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『私の話』第8話 自由と孤独のあいだで

最初の結婚は、
幸せだったとは言えなかったかもしれません。

主人は会社の経営者で、
いつも自分の思いどおりにしたいタイプの人でした。

優しいところもありましたが、
私はいつも「はい、はい」と言って従うばかりでした。

結婚して一年が過ぎたころ、
子どもができたら何かが変わるかもしれない。

そう思い、主人に頼んで大学病院の不妊外来を受診しました。

けれど検査の結果は、
「現在の医療でも妊娠は難しい」と告げられました。

その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になりました。

結婚すれば、自然に子どもができる。 
どこかで、そう信じていたのです。

これから先、ずっと二人のままなのかと思うと、涙が止まりませんでした。

さらに主人の性的な癖に苦しむこともあり、
少しずつ、心も体も限界に近づいていきました。

実家に相談すると、
「すぐ離婚するより、もう一度話し合ってみたら」と言われました。

悩んだ末、私は一度距離を置く決心をしました。

友人が住むマンションに空きがあり、
1LDKの部屋を借りて別居することに。

主人もしばらく時間を置くことに同意し、家賃や生活費を出してくれました。
ただし「働かないこと」が条件でした。

きっと、若い妻とすぐ別れたと思われることを、避けたかったのだと思います。

横浜での生活は——夢のようでした。

友人と出かけたり、自由な時間を楽しんで、
久しぶりに「自分を取り戻せた」感じがしました。

けれど、その幸せも長くは続きませんでした。

友人が家を建てて引っ越すことになり、
私は猫二匹との静かな生活に戻りました。

やがて実家の説得もあり、
横浜を離れることにしました。

戻ってからの結婚生活は、
穏やかなときもあれば、主人の機嫌ひとつで突然実家に帰されることもありました。

「戻っていい」と言われるまで家に帰れない日々。
それでも、結婚生活は続きました。

主人は海外旅行が好きで、グアムには20回近く、ハワイにも10回ほど行きました。
他にもいくつもの国を旅しました。

けれど、結婚10年目に。
主人が末期のがんであることがわかったのです。

このあと、思いもよらない出来事が起こります。

続きは第9話へ  
▶ 第9話「それでも、そばにいた」

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