好きなことを仕事にすると、好きではなくなることがある理由
「好きなことを仕事にできたら幸せだろうな」
そう考えたことはないでしょうか。
旅行が好きだから、旅行に関わる仕事がしたい。
人と話すことが好きだから、人を支える仕事がしたい。
写真が好きだから、カメラを仕事にしたい。
料理が好きだから、飲食に関わりたい。
好きなことを仕事にする。
それは、とても魅力的な考え方です。
一日の多くを仕事に使うのだから、どうせなら好きなことをして働きたい。
そう思うのは自然なことだと思います。
一方で、
「好きなことを仕事にしたら、好きではなくなってしまった」
「やってみたら、想像していた仕事と違った」
「好きだけれど、生活できるほど収入にならなかった」
ということもあります。
だから、好きなことを仕事にしてはいけないという話ではありません。
大切なのは、
「好き」という気持ちだけで大きな決断をせず、自分が何を好きなのか、その仕事の現実まで理解することです。
今回は、好きなことを仕事にする前に考えておきたいことについて整理します。
「好きなことを仕事にする」は、本当に幸せなのか
好きなことを仕事にすると、
毎日楽しい。
やる気が続く。
仕事が苦にならない。
と思うかもしれません。
確かに、興味のある分野で働けることには大きな魅力があります。
ただ、「好き」という感情と「仕事として続けられる」ということは少し違います。
趣味なら、
やりたい日にやる。
疲れたらやめる。
気分が乗らなければ休む。
結果を求められない。
ということができます。
仕事になると、
期限があります。
顧客がいます。
品質を求められます。
お金が発生します。
気分が乗らなくても対応する必要があることがあります。
つまり、
好きなことそのものと、好きなことを仕事として提供することは別物なのです。
まず考えたい|「何が好きなのか」を細かくする
例えば、
「旅行が好き」
という人がいたとします。
でも、旅行の何が好きなのでしょうか。
知らない場所へ行くこと。
計画を立てること。
現地の人と話すこと。
異文化に触れること。
ホテルを探すこと。
写真を撮ること。
誰かにおすすめすること。
一人で自由に過ごすこと。
同じ「旅行が好き」でも、好きな要素はまったく違います。
映画が好きでも、
作品を見ることが好きなのか。
映画について文章を書くことが好きなのか。
映像をつくることが好きなのか。
人と感想を語ることが好きなのか。
によって、考えられる仕事は変わります。
だから、
「好きなことは何か」
だけではなく、
「その中の何をしている瞬間が好きなのか」
まで細かく考えることが大切です。
好きなことと、得意なことは違う
好きだからといって、それが得意とは限りません。
反対に、
得意だけれど、それほど好きではない。
ということもあります。
例えば、
人と話すのは好き。
でも、人の話を長時間聞くのは疲れる。
文章を書くのは好き。
でも、決められたテーマで締切までに書くのは苦手。
料理が好き。
でも、大量に同じものを作ることは好きではない。
ということがあります。
仕事では、
好き。
だけでなく、
どの程度できるのか。
人から求められるレベルで提供できるか。
続けても強く消耗しないか。
という視点も必要です。
好きと得意が完全に一致していなくても構いません。
ただ、自分がどこで価値を出せるかを知ることは大切です。
好きなことと「需要」は違う
仕事には、相手がいます。
自分がどれだけ好きでも、それだけで仕事になるとは限りません。
誰が必要としているのか。
何に困っているのか。
何にお金を払うのか。
を考える必要があります。
例えば、
英語が好き。
なら、
英語を教える。
翻訳する。
海外企業とのやり取りを支援する。
英語学習を伴走する。
海外向けコンテンツをつくる。
など、価値の届け方はいくつもあります。
大切なのは、
「私はこれが好きです」
で終わることではなく、
「この好きや経験を使って、誰の何に役立てるだろう」
と考えることです。
好きなことと、相手が必要としていることが重なる場所に、仕事の可能性があります。
「好き」を仕事にすると、嫌いになることもある
少し怖い話に聞こえるかもしれません。
でも、好きなことを仕事にすると、以前とは感じ方が変わることがあります。
趣味だったときは純粋に楽しめた。
仕事にしたら、
売上。
顧客の評価。
納期。
競争。
数字。
を考えるようになった。
すると、
「以前ほど楽しくなくなった」
ということがあります。
これは、その人が間違っていたからではありません。
好きなことに、「仕事としての責任」が加わったからです。
だから、
好きなものをすべて仕事にする必要はありません。
好きだからこそ、仕事にしないで大切にする
という選択もあります。
「好きなことを仕事にしなければ」というプレッシャー
今は、
好きなことで生きる。
やりたいことを仕事にする。
自分らしく働く。
という言葉を目にする機会が増えています。
それ自体は素敵な考え方です。
一方で、
好きな仕事がない自分はダメなのでは。
会社員を続けている自分は妥協しているのでは。
本当にやりたいことを見つけなければ。
というプレッシャーにつながることもあります。
でも、仕事に何を求めるかは人それぞれです。
安定した収入が欲しい。
家族との時間を大切にしたい。
仕事より趣味を楽しみたい。
仲間と働きたい。
専門性を活かしたい。
好きなことは仕事以外で楽しみたい。
それも立派な選択です。
好きなことを仕事にすることが、人生の正解ではありません。
「好き」と「やりがい」も違う
仕事への満足感は、「好き」だけから生まれるわけではありません。
最初は特別好きではなかった仕事でも、
できることが増えた。
人から頼られるようになった。
顧客から感謝された。
成果が出た。
自分の強みを活かせるようになった。
ことで、少しずつやりがいを感じることがあります。
つまり、
好きだから続く
だけではなく、
続ける中で好きになる
こともあります。
最初から運命の仕事を探す必要はないのです。
好きなことを仕事にする前に考えたい7つのこと
1.「好き」のどの部分が好きなのか
好きな対象ではなく、行動に分解します。
話す。
聴く。
つくる。
教える。
整理する。
旅する。
調べる。
伝える。
人とつなぐ。
例えば、「人が好き」では広すぎます。
一対一で深く話すのが好きなのか。
大勢で盛り上がるのが好きなのか。
誰かの成長を見るのが好きなのか。
ここまで分解すると、仕事との接点が見えやすくなります。
2.仕事として毎週続けても好きだろうか
月に一度なら楽しいことでも、毎日行うと違うことがあります。
例えば、
毎週10時間。
毎週20時間。
仕事として一年続けたとしても、やりたいでしょうか。
顧客の要望へ合わせる。
締切を守る。
同じ作業を繰り返す。
といった要素も含めて考えてみます。
3.誰がお金を払ってくれるのか
仕事になるためには、必要としている人がいることが重要です。
誰が顧客になるのか。
どんな悩みを持っているのか。
今、その人は何にお金を払っているのか。
自分なら何を提供できるのか。
ここが曖昧なまま、
「好きだから仕事にしよう」
だけで進むと、集客で苦しくなることがあります。
4.生活できる金額になるのか
好きなことを仕事にするとき、収入を無視することはできません。
一件いくらなのか。
月に何件必要なのか。
その件数を現実的に提供できるのか。
経費はいくらか。
税金や社会保険などを踏まえると、どの程度必要なのか。
を考えます。
ただし、最初から好きな仕事だけで生活費のすべてを稼ぐ必要はありません。
本業。
業務委託。
副業。
好きな仕事。
複数を組み合わせる方法もあります。
5.好きな仕事以外の業務も受け入れられるか
独立して好きなことを仕事にする場合、
提供する仕事だけでは終わりません。
営業。
集客。
SNS。
顧客対応。
契約。
経理。
請求。
スケジュール管理。
なども必要になります。
例えばコーチングが好きでも、顧客がいなければセッションは生まれません。
料理が好きでも、飲食店なら仕入れや清掃、経営もあります。
好きな仕事をするために必要な「周辺業務」も含めて考えることが重要です。
6.好きではなくなったら、どうするか
好きなことは変わることがあります。
5年前に夢中だったものへ、今はそれほど興味がない。
それは自然なことです。
だから、
「これを一生仕事にする」
と決める必要はありません。
興味が変わったら、方向を変える。
仕事量を減らす。
趣味へ戻す。
別の経験と組み合わせる。
キャリアは途中で更新できます。
7.会社を辞めなくても試せないか
好きなことを仕事にしたいと思ったとき、いきなり退職する必要はありません。
副業で一件受ける。
知人に提供する。
週末だけ活動する。
イベントに参加する。
発信して反応を見る。
実際にお金をいただいてみる。
小さく試せば、
本当に好きなのか。
仕事として続けたいのか。
需要があるのか。
どこで疲れるのか。
が分かります。
考えるだけではなく、現実で確認することが大切です。
「好き・得意・求められる」の重なりを見る
仕事として考えるなら、三つの視点を持ってみます。
好きなこと
やっていると心が動く。もっとやりたいと思う。
得意なこと
自然にできる。人から評価される。成果につながりやすい。
求められること
誰かが困っている。お金を払ってでも解決したい。
この三つが重なる場所は、仕事として続けやすい可能性があります。
もちろん、最初から完全に重なる必要はありません。
好きだけれど、まだ得意ではない。
なら学べばいい。
得意だけれど、需要が分からない。
なら小さく市場で試せばいい。
需要はあるけれど、好きではない。
なら収入を支える仕事として使う方法もあります。
一つの仕事ですべてを満たそうとしなくてもよいのです。
「好きなこと」より「大切にしたいこと」から考える
好きなことが分からないときは、
何を大切にしたいのか。
から考えてみる方法があります。
自由。
成長。
人とのつながり。
健康。
家族。
海外。
安心。
挑戦。
誰かへの貢献。
好きな職業は分からなくても、
どんな状態で働きたいか。
は見つけられることがあります。
例えば、
海外が好き。
ではなく、
異なる文化に触れている状態が好き。
人が好き。
ではなく、
一人ひとりと深く関われる時間を増やしたい。
というように考えます。
すると、一つの職業名に縛られず、選択肢を広げることができます。
好きなことは「100%仕事」にしなくてもいい
好きなことを仕事にするか、趣味にするか。
二択で考える必要はありません。
本業80%、好きな仕事20%。
会社員+週末だけ活動。
週3日は収入を支える仕事、週2日は自分の事業。
という働き方もあります。
好きなことを少しだけ仕事にする。
それによって、
楽しさを残しながら、収入にもつなげる
という方法もあります。
自分に合う割合を探せばいいのです。
収入を支える仕事と、育てたい仕事を分けてもいい
好きなことを仕事にするとき、
「これだけで生活できなければ意味がない」
と思う必要はありません。
例えば、
収入を安定させる仕事。
今後育てたい仕事。
学びにつながる仕事。
心から意味を感じる活動。
を組み合わせることもできます。
最初から一つの仕事ですべてを満たそうとすると、理想の条件が高くなりすぎます。
人生全体で見て、
収入。
やりがい。
成長。
自由。
健康。
をどう組み合わせるか。
というキャリア設計もあります。
「仕事にならなかった」も失敗ではない
興味のあることを試した。
でも、
意外と楽しくなかった。
思った以上に疲れた。
顧客から求められなかった。
収入にならなかった。
そんなこともあります。
でも、それは失敗でしょうか。
自分は何が好きなのか。
何を仕事にしたくないのか。
どんな働き方が合うのか。
を知ることができたなら、それも重要な経験です。
頭の中で何年も考えているより、一度試して「違う」と分かる方が次へ進めることがあります。
私自身も、「好きなこと」と「仕事」を分けて考えるようになりました
私自身も、これからの働き方を考える中で、
人と深く話すこと。
一人ひとりの意思決定や変化に関わること。
海外と関わること。
健康やウェルビーイングについて考えること。
に強い関心があります。
その中で、コーチングを学び、実際に人へ提供するようになりました。
人との対話は好きです。
クライアントが自分の中にある答えに気づいたり、次の一歩を決めたりする時間にも大きな意味を感じています。
一方で、コーチングを仕事にすると、
セッションだけしていればよいわけではありません。
自分を知ってもらう。
サービスを説明する。
申し込みにつなげる。
価格を決める。
継続できる仕組みをつくる。
そうした部分にも向き合う必要があります。
また、海外が好きだからといって、海外に関わるすべての仕事が自分に合うわけでもありません。
何に惹かれているのかをさらに考える必要があります。
私自身も、
「好きだから、これ一本で生きる」
と決めるより、
好きなこと。
これまで培ってきた経験。
現実的に収入につながること。
将来育てたいこと。
を組み合わせながら働き方をつくっています。
好きなことを仕事にするとは、勢いで飛び込むことではなく、
自分が大切にしたいものと、現実の仕事を少しずつつなげていくこと
なのだと思います。
好きなことを仕事にする前の「90日実験」
もし仕事にしてみたいことがあるなら、最初から人生を変えなくても構いません。
90日だけ試してみます。
最初の30日|知る
その仕事をしている人へ話を聞く。
仕事内容を調べる。
必要なスキルを確認する。
顧客が誰なのか考える。
次の30日|提供する
一人へ提供する。
副業案件へ応募する。
小さなサービスを出す。
実際にお金をいただいてみる。
最後の30日|振り返る
楽しかったか。
仕事として続けたいか。
何に疲れたか。
何を評価されたか。
どの程度の収入になりそうか。
もっと学びたいと思うか。
を確認します。
それから、
続ける。
別の形にする。
趣味に戻す。
違うことを試す。
と決めても遅くありません。
好きなことを仕事にする前に使いたい5つの問い
1.私は、その「何」が好きなのだろう
対象ではなく、好きな行動や状態まで深掘りします。
2.誰かに求められなくても続けたいだろうか
純粋な興味なのか、評価されることが好きなのかを確認します。
3.逆に、お金をいただく責任が加わっても続けたいだろうか
仕事としての側面を考えます。
4.会社を辞めずに試す方法はないだろうか
大きなリスクを取る前に、現実で確認します。
5.仕事にならなかったとしても、試したいと思えるだろうか
答えがYESなら、それだけでも経験する価値があるかもしれません。
まとめ|「好き」を守りながら、仕事にできる形を探す
好きなことを仕事にする。
それは、とても魅力的な選択肢です。
でも、
好きなら必ず仕事に向いている。
好きなら自然に売れる。
好きなら毎日楽しい。
とは限りません。
だから、
何が好きなのかを細かくする。
得意なのかを確認する。
誰に求められるのかを見る。
仕事として続けられるか試す。
必要な収入を考える。
周辺業務も理解する。
いきなり大きく変えず、小さく経験する。
そのプロセスが大切です。
そして、試した結果、
仕事にする。
一部だけ仕事にする。
趣味のまま大切にする。
どれを選んでも構いません。
好きなことは、必ずしもお金に変えなければ価値がないものではありません。
一方で、自分の好きなことが誰かの役に立ち、仕事として育っていく可能性もあります。
だからこそ、
「好きなことを仕事にするべきか」
ではなく、
「この好きなことを、自分の人生の中でどんな形で大切にしたいのか」
と考えてみてください。
仕事にすることは、その選択肢の一つです。
自分の「好き」を消耗させるのではなく、自分に合う距離感で育てていく。
それが、長く納得して働くために大切なのだと思います。
もし今、
・好きなことを仕事にしたいと考えている
・やりたい仕事へ転職するか迷っている
・趣味を副業にするべきか悩んでいる
・好きなことだけで生活できるか不安
・独立したいが、仕事として続けられるか分からない
・40代から新しい分野へ挑戦したい
・好き、得意、収入のどれを優先すればいいか分からない
・自分らしい働き方を一度整理したい
そんな状態にあるなら、いきなり「これを仕事にする」と決めなくても大丈夫です。
まずは、何が好きなのか、その中でもどんな瞬間に心が動くのかを言葉にしてみてください。
そして、小さく提供してみる。
実際に仕事として経験してみる。
そこで感じた楽しさ、違和感、相手からの反応を材料にして、次の選択を考える。
頭の中だけでは見えなかった、自分に合う「好きと仕事の距離」が少しずつ見えてくることがあります。
ご案内
私は現在、海外・キャリア・仕事で新たな一歩を踏み出したい方の意思決定を整理する対話の時間を提供しています。
無理に何かを勧めることはありません。
本音を話せる安心安全な場で、思考を整理し、自分で納得して決められる状態をつくることを大切にしています。
ご興味があれば、下のフォームから気軽にメッセージをください。
長島慶|意思決定コーチ
(Global Life Alignment Coach)
Empower Yourself
― 自分の本来の力を思い出し、自分で前に進む ―
