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【Vol.18】会社では毎月20万の赤字。でも「一人親方」なら食える。私が最初のM&A案件を「従業員に売却(のれん分け)」して大成功した話。

1. あの「最初のM&A案件」のその後

今回は、私が3年間で3件売却したうちの1件、「従業員への売却(MBO)」を成功させたお話をします。

対象となったのは、私がM&Aで一番最初に買収した「パソコン教室とパソコン修理店」です。 以前の記事で少し触れましたが、この店舗は買収後わずか半年でテナント閉鎖となり、休業を余儀なくされました。しかし、当社のプログラミング教室の隣に10坪ほどの空きスペースができたため、そこへ移転し、再オープンすることにしたのです。

休業に伴い前の責任者には退職してもらい、新たにパソコン修理の経験が豊富な30代の優秀な男性を店長として採用し、ワンオペ(一人体制)で再出発を切りました。

2. 2年粘って見えた「修理ビジネス」の限界と赤字構造

店長は優秀でしたが、そこからの2年間は「毎月20万円近い赤字」を繰り返すことになりました。

理由は明確で、パソコン修理というビジネスモデルの構造的な難しさです。 来客数は多いのですが、「修理費用を計算すると、新しいのを買ったほうが安いですね」となり、実際の成約(修理)に至らないパターンが多かったのです。

中古パソコンの販売も始めましたが、仕入れが高く、1台売っても利益は数千円程度。 調子が良い月は売上50〜60万円いくこともありましたが、粗利(利益)で換算すると最大で月30万円、平均すると月20万円前後でした。 そこから「家賃」「店長の人件費」「FC(フランチャイズ)のロイヤリティ」を引くと、会社としては毎月20万円近い赤字が確定してしまうのです。

社内のPCを安く修理できたり、取引先への直販など「相乗効果」はありましたが、単体事業としては限界でした。2年粘りましたが、私はトランビでの売却を決意しました。

3. トランビでの苦戦と、店長からの意外な申し出

もちろん、店長にも状況を説明し、了承を得てトランビに掲載しました。 数社から問い合わせは来たものの、「毎月赤字」という事実がネックになり、交渉は全く進みませんでした。

そんな時です。店長本人から「私が買うことはできますか?」と打診がありました。

実は1年前にも「自分でやってみないか?」と打診したことがあったのですが、その時は良い返事がありませんでした。 しかし、トランビに掲載された「売却金額」を見て、彼は「この金額なら自分でも買える」と気づいたのだと思います。また、2年間の営業でリピーターも増え、自分一人でやっていく自信が芽生えていたのでしょう。

4. 会社では赤字でも「一人親方」なら十分な黒字になる

私は、見ず知らずの第三者に売るより、彼本人に譲るのが一番良いと考えました。

なぜなら、会社として「店長の給料」を払って利益を出すのは無理でも、彼が「一人親方(個人事業主)」として独立すれば、今の月20〜30万円の粗利は、そのまま彼の「収入」になるからです。家賃とロイヤリティさえ払えば、十分に生活していけます。

こうして、従業員への売却(のれん分け)プロジェクトが動き出しました。

5. 独立に向けた3つの壁(資金・FC本部・大家)と社長の親心

しかし、従業員への売却には特有のハードルがあります。

  1. 資金の問題 私は極力売却額を抑え、彼が過度な借金を背負わなくて済むよう、無理のない範囲での銀行融資の引き方をアドバイスしました。

  2. FC本部との交渉 彼がそのままFCに加盟し続けられるよう、「なんとか加盟金(名義変更料)を抑えて引き継げないか」と、私が本部に根気よく交渉しました。これには1〜2ヶ月かかりました。

  3. 大家さんへの了承 幸い、大家さんについては割とスムーズに名義変更の了承を得ることができました。

こうして、彼は一国一城の主として独立を果たしました。 会社としては赤字事業を無事に切り離すことができ、従業員は低リスクで自分の店を持つことができた。双方にとって、これ以上ないほど綺麗で納得のいく「理想のEXIT(出口)」となりました。

事業の売却先は、外(トランビ)だけでなく「内(従業員)」にもいる。これもM&Aの大きな選択肢の一つです。



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