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【第2章】NICUでの日々⑦人生を変えた「アドラー心理学」との出会い


このお話は、NICUでの日々⑥の続きです。

障害児ママ専用のカウンセラーがほしい…!


NICUママになって、1年。
スタッフさんたちがいつも温かく関わってくれたおかげで、
精神的にはだいぶ落ち着いて生活ができるようになった。

とはいえ、一人になるとまだまだ心は揺れていた。

辛い気持ちを何とかしたくて、
有名なカウンセラーさんのブログを読んで
心に響く言葉をノートに書き留めたりしていた。

でも、ピンポイントで
「障害児ママだからこその悩み」について
私がほしい答えはなかなか見つからなかった。

ネットで「障害児ママ 悩み」と検索しても、愚痴や苦労話ばかりで
余計に気分が下がるものばかり。


または関わり方のテクニックの話が多くて、
「生後すぐ重度の障害児の母になった場合、どう心を保てばよいか?」
という、超レアケースな母親への指針なんて
どこにもなかった。

親の会とか、「話だけでもしにきませんか?」みたいなものはあったけど、当時の私は、もっと理論的に
「障害児ママの心の仕組み」を知りたかった。

なぜ障害児ママになったばっかりに、
こんなに辛くなるのだろう?
どうやったらこの気分の重さが解消するんだろう。

「NICUのママ向けに、病院が
専属のカウンセラーさんを派遣してくれたらいいのに…」

障害児ママにこそ心のケアが必要なのに
ぴったりのものがなく、もどかしい気持ちでいっぱいだった。

人生を変えた出会い

そんな私に、人生を変える出会いが訪れた。

4月に職場復帰を予定していたので、
次女をNICUに預けて、
自由に使える時間はあと3か月。

この環境を活かして、
ずっと学びたかった「アドラー心理学」を直接学びに行くことにした。


1月から2か月間、4回の講座に
石川県から東京まで飛行機で通うことに決めた。

当時はオンラインもなく、新幹線もなく、
まだ上の子たちも小さかったので、
これは当時の私の人生において、そこそこ大きな決断だった。

でも、私は出産で一度死にかけて、
「勇気づけを学ばずには死ねない!」と
強烈に思った経験がある。

「せっかく神様にもらった命、
本当にやりたいことのために使いたい!」と覚悟を決めた。


ドキドキしながら講座に出て、
自己紹介で、NICUにいる次女の話をした。

講師の先生もNICU経験者だったので、
直接話を聞いてみたいとずっと思っていたのだ。

先生は私の話を聞いて、真剣な目で、
「次女ちゃんは、何かお役目があって、
山本さんのもとに生まれてきたのかもしれないね」

と、言ってくれた。

まさか、そんな風に言ってくれるとは思ってもみなくて、
私はすごく嬉しかった。

この言葉が、私の心にじんわりと染み渡り、深い安心感をもたらした。


この子にも、何かお役目がある。
この子も、生きていていいんだ


わが子を障害児にしてしまったという罪悪感が、少しだけ和らいだ気がした。

障害の重いこの子に「あるもの」って何?

それ以来、講座に通い、
アドラー心理学の「勇気づけ」の考え方を夢中で学んだ。

その中で、
「ないものではなく、『あるもの』に目を向けよう」という
ワークがあった。

長男や長女のことはすぐにできた。
「元気に育ってる」「保育園に通ってる」
「絵本が好き」「歌が歌える」「靴下が履ける」…など
たくさんの「あるもの」が浮かんだ。

でも、NICUにいる次女は、
呼吸すら自分でできず、歩けず、動けず、
口からミルクも飲めず、目も見えない…

「できないこと」を数え上げればきりがないほど
何もできることがなかった。

「なんかもう、『生きている』ことしかできないじゃんねぇ…」

そんな風に落胆しそうになったが、

「『生きている』って、もしかしてこの子の『あるもの』なのでは…?」
と、ハッと気づいた。

自力では呼吸はできない。
でも、「呼吸器があれば、呼吸はできている」

自力ではミルクを飲めない。
でも、「管を通せば、消化できている」

自分では何もできないように見えても、
何かの支えがあれば、できていることがあると気づいたのだ。

・生きている
・排泄ができている
・24時間お世話してくれる優しいスタッフがいる
・体温調節ができている
・毎週面会に来てくれる家族がいる
・お手紙を書いてくれるお姉ちゃんがいる
・存在を気にかけてくれる人がいる

「次女には何もない」と思い込んでいた私は、
次女もたくさんのものを持っていたことに気づき、目から鱗が落ちた。

次女が一生懸命生きようとしている姿は、
私たち家族に希望を与えている。

次女のケアをすることで、スタッフさんたちも
癒やされている。

呼吸の数値が改善することで、周りに喜びを与えている。

何よりも、次女の存在が、私を人として大きく成長させてくれている。

次女はただそこにいるだけで、
多くのものを人に与えるお役目を果たしていたのだ。


こんな風に、アドラー心理学のおかげで
物事を多面的に見ることができるようになり、
次女の障害のプラス面に目を向けられるようになった。

深い闇の中にいた私の心に、
確かに「小さな光」が灯り始めていた。


「障害児ママの心を楽にする仕組みを
アドラーで解明できるかもしれない」

そのころはまだ、ぼんやりと思っていただけだったが、
この気づきが、後に私の活動につながる第一歩目だった。

▼次回(第2章最終話)に続きます。


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