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怪談:【臍がらみ】第2話 「導入」【創作大賞2024参加作品】



 つまらない。近所を散歩した時に見つけた小さな神社からインスピレーションを得てオチまで書いてみたものの自分の才能のなさを恨む。急に集中力が切れて小説を書いていたスマホを放り出してベッドに寝転んだ。

 俺は、坂上裕人は鬱屈としていた。新卒で入った出版会社をやめ、実家に戻ってフリーのWEBライターをしている。とは言っても自分が書きたかったものじゃない、化粧品メーカーの新商品を主婦を装ったレビュー記事、アクセス数目当てのSNSで話題になっていることを大袈裟に書いた中身のないニュースブログなどなど、つまらないものを大量生産しては小遣い稼ぎをしている日々。気づけばもうすぐ三十路だ。

 昔からオカルト系の話題が大好きで、少ない小遣いを握っては古本屋でオカルト雑誌やホラー小説を買って読み漁っていた。自分で書くのも大好きだった。

 オカルト系の記事をたくさん書きたくて出版会社に入ったが現実は違った。当たり前だがオカルトだの心霊モノなんてものは全く金にならない、儲からないものをわざわざ書かせてくれる出版会社もない。憧れの出版業界に俺の居場所はなかった。

 嫌気がさして会社を辞めたあとは小説投稿サイトや個人ブログで小説を書いたり、動画投稿サイトに心霊系の動画をあげてみたりもしたが泣かず飛ばずだった。自信を無くしたのと、金がなくなっていく急りでアクセス数目当ての記事をフリーで請け負うようになってからオカルトとかホラーなんてものを書くことは無くなってしまった。

 訂正しよう、書くことがなくなったんじゃない、書いても面白いと思えなくなってしまった。空っぽなんだ。

「何ベッドで寝っ転がってんの?もう夕方だよお兄ちゃん」

「……今頼まれてる記事のプロット練ってんだよ」

「偉そうに〜、お兄ちゃんの書く記事なんて誰が書いても一緒だよ」

 他人の部屋に勝手に入り、偉そうにセーラー服の上にピンクのカーディガンを羽織っているのは俺の妹、坂上結衣だ。高校2年生で俺とは結構歳が離れている。甘やかされて育ってきたので我儘だしノックもしない。
 何の用かと聞くと妹は背負っていたリュックを置き、急に真剣な顔をして話し始めた。

「うちの学校、幽霊がいるかもしれない」

 そう言うと妹は不安気に目を逸らした。馬鹿馬鹿しい、と思ったがあまりにも深刻な顔つきをしていて、真偽はともかくふざけてはいないようだと直感した。

「とりあえず、話を聞こう」

 ベッドから身を起こして妹の方に向き直す。妹はそらしていた目線を俺の方に戻し、口を開いた。
 外からはカラスの声が聞こえ、オレンジ色の夕日の光が部屋に差し込んで、俺たちの影を伸ばしていた。

「まず、これを見てほしい」

 そういうと妹はピンク色のカバーが被せられたスマートフォンを差し出し、画面を見せてきた。そこには文字がびっしりと並んでいた。一目見てそれは俺も使っていた小説投稿サイトにアップされている小説だと言うことがわかった。

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