
お姉さんは一番上で、私の祖父母と同い年でした。
そんな年齢関係でしたが、縁があって結婚しました。
それが私の、最初の結婚です。

このあと、思いもよらない出来事が起こります。
続きは第8話へ
▶ 第8話「自由と孤独のあいだで」
