除霊依頼
提供されたミラノ風ドリアを食べずに、目の前の男はかれこれ1時間近く小脇に抱えて持ってきた卒業アルバムを眺めていた。
1時間
ドリアも冷めることに冷めて、むしろ温まらないだろうか。
などと下手な言葉遊びを考えながら俺は時間を潰している。
この男に頼むんじゃなかった
迷いは覚めたと勢い込んで電話をかけた、数日前の己の行動を悔やむ。
来店した時から、スタッフがずっと見ている。
今のスタッフの注目点は冷めきったドリアだ。
俺の目の前にいる男。
もう目にしただけでヤバイという出で立ちだ。
例えるなら、金田一耕助。
その服装の身長190センチはあるような痩せ型の男が、全身赤茶色で座っている。
そんな男がミラノ風ドリアを頼むもんだから、ミートソース同士の共喰いみたいになっている。
まだ食べていないが。
「あの……店長、私そろそろ……」
スタッフが上がりの声をかけてきた。
俺は手を上げて彼女に答える。
目の前の男も振り返って彼女へ手を振った。
怯えながらスタッフルームへと駆けていく彼女。
……明日も来てくれるだろうか。
「さて、と。食べますかね」
と、俺の目の前の男は冷めきったドリアを3口で食べ終わった。
……さすがに3口はどういう仕組みなんだ。
目の前の現象に目を白黒させていると、男はバッシングよろしくテーブルを片付け、洗い場へ食器を運ぶ。
おいおい、勝手な真似は……
「勝手な真似?」
赤茶色のミートソース男は不穏な声で立ち止まった。
つられて固まった俺に、冷めた視線を送る。
「今の店長は私ですよ。まさか、前店長から御自身の除霊の電話がかかってくるとは思いませんでしたが」
何と言っている?
俺は……
男が卒業アルバムの、俺の写真を指差す。
「先程の主婦からの依頼です。店に幽霊が出る。と。あなた、先程のスタッフの名前はご存知ですか?」
……さっきの、スタッフは……
「彼女がたまたまパートに応募したら、同級生のあなたが店長だった。それが全ての始まりです」
あの…スタッフは…
「まぁ、怨霊にならなかったのは不幸中の幸いです。おっと、これ以上は思い出さなくてもいいですよ。私の手間が増える」
男はそう言いながら冷笑を絶やさない。
「除霊稼業も、それだけでは食べていけないんでね。本業の傍らやっているんですが、まさか自分の着任先で仕事をするとは思いませんでした」
俺は、俺は………
「そして、あなたからも念話がかかってくるとはね。あなた本当に死んだ自覚ないんですね」
そうだ、あの日
彼女の家を電気が消えるまで眺めていたあの日。
俺は
「おやすみなさい。そのまま醒めない夢を見ておけばいい」
「本当に、店長に除霊の力があるんですね」
深夜帯のパートタイマーとして採用されていた清水令子から除霊の依頼を受けたのは、着任して早々の夜勤だった。
「まぁ、除霊稼業じゃあ生きていけないからねぇ」
「ありがとうございます。これ、お礼です。」
金額を確認して、私は店長としての笑みを彼女に向ける。
「確かに。そして、これを私が受け取ったら、もうあなたはこの事を忘れなさい。恩義に感じなくていい。ただの、店長とパートです」
深くお辞儀をして、彼女は卒業アルバムを片付けに行った。
私は彼女の満足げな笑みを確認した後、来月のシフト製作のチェックを始めた。
ヤスさんのこちらの記事のお題からの企画です。
一度逃がしかけたやつを掴まえました✨
お題は
『幽霊』
『卒業アルバム』
『サイゼリヤのミラノ風ドリア』
一応4月23日までとのことなので、間に合ったはず?
ハッシュタグ誕生の記事はコチラ
あ、今月から、放課後ライティング倶楽部、ライトプランですが参加しています🙋
よろしくお願いします。
※これを書き上げた直後、降りてきたのでもう一本書きました。
こちらは少し………😖
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