仕事のやりがいとは?(前編)~お客さまに教えてもらったこと~
誰しも仕事の「原点」のようなものがあって、それは形のある無しに関わらず思い出として大切に記憶の中にしまってあるだろう。私にもいろんな会社で働きながら節々で思い出はあるけれど、広報として働きはじめてからの「原点」は今も目に見える形で大切にしまってある。
それは私がはじめて対応した雑誌の取材。
新しい「TOKYO」の発信基地として蔵前に誕生した「MIRROR」内のカフェ&レストラン「Cielo y Rio(シエロ イ リオ)」の取材だった。
今でこそ蔵前は“東京のブルックリン”とかイースト東京、カチクラ(御徒町のカチと蔵前のクラ)エリアとかいわれているが、開業当初は税務署や消防署、幼稚園などがある通りで、静かで人がほとんど通らない場所だった。
そんな中、1987年創刊の情報誌「オズマガジン」さんから2011年隅田川に流れ始めた新しい下町時間『蔵前』、という巻頭特集で4ページもの取材依頼。今も編集長を務める古川さんには本当にお世話になり、タレントさんをいれて撮影する緊張と初めての取材ということで取材時のことは正直ほとんど覚えてないのだが、私にとって広報としてのやりがいを感じる出来事であった。

取材が終わり、記事の校正(事実確認などをふまえた原稿チェック)も終え、発刊日を待ちわびていたある日のこと。オフィスがMIRRORの6Fだったのでランチは同じ建物内の「シエロ イ リオ」で食べることも多く、平日はビジネスマンが多かったのだが、学生かお休みかで観光に来ている風な2人組が私の隣の席に座り、小脇にかかえた雑誌を広げ取材された記事を丁寧になぞりながら「これこれ、これ食べたかったんだよね~楽しみだね~」といいながら注文したのだ。

その光景を見て「あぁ・・・私の仕事ってこういうことなんだ!!」と胸が熱くなったことを今でも覚えている。これまで知らなかった人たちにまずは店の存在に気づいていただくこと、そして足を運んでいただくこと、そのためにやっているのだと広報のやりがいを感じた瞬間だった。
経験も人脈もゼロからはじめた広報というお仕事
広報の仕事において、私はPR会社での経験や人脈は一切なかった。
でもなぜできたか?それはそのお客さまが雑誌を持ってきてくださった瞬間が全てを物語っている。
前回の記事でも書いたが、わたしは「伝えたい」という思いが根底にありさえすれば、知識や経験なんていつかついてくるし、そこが一番大事だと思っている。
そもそも広報ってなに?と言われたらまずは辞書や定義から・・・所属する日本広報学会でも今年新たな広報の定義が発表された。
”組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である”
うーん・・・ちょっと”学会”ぽく堅苦しく感じるかもなので、米国のPRSAの定義をみてみると
"Public relations is a strategic communication process that builds mutually beneficial relationships between organizations and their publics."
とあるが、超端的にいうと、パブリック(メディアも含む一般消費者)と関係を構築する企業のコミュニケーション活動そのものだと私は思う。
かつて社内で「広報ってなんだと思う?」というアンケートをしたことがあった。多くあったのは、売り込みに近い営業とか宣伝といった認識であった。
市場とかで「うまいよ〜安いよ〜」についつい惹かれてしまうのは、その陽気な販売員の風貌や老舗感や何かしらから信憑性を感じ購入してしまうのだが、広報もまた似たようなものである。はじめましての人から「うちの店を取材してください!」なんて言ってもまずは聞く耳を持ってもらうための土台作りから始めないとならない。
メディアも多種多様、そのメディアらしさというものが核としてあり、企画、編集、ライター・・多くの人で成り立っている。基本的には全ての取材に立ち合い、今はdmagazineなどありいつでもオンラインで手軽にみれるが、雑誌も自分の好きなものしか読んだことがなかったからこそ、昔はよくTSUTAYAにこもって、雑誌の発売日に合わせて1日中雑誌を読み耽っていたこともあった。
・素敵な表現だな、どんな人が書いてるんだろう・・・
・同じ京都特集でも雑誌によってこんなに視点が違うのか・・
見比べることで発見もあるし、記事を書いた人の名前は書いてあるから取材時に「はじめまして」と名刺交換するときにその名前の人と出会うなんてこともあった。先のオズマガジンはじめ、その多くの人との出会いが結果、知らなかったことにふれるきっかけを創れたのだと、「なんてすごい仕事なんだ!!」と今もワクワクがとまらない。
ただ意に反して日々目まぐるしく過ごしていると、大切な気持ちを忘れてしまいがちだ。それは〝慣れ〟もある。
“慣れ”のこわさ、私がかつて現場で働いた時代にお客さまに教えていただいたこと。次回は今までの経験は全部つながってるんだな、と思うような一つのエピソードをお話したいと思います。
(続く)
