優秀な人が「泥臭い仕事」をあえて選ぶ、極めてドライな理由。
#BANI時代 #サステナビリティ #インフラ #キャリア戦略 #心理的安全性 #組織の病理 #自己責任論 #自己啓発 #20代のキャリア #ガバナンス
「うちの若い奴らは、都合が悪くなるとすぐ辞める」と嘆く経営層。
「心理的安全性を高めるために、1on1を取り入れよう」と語る人事。
現代の組織開発の現場では、毎日このような議論が交わされています。しかし、これらはすべて「的外れ」かもしれません。
私たちが「中身(優秀な人材)」の選別や、「器(会社の制度)」の綺麗さばかりを気にしている間に、それらを支える「足元の土台(インフラ)」が静かに崩壊しているからです。
かつて、ある2つの巨大な組織の境界にある「詰まった側溝」を、私がゲリラ的に清掃して回った実体験があります。そこから見えてきた、BANI(不確実・不可解)時代を生き抜くための、驚くほどドライで強力な「キャリアの生存戦略」をお話しします。
1. 「優秀なリンゴ」が、組織から静かに消える本当の理由
組織論において、よく「1人の悪影響が周囲に伝染する(腐ったリンゴの法則)」と言われます。だから問題のある個人を排除すべきだ、という自己責任論です。
これに対し、現場のリーダーは「そもそも組織の環境(木箱)が劣悪だから人が腐るんだ」と反論します。環境決定論です。
しかし、現代の本当の危機は、さらにその外側で起きています。
木箱を置いている「倉庫(社会インフラ・会社の共通土台)」そのものが雨漏りしているのです。
どれだけAIやデジタルを駆使した最先端のビジネス(リンゴ)を競い合っても、それを支える物理的なインフラや、部署間の連携、泥臭い「誰の管轄でもない共有資産」が放置されていれば、組織は内側から腐敗します。
この状況を見た次世代の優秀な人材は、冷ややかです。「この古い倉庫は土台から腐っている」と見切りをつけ、さっさと外の華やかなベンチャーや海外市場(新しい箱)へと飛び去っていきます。
しかし、ここに現代の罠があります。
生まれた時からインフラがあって当たり前だった彼らは、新しい箱に移っても「土台をメンテナンスするスキル」を持っていません。結果として、彼らが逃げ込んだ新しい箱も、社会全体の地盤沈下によって、やがて足元から崩壊していくのです。どこへ逃げても、リセットボタンは効きません。
2. 「ホワイトカラーの価値暴落」と「ブルーカラーの逆転」が教えること
ここで、私たちが生きる現代のリアルな経済現象に目を向けてみましょう。
いま、世界中で驚くべき逆転現象が起きています。かつて「花形」と言われ、エアコンの効いた部屋でキーボードを叩いていたホワイトカラーの市場価値が、生成AIの登場や市場の飽和によって買い叩かれている一方で、実際に現場で手を動かすブルーカラーやインフラエンジニアの給与が爆上がりしているのです。
これは、社会がようやく「実体を伴わない机上の空論よりも、現実を動かす力(インフラ)の方が圧倒的に価値が高い」という本質に気づき始めた証拠です。
口先だけでリンゴを評価する側の人(ホワイトカラー)は替えが効きますが、実際に詰まったパイプを直し、水を流せる人(ブルーカラー)がいなくなれば、社会そのものが停止するからです。
そしてこの「逆転劇」は、私たちのオフィスの地味な業務のなかでも、全く同じことが起きています。
3. 誰も責任を取らない「側溝」に、クワを入れる
私の体験をお話しします。これは学校という現場での出来事ですが、全ての企業、すべてのプロジェクトに共通する「構造」の話です。
あるとき、2つの組織(学校)の境界にある「排水用の側溝」が、長年の泥とゴミで完全に詰まったまま放置されているのを目にしました。縦割り組織の弊害で、「あっちの管轄」「こっちの予算外」と押し付け合っているうちに、誰も責任を取らない「空白地帯」になっていたのです。おかげで雨が降るたびに足元は泥水で溢れていました。
ここで「正義感」に燃えてボランティアを始めたり、上層部に「予算をくれ」と正論をぶつけても、組織の壁に阻まれて孤立するだけです。最悪の場合、スタンドプレーとしてコンプライアンス違反や職務専念義務違反に問われます。
だから私は、上層部に正論をぶつけて戦う道を選びませんでした。代わりに、自分の本業を徹底的に効率化して「10%の余白(スキマ時間)」を生み出し、それを活用してこの側溝の泥かきを『本業の成果を最大化するための地盤改良』として日々のルーティンに組み込みました。
自分の職務権限と就業規則の枠内で、淡々と、しかし確実に。
周囲が「管轄外なのに無駄なことを」と冷笑しているのを横目に、ただ1本の水路を開通させることだけに集中しました。
やがてゴボゴボと音を立てて汚水が流れ去り、足元の湿気が消え、環境が劇的に快適になった(リアルな成果が出た)瞬間、奇跡が起きました。
それまで見て見ぬふりをしていた隣の組織の人間や、周囲のスタッフたちが、ハッと我に返ったようにバケツとクワを持って集まり、いっしょに側溝を掃除し始めたのです。
人間は、正論では動きません。しかし、目の前に「実際に水が流れる圧倒的な合理性(快適さ)」を差し出されたとき、初めて動き出すのです。
4. なぜ、今「側溝を掘る人」の市場価値が爆上がりするのか
この話は、「綺麗事を言って、みんなで泥をかぶろう」という道徳話ではありません。むしろ、これからの時代を生き抜くための極めてドライなキャリアハックです。
みんなが「華々しい経歴(リンゴの見た目)」ばかりを追い求め、面倒な「土台の維持(側溝の掃除)」から逃げ回る現代において、「誰もが手を出さない空白地帯(部署間の隙間のタスクや、形骸化したルールの見直し)にアプローチし、実際に仕組みを回してみせる人」の希少価値は、文字通り独占状態(ブルーオーシャン)になります。
これこそが、組織における「最強のブルーカラー(実務者)的生存戦略」です。
自分の業務の10%の余白を使って、スマートに、合法的に、かつ淡々と開通させてみせること。水さえ流してしまえば、後からついてきた周囲が、あなたの成果を勝手に証明してくれます。手柄を横取りしようとする古い幹部すら、流れる水の勢い(実績)の前にはひれ伏すしかありません。
逃げ出した次世代のリンゴたちが、インフラ崩壊の現実に直面して立ち往生するなかで、最後に生き残るのは、「どこの組織に行っても、自らの手で側溝を掘り、水を流すことができるインフラ再建型の人材」です。
あなたの目の前にあるその課題は、上司と不毛に戦う「リンゴの品評」ですか?
それとも、あなたの市場価値を爆上げする、あなただけの「側溝」ですか?
クワを持つのは、今です。
【付録】明日から「側溝」を掘るための実践Q&A
記事を読んで「自分も足元のインフラを直したい!」と思った方のための、安全かつ効果的な実践ガイドです。
Q1. 「それはお前の仕事じゃない」と上司に怒られませんか?
A. 怒られます。だから「事後報告(あるいは成果による証明)」が鉄則です。
最初から「これをやっていいですか?」と聞くと、上司はリスクを恐れて「勝手なことはするな」と止めます。
重要なのは、「本業のノルマを120%達成した上で、余った時間でやる」ことです。側溝を掘った結果、「業務効率が上がった」「他部署からのクレームが減った」という数字や事実(水が流れた結果)を先に作り、それを「本業の成果」として報告してください。実績の前には、どんな上司も文句は言えません。
Q2. 私の職場の「側溝」がどこなのか分かりません。
A. 「みんなが毎週愚痴を言っているのに、誰も直さない場所」を探してください。
誰が更新しているか分からない、中身がグチャグチャな共有フォルダ
部署間でパスするたびに発生する、二度手間の確認メール
新人が入るたびに口頭で説明している、明文化されていない暗黙のルール
これらはすべて、組織のエネルギーをせき止めている「詰まった側溝」です。大きすぎるテーマ(組織改革など)ではなく、「今週中に自分一人で手を付けられる小さな詰まり」から始めてください。
Q3. 泥をかき出し、水を通しても、周りが乗っかってこない場合は?
A. 「やり方がまだ足りない」か「本当にその箱(組織)の寿命が終わっている」かのどちらかです。
水が流れて「明らかに周囲の仕事が楽になった」にもかかわらず、誰も動かず、手柄だけを横取りされるような組織なら、そこは倉庫ごと手遅れ(BANI時代のBrittle=脆さの極み)です。
しかし、絶望する必要はありません。あなたが手に入れた「誰も手を付けない空白地帯を見つけ、合法的に仕組み化して解決した」という実績とスキルは、あなたの市場価値を爆上げしています。そのクワを持って、さっさと次の「より良い倉庫」へ転職する武器にしてください。
⚠️ 【大切なお約束】側溝を掘り始める前の、リスク管理と免責事項
この記事を読んで「よし、明日から側溝を掘るぞ!」と血気盛んになったあなたへ。クワを振り下ろす前に、以下の3つのルールを必ず頭に叩き込んでください。これは、あなたという優秀なリンゴが、理不尽に組織から排除されないための防具です。
「本業の完遂」が絶対条件です(職務専念義務)
本業のノルマや日々のルーティンが疎かになっている状態で管轄外の仕事に手を出せば、それはただの「現実逃避」や「サボり」とみなされ、懲戒処分の対象になります。側溝を掘る時間は、あなたが本業を徹底的に効率化して生み出した「完全な余白時間」でなければなりません。「勝手に会社のルールや資産を変えない」こと(施設管理権・コンプライアンス)
どれだけ正論であっても、社外秘のデータを勝手に公開したり、会社の契約を独断で書き換えたりする行為は、法的なリスク(背任や規律違反)を伴います。あなたが手を付けるべきは、ルールそのものの破壊ではなく、「誰もマニュアル化していない、放置されたグレーゾーンの整理」です。自己責任の覚悟を持つこと
本稿で紹介したゲリラ的なアプローチは、すべての組織で一律に歓迎されるわけではありません。万が一、本稿のヒントを実践したことで組織内で不利益やトラブルが生じた場合、大変恐縮ですが筆者は責任を負いかねます。ご自身の状況に合わせて、慎重に、かつスマートに実行してください。
🚀 最後に:新時代の「倉庫番」を目指す、あなたへ
色々と厳しい「大人のルール」を並べましたが、最後にこれだけは伝えさせてください。
いま、日本の、そして世界中のあらゆる組織(倉庫)で、泥が詰まって悪臭を放っています。上層部は品評会に忙しく、若者は絶望して逃げ出しています。そんな中、「自分がこの水路を通してみせる」と、静かに袖をまくり、クワを手に取ろうとしているあなたの存在は、それ自体がすでに奇跡です。
最初は孤独かもしれません。「余計なことをするな」と冷笑されるかもしれません。
しかし、あなたが掘り起こした一筋の水路から、ゴボゴボと音を立てて水が流れ始めたとき、組織の空気は確実に変わります。そして、あなたのその泥だらけの背中を見て、必ず次の仲間がバケツを持って現れます。
もし現れなかったとしても、安心してください。その時あなたの手には、どこに行っても通用する「インフラを再建できる」という最強のスキルが残っています。
正論を吐く評論家(ホワイトカラー)になるな。
現実を動かす実務家(最強のブルーカラー)になれ。
あなたのクワが、世界を一本の美しい水路で繋ぐことを、心から応援しています。
