《ショートショート》込み入った話
僕は、炊き込みご飯。言わずと知れた、ご飯界の王様さ。
僕を作るだけで、あら不思議。品数いらず、手間いらず。
僕と味噌汁さえいれば、立派な食事の出来上がり。
「おいコラ、俺と勝負しろ!」
「カチ込みご飯」が飛んできた。
彼はたびたび、「飛び込みご飯」と一緒に僕に突っかかってくるんだ。
でも、僕は知っている。本当の黒幕は「抱き込みご飯」であることを。
「まあまあ、そんなに湯気を立てるなよ」
そう入ってきたのは「割り込みご飯」。彼は平然と順番を無視するけれど、仲裁の才能は一流だ。
「俺も俺も」と強引な「ねじ込みご飯」よりはずっといい。
「巻き込みご飯」はいつも通り、みんなでできる悪ふざけを考えている。「盛り込みご飯」が嬉々としてアイデアを出しまくり、「折り込みご飯」はあらゆる可能性を想定する。その様子を「張り込みご飯」が厳しい顔で見つめていた。と思ったら急に大声で、
「おい、詐欺には注意しろっていつも言ってるだろ」
今まさに銀行に行こうとしていた「振り込みご飯」が、ぎくっとして振り向いた。
「差し込みご飯」はどこ吹く風で、箸を差し込んでいる。マナー悪いなぁ。
でもみんな知ってるんだ。彼が実は、職人の「住み込みご飯」が作った魅力的な竹籠に入った「編み込みご飯」に密かに想いを寄せていることを。
「踏み込みご飯」が彼に歩み寄り、
「いい加減、告白したらどうなんだ」
と囁いている。
「気持ちを伝えるなら、やっぱりプレゼントでしょ」
サケやたらこや海苔の佃煮をどっさり持った「詰め込みご飯」もやってきた。
「俺たちみんなバラバラだけど、何だかんだいい味出してるよな」
「組み込みご飯」がみんなを集めながら言うと、
「おーい、俺も入れてくれ」
「駆け込みご飯」の声がした。
「うおー、ギリギリ間に合った」
最後に来たのは「すべり込みご飯」。
粒を寄せあっている僕らの間を、しゃもじがゆっくり、ゆっくり、通り過ぎる。
こうしてー
僕らは立派な「混ぜご飯」になった。
