電力制度ニュース|夏本番で東京のインバラが200円に達した──C・D値の発動実態と2026年10月改正をデータで見る
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2026年7月22日、16時30分のコマで東京エリアのインバランス料金が200円/kWhに達しました(速報値)。現行のC値(補正インバランス料金の上限)ちょうどの水準です。折しも2026年10月には、このC値が200→300円に引き上げられます。ではC値・D値は、そもそもどれくらい発動してきたのか──公開データからその実態を整理します。 今回の改正がどの局面に効き、事業者が何に備えるべきかまで見えてきます。
前回のおさらい:計画値同時同量とインバランス
計画値同時同量制度のもと、事業者は30分コマごとに需要・発電計画を立て、ゲートクローズ(実需給の1時間前)までにスポット・時間前市場で需給を合わせます。それでも残るズレは、一般送配電事業者が調整力で埋め、事後にインバランス料金で精算します。インバランスは、同時同量を達成できなかった分の事後精算です。
ひっ迫時には、この料金に補正(C値・D値)が上乗せされます。2026年10月の改正は、C値(上限。200→300円/kWh)とD値(補正の立ち上がり。45→50円/kWh)を引き上げ、累積価格閾値制度(高値累積時に上限を一時的に100円/kWhへ引き下げ)を新設します(算定方法は前回記事を参照)。
では、補正は実際どれくらい効いているのか。3つの角度で見てみました。
分析①:C値・D値はどれくらい発動しているか
まず、補正(C値・D値)がどれくらい発動しているか。月別の1日あたりD値発動コマ数(棒)と、全コマに対する発生率(折れ線・右軸)を見ます。
【図①】C値・D値の月別発動

の算定根拠データより当社集計
D値発動は年々増え、年度平均で1日あたりFY2022の0.51コマからFY2025は1.76コマ、足元のFY2026(4月〜7月23日・速報値含む)は2.72コマへと増えています。特に2026年7月は日平均5コマ超と、集計期間で最も高い水準です。一方、補正がC値(200円)に達したのは約4年間で計4回だけ(FY2022に1回、FY2025に2回、そして冒頭の2026年7月22日)です。
分析②:時間帯ごとの「スポット−インバラ」の値差
次に、スポット価格と不足インバランス料金の値差(スポット−インバランス)を時間帯別に見ます。プラスなら「インバラの方が安い(逆転)」、マイナスなら「スポットの方が安い」。これを、CD発動時(ひっ迫)と非発動時(平時)に分けて比べました。なお全コマでならすと、逆転は約54.5%(半分以上のコマ)で起きています。
【図②】時間帯別の値差(スポット−インバラ・中央値、発動/非発動)

まず平時(非発動)から。逆転は、需要が立ち上がる朝(8時前後)と夕方(17〜19時)に目立ち、未明はスポットの方が安い形です。需要ピークでスポットが跳ねる時間ほど、インバランスを上回って逆転しやすい、ということです。
他方、ひっ迫(CD発動)時は、補正でインバランスが上がるはずなのに、日中から夜の大半の時間帯で値差がプラス(=インバラの方が安い=逆転)のままです。補正が乗っても、逆転はほとんど解消されていません。
しかも夕方は、平時よりひっ迫時の方が値差が開きます(18時台で発動+2.9、平時+2.2円/kWh)。補正のD値(45円)が、夕方の高いスポットを超えるほどではないためです。逆転が反転する(インバラがスポットを上回る)のは、補正がC値水準に張り付くごく一部の局面だけです。
つまり、ひっ迫して補正が乗っても、需要ピークの逆転は消えていません。今回の改正でD値を引き上げることで逆転現象がどう変わるかがポイントです。
分析③:値差は年々どう動いているか
同じ値差を年度別に、CD発動時/非発動時で比較します。
【図③】年度別の値差(スポット−インバラ・中央値、発動/非発動)

平時(非発動)は、燃料価格が高かったFY2022こそ値差がマイナス(スポットの方が安い)でしたが、FY2023以降はプラス(逆転)に転じ、年々広がっています。一方、CD発動時は年によってばらつきます。FY2022はスポットが極端に高くプラスに振れ、FY2023はマイナス、近年は小幅プラス、という具合です。発動コマは平時に比べて桁違いに少なく、サンプル数の小ささも振れの一因です。
分析からの示唆
3つの分析を踏まえると、2026年10月の改正について、次のことが言えそうです。
第一に、改正で変化するのは「ひっ迫時の不足インバランス料金」です。
分析②のとおり、ひっ迫時でも夕方は数円の逆転が残っていました。D値引き上げ(45→50円)は、ひっ迫時の不足インバランスを底上げする方向の調整で、本稿の値差(夕方で数円)と同じオーダーの引き上げのため、ひっ迫時の逆転が是正される効果が期待できます(どの程度かは予備率次第)。
C値引き上げ(200→300円)は予備率が極端に低い局面の天井上げで、効くのは分析①のとおり年数回のみ。当面の主役はD値、いざという時の保険がC値です。
第二に、その効き所がどれだけ広がるかは、ひっ迫の頻度しだいです。分析①のとおり、D値発動は年々増加傾向といえます。火力退出などで予備率が厳しい局面が増えれば、補正の出番も増え、改正の効果が及ぶ範囲が広がります。
第三に、平時の逆転は改正の対象外として残ります。分析③のとおり、平時の逆転はむしろ年々広がっています。ここは引き続き、計画値同時同量義務の中で、事業者が需要予測と同時同量の精度を上げ、予備率低下などひっ迫の兆しを早めにつかんで時間前・スポットで手当てすること、が重要です。
制度の変更点を「何が変わるか」で押さえたうえで、「実際の発動はどうなっているか」「自社の値差はどう動くか」までデータで見ておくと、改正後の価格の動きを一段深く読めます。次回以降は、現場で実際にインバランスを抑えるための実務(需要予測・時間前運用・事故の防ぎ方)に入っていきます。
最後に

本稿の実務メッセージは、「ひっ迫時に予測誤差の影響を大きく被らないよう、需要予測・同時同量管理・時間前運用の精度を上げること」に行き着きます。
enechainがこの秋に正式リリースするSaaS型の需給管理システム eBalance(第1回で紹介、トライアル提供中)は、まさにこの領域を支えるサービスです。需要予測・供給力・約定データ・計画提出状況を1画面に集約し、計画値の不整合を即時検知することで、取り込み漏れによるインバランス事故を防ぎます。JEPX入札ロジックを事前設定して結果を検証でき、時間前市場でのポジション調整も支援します。2026年10月の制度改正と同時期のJEPXシステム更改にも、リリース時点で対応済みです。
(eBalanceサービスサイト:https://enechain.co.jp/services/ebalance)
その判断のもとになる市場・需給の状況を読むなら、データプラットフォーム eCompass も役立ちます。スポット価格から先物カーブ、需給ファンダメンタルズ、リサーチレポートまでを一画面に集約し、市場価格や需給状況をエリア横断で把握できます。ひっ迫の兆しやスポット・時間前の値動きを早めにつかむ起点として活用いただけます。
(eCompassサービスサイト:https://enechain.co.jp/services/ecompass)
なお、JEPXの発注手段の移行(取引画面の廃止と新方式への対応)については、既報の記事をご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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参考:
電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」 https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_systemsurveillance/pdf/010_03_03.pdf
分析データ:日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場 エリアプライス(30分コマ別)/関西電力送配電・中部電力パワーグリッド・九州電力送配電「インバランス料金情報公表ウェブサイト」不足インバランス料金単価・算定根拠(2022年4月〜2026年7月23日、9エリア。2026年6月以降は速報値)。いずれも当社にて集計・加工。
第1回(制度ニュース)|2026年10月、インバラが変わる。
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