トランプvsアンソロピックの騒動について
今朝、NHKの「トランプ氏アンソロピックのAI技術政府機関使わないよう指示」の記事を見てビックリしたじぃじです。
ですが、NHKの例によって要を得ない内容だったので、さらにググってみたところ次の記事を見つけました。
ここまでが今日、午前中の話。
その後1日ぼんやりしてたら、さっき NewsPicks NY の次の映像で、アメリカでどんな騒ぎになっているか?をちょっと詳しく解説してくれてました。
なるほど…テレ東もこの話題を扱ってましたが…
…先のBBCとは打って変わって OpenAI のサム・アルトマンは、すかさず前言を撤回し国防省と合意したみたいですねぇ。
で、事情が不可解な方々のために、例によってじぃじが蘊蓄を垂れますと…
OpenAI設立の経緯(2015年)
OpenAIは2015年12月、イーロン・マスクやサム・アルトマンらによって、非営利(Non-profit)の研究機関として設立されました。
当時の主な設立目的は以下の通りです:
「Googleへの対抗」: 当時、Google傘下のDeepMindがAI研究をリードしていましたが、特定の企業がAIを独占することを危惧していました。
「人類への貢献」: 特定の企業の利益を優先するのではなく、人類全体に利益をもたらす「安全なAI」の開発を目指しました。
「オープンソース」: その名の通り、研究成果を一般に公開(オープンに)するという方針でした。
イーロン・マスクは2018年に、テスラの自動運転AIとの利益相反などを理由に理事会を去っています。その後、OpenAIは大きな転換期を迎えます。
資金不足の壁: 高性能なAI(現在のChatGPTの元となるモデルなど)を開発するには、膨大な計算資源(サーバー代)と資金が必要になりました。
「営利部門」の設立(2019年): 寄付金だけでは賄いきれなくなり、投資を受け入れるために「利益制限付き」の営利法人を傘下に作りました。ここでMicrosoftから巨額の出資を受けることになります。
「テスラの自動運転AIとの利益相反」という言葉の裏には、表向きの理由と、後に明らかになったドロドロとした権力争いの両面があります。
具体的に何が問題だったのか、主に3つのポイントで整理できます。
1. 人材の奪い合い(引き抜き問題)
当時、テスラは自動運転(Autopilot)の完成を急いでおり、世界トップクラスのAI技術者を必要としていました。一方で、OpenAIも同じくトップ層のエンジニアを集めていました。
具体例: OpenAIの主要メンバーだったアンドレイ・カルパシー氏が、2017年にテスラのAI責任者として引き抜かれました。
同一人物が両方の組織に深く関わっていると、「どっちのプロジェクトを優先するのか?」「片方の技術をもう片方に流用していないか?」という疑念が外部(投資家や世間)から持たれるリスクがありました。
2. 開発目的の不一致
テスラ: 「車を走らせるためのAI(画像認識やリアルタイム制御)」という、営利目的の特定技術。
OpenAI: 「人類全体に資する汎用AI(AGI)」という、非営利の広範な技術。 マスク氏が両方のトップにいると、非営利組織であるOpenAIのリソースや研究成果が、私企業であるテスラの利益のために使われているのではないか、という批判を免れませんでした。
3. 【真相】経営権を巡る対立
近年、当時の内部メールなどが公開され、実は「利益相反」は体裁のよい辞任理由に過ぎなかったという見方が強まっています。
マスク氏の提案: 当時、Googleに対抗するには資金が足りないと考えたマスク氏は、「OpenAIをテスラに吸収合併し、自分が完全にコントロールする」ことを提案しました。
アルトマン氏らの拒否: サム・アルトマン氏ら他の創業者たちは、特定の個人に権力が集中することを嫌い、この提案を拒絶。 結果として、折り合いがつかなくなったマスク氏が「利益相反」を理由に身を引く形となりました。
その後、GPT2の開発後、OpenAIを離れた中心メンバーが設立したのが、**Anthropic(アンソロピック)**です。
2021年に設立されたこの会社は、今やOpenAIの最大のライバルの一つ(Claudeシリーズで有名ですね)ですが、その誕生の背景には、先ほどのイーロン・マスクの離脱とはまた違った「哲学的な対立」がありました。
なぜ彼らはOpenAIを去ったのか、主な理由は以下の3点に集約されます。
「安全性」か「製品化」か
中心人物であるダリオ・アモデイ(元OpenAI研究担当副社長)とその妹のダニエラ・アモデイらは、AIが急速に進化する中で「安全性の研究」を何よりも優先すべきだと考えていました。
しかし、OpenAIがMicrosoftから巨額の出資を受け、ChatGPTのような「製品(プロダクト)」としてのリリースを急ぐ路線にシフトしたことで、「このままでは安全性が二の次になってしまう」と危機感を抱いたのです。Microsoftとの提携への懸念
彼らは、特定の巨大テック企業(Microsoft)と密接に結びつくことで、OpenAIの本来の「中立性」や「透明性」が失われることを恐れました。
「営利目的の圧力がかかれば、リスクのあるAIでも公開せざるを得なくなるのではないか」という不信感が、独立の決定打になったと言われています。「憲法AI(Constitutional AI)」という独自の理想
Anthropicの最大の特徴は、AIに「守るべき憲法(ルール)」をあらかじめ教え込み、人間が細かく指示しなくてもAI自身が自分の出力を律するようにする仕組みです。
彼らはこの**「制御可能で倫理的なAI」**を自分たちの手でゼロから作り直したいと考え、OpenAIの主要なエンジニアら約15名と共にスピンアウトしました。
面白いことに、OpenAIから「安全性が足りない」と言って出ていったAnthropicですが、現在ではGoogleやAmazonから数兆円規模の出資を受けており、結局はOpenAIと同じように巨大資本の力を借りて開発を競い合っています。
さらに分裂は繰り返されて、2023年11月にはサム・アルトマンの解任騒動が起きました。IT業界では「5日間のクーデター」とも呼ばれる、前代未聞のドラマでした。
サム・アルトマンが取締役会から突然解任され、数日で電撃復帰するまでの経緯は、まさに「非営利の理想」と「巨大ビジネスの現実」が激突した瞬間でした。
具体的に何が問題で、どう着地したのかを振り返ってみましょう。
1. 解任の表向きの理由:「率直ではない」
取締役会が発表した解任理由は、**「アルトマン氏が取締役会に対して一貫して率直(Candid)ではなかった」**という非常に曖昧なものでした。
後になって分かった具体的な「不信感」の正体は、以下のような点だったと言われています:
隠密行動: 取締役会に無断で中東の投資家から巨額の資金(独自のチップ開発プロジェクトなど)を調達しようとしていた。
情報の抱え込み: 安全性に関する社内の懸念や、投資ファンド(OpenAI Startup Fund)を個人名義で所有していたことなどを適切に報告していなかった。
人間関係の操作: 理事会のメンバー同士を対立させるような立ち回りをしていた、という指摘もありました。
2. 真の対立軸:「開発スピード」vs「安全性」
根底にあったのは、**「AIをどんどん商品化して利益を上げたいアルトマン氏」と、「人類へのリスクを考えて慎重に進めたい理事会メンバー(特に科学者のイリヤ・サツケヴァーら)」**との哲学的な対立です。
理事会側は、アルトマン氏が「非営利組織としての使命(人類の安全)」を忘れ、営利ビジネスに突き進んでいると判断し、強制停止ボタン(解任)を押したわけです。
3. 前代未聞の結末:従業員の反乱
ところが、理事会の予想に反して、OpenAIの従業員たちが猛反発しました。
全社員の約95%にあたる700名以上が、「サムを戻さないなら全員辞めてMicrosoftに移籍する」という署名活動を行いました。
最大の出資者であるMicrosoftのサティア・ナデラCEOも、即座にアルトマン氏を「受け入れる」と表明して理事会に圧力をかけました。
結局、組織が崩壊することを恐れた理事会が折れ、アルトマン氏はCEOに復帰。彼を解任した理事たちの多くが去り、より「ビジネス路線」に理解のある新体制へと移行しました。
ちなみにこの解任騒動の顛末は Wikipedia 英語版のページになってますが、以前翻訳したページを掲載しておきます。
で…
今、騒動になっている米国政府とアンソロピックが揉め始めた話です。
結論から言うと、「ベネズエラでの軍事作戦にAnthropicのAI(Claude)が使われたこと」が、米国政府(特に国防総省)とAnthropicが決定的に対立する直接の引き金になったのは事実です。
1. 事件のキッカケ:マドゥロ大統領の拘束作戦
2026年1月、米軍はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束するための電撃的な急襲作戦を決行しました。この際、作戦の立案や機密ネットワーク上での情報解析に、AnthropicのAI「Claude」が使用されたと報じられました。
Anthropicは、データ分析企業の**Palantir(パランティア)**を通じて、米軍の機密ネットワークにAIを提供していた唯一の企業だったのです。
2. なぜそれが「揉める原因」になったのか?
作戦後、Anthropic側が「自分たちのAIが暴力的な軍事作戦や殺傷能力のある兵器の運用に使われたのではないか?」と懸念を抱き、Palantirや国防総省に対して**「利用規約(ポリシー)に違反していないか」を確認しようとしたこと**が、政府の逆鱗に触れました。
Anthropicの言い分: 「AIはまだ未熟で誤作動のリスクがある。自律型兵器や、米国民への大量監視には使わせないという『赤線(レッドライン)』を守るべきだ」
米国政府(トランプ政権・ヘグセス国防長官)の言い分: 「戦場でAIをどう使うかを一民間企業が指図するとは何事だ。軍の作戦に制限をかけるような『意識高い系(Woke)』の企業は、国家安全保障上のリスクである」
3. 現在の泥沼状況(2026年2月〜3月)
この対立は、単なる口喧嘩では済まないレベルに発展しています。
ブラックリスト入り: 2026年2月27日、米国政府はAnthropicを「サプライチェーン上のリスク」と認定し、政府契約からの排除を決定しました。
強硬手段の示唆: 政府側は、国防生産法を動員して**「AIのソースコードや制御権を強制的に接収する」**可能性すらチラつかせています。
ライバルの台頭: この隙に、イーロン・マスクのxAIが「制限なしに軍に協力する」姿勢を見せ、機密ネットワークへの参入を果たそうとしています。
というわけで…
AIベンチャーも保守派対リベラル派の党派対立の大きな潮流に巻き込まれて「これからどうなっちゃうの?」という NewsPicks NY の連中が喜びそうな展開になってます。トランプに喧嘩を売ったアンソロピック(Anthropic)は、これからどうなっちゃうの?と気を揉んでいる方々も多いかと…
歴史オタクのじぃじに言わせると「実は70年前にも同じように米国政府と揉めた事例があります」って説明したいところです。現在の言語モデルの起源は1950年代に発表されたウォーレン・マカロックの形式ニューロンと言われてますが、彼らの研究成果が永らくAI研究の本流ではなかった本当の理由は、研究パートナーだったノーバート・ウィナーが軍隊嫌いで、人工知能研究に関する軍の申し出をにべもなく蹴ったからでした。
詳しくは次の…
「キャリアが迷走する心優しき男の話」に書きましたので、興味のある方は是非読んでみてください。その後、彼らの機械学習が人工知能の研究として認知されるようになったのは1990年代になってからでした。
#ビジネス
#ニュース
#NewsPicks
#週刊ジョーホー番組
#AI
#Gemini
#Google
#OpenAI
#Claude
#トランプ大統領
#ClaudeCode
#Anthropic
#TRUMP
#ペンタゴン
#アンソロピック
#Amodei
#ヘグゼス
#ノーバート・ウィナー
#ウォーレン・マカロック
