【祝アニメ化】FX戦士くるみちゃんに学ぶ 裁量トレードのNG行動 #2
今回は、以前書いた『FX戦士くるみちゃん』を題材にした、裁量トレードで陥りがちなNG行動について振り返る記事の第2弾です。もしよければ、第1回も読んでいただければ幸いです。(第1回はこちら↓)
今回は、FX初心者が最も陥りやすく、そして最も抜け出しにくい罠である「金銭感覚の麻痺」と、相場を「いつでも引き出せるATM」のように錯覚してしまう危険性について振り返ってみたいと思います。
※本記事は『FX戦士くるみちゃん』3巻(12話)までの内容を含みます。未読の方はご注意ください。
FX戦士くるみちゃんとは:
女子大生のくるみちゃんが、亡き母がFXで溶かした2000万円を取り返すべく、自らも相場の世界へ足を踏み入れていく物語です。可愛らしい絵柄とは裏腹に、トレーダーが破滅に向かうリアルな心理状態が異常な解像度で描かれています。
「時給…いや―分給…いや―秒給1000円何てことも…!」
第1話より、FXを始めたばかりのくるみちゃんが、初めての含み益を前にして興奮するシーンです。
「もう1日分のバイト代を稼いでるのか…!」 「時給…いや―分給…いや―秒給1000円何てことも…!」
私もそうでしたが、初めて相場で勝つと、お金の尺度が一気に変わります。 レバレッジによってもたらされた一時的な含み益を、「自分の労働価値(時給)」と錯覚してしまう危険な兆候と言えます。ここから日常の金銭感覚がバグり始め、「汗水垂らして働くのが馬鹿らしい」という、破滅への第一歩を無自覚に踏み出してしまうのです。
恥ずかしながら私にも経験があります。FXではなく株のデイトレに手を出し始めたあたりでしたが、ビギナーズラック(信用3階建)で累計200万円ほど勝っていた時期は、「この弁当高いけど、デイトレで稼げるしな…」と考えるようになりました。そしてその年末に残高が半分になり、色々と迷走した結果、目が覚めました。本業の仕事が疎かになる前に脱却できたのはむしろ幸運だったのかもしれません。
「これくらいならちょろっとFXやれば取り返せるし―」
第8話より、パチンコで5000円負けたくるみちゃんが、日常の損失をFXで埋めようとするシーンです。
「あのお金でもう少し本買えたなぁ…」 「ま…いっか…これくらいならちょろっとFXやれば取り返せるし―」
FXを「いつでもお金を引き出せるATM」のように錯覚してしまう心理です。 日常のちょっとした無駄遣いや損失を相場で埋めようとする行為は、明確な優位性(根拠)に基づいてエントリーしているわけではなく、完全に「自分の都合」で相場に向かっている状態です。相場は、個人のパチンコの負け額など知ったことではありません。
私自身、「今日の飲み代だけ稼ごう」「さっき買ったゲーム代をペイしよう」と安易にチャートを開き、数千円を取り返すために適当なエントリーをして数万円を失うという、コントのような大敗を何度も経験してきました。
「支払うのは来年の春…!それまでに引き出せばいい…!」
第12話より、一度は退場した芽吹が再始動する際、禁断の資金に手を出してしまうシーンです。
「この60万円は一応学費用に貯めておいたお金だけど…支払うのは来年の春…!それまでに引き出せばいい…!」
相場を「確実にお金が増やせる一時的な預金口座」と完全に誤認しています。 この思考の最も恐ろしい点は、「負けるかもしれないという想定」が完全に抜け落ちていることです。生活防衛資金や、用途の決まった「絶対に減らしてはいけないお金」を口座に入金した時点で、トレーダーとしての心理的優位性はゼロになります。
しかもこの60万円は「余っているお金」ではありません。半年後に必ず必要になるお金です。それを「春までに増やせばいい」と考え始めた瞬間、相場は投資ではなく借金返済ゲームへと変わってしまいます。
負けが込んで冷静さを失い、「絶対に勝たなければいけないお金」を入れてしまった結果、わずかな逆行(含み損)の恐怖にすら耐えられず、最悪のタイミングでパニック損切りを繰り返す……裁量トレーダーの典型的な退場パターンです。
私自身は、流石に生活資金に手を出したことはありませんが、「勝てる前提の皮算用」で計画を考えてしまうことはよくあります。「勝てる前提」で未来の予定を組み始めた瞬間が、一番危ないサインなのかもしれません。
EAは「生活のスケール」を持たない
前回の第1話では、EA(自動売買システム)の強みを「退屈さ(余計なことをしない)」と表現しました。今回は、EAのもう一つの強みとして「『生活のスケール』という概念がないこと」を挙げたいと思います。
人間は「1万円稼いだら美味しいものが食べられる」「10万円失ったら家賃が払えない」と、常に現実の生活スケールとお金を結びつけてしまいます。そして、その「お金の重み」こそが判断を狂わせる最大の原因になります。
しかし、EAにとっての資金は単なる「有効証拠金(数値)」でしかありません。数千円だろうが数百万円だろうが、「パチンコ代を取り返したい」といった日常の都合に一切影響されることなく、ただあらかじめ設定されたロジック通りに淡々と処理を実行します。「お金に対する感情」をシステムレベルで物理的に遮断できることこそが、自動売買の強みです。
おわりに
相場を長く続けていると、「今日はゲーム代だけ」「飲み代だけ」「今月のスマホ代だけ」と、誰でも一度くらいは考えてしまいます。私も例外ではありませんでした。
でも、相場は人間の財布事情には一切興味がありません。
金銭感覚が麻痺し、相場を「自分の都合で利益を引き出せる場所」と思い込んだ瞬間から、相場からの強烈なしっぺ返しが始まります。
『FX戦士くるみちゃん』は、その当たり前なのに忘れがちな事実を、これ以上ないほど痛烈に教えてくれる作品なのだと思います。
「分かっているのにやってしまう」「お金の重みに耐えられない」という負のループから抜け出すため、日常の金銭感覚とトレードの資金管理を完全に切り離し、システムトレードに執行を委ねるという選択肢は、非常に合理的かつ現実的な防衛策になり得ると考えています。
