短編小説|1話完結|Someday...Somebody...|魚の骨
魚の骨
ランチに食べた魚の骨が、喉に刺さってとれない。オフィスの自分のデスクで、同僚が淹れてくれたコーヒーを飲みながら思った。
子どもの頃、親に「魚の骨が喉に刺さったらご飯を丸呑みしろ」なんて言われたが、あれは間違った対処法だ。実際には、人体は自ら異物を排除しようとする力が備わっているため、自然に抜けて無くなるまで、放っておくのが良い。もしそれでも抜けなければ、外科を受診して抜いてもらうことだ。
その他、親からは色んなことを教えてもらったが、今になって分かるのは、大人はまあまあ間違える、ということ。喉に刺さった魚の骨の対処法然り、子どもの躾け方や進路の問題然り、大人は度々間違ったことを言う。
自分がちゃらんぽらんだったからと、繊細な性格の子に厳しくして追い詰めすぎたり、子どもの性格や世の中は変わっていくこともあまり考慮せず、現状の世間一般でいうところの安全な道を行かせようとしたりする。
クリエイティブで周りに合わせるのが苦手な性格の子に、一番にコミュニケーション能力が求められる職は合わないし、じっくり考えるのが得意な子に、瞬発力や決断力を求められる職は合わない。
子どもがサッカー選手になりたいというなら、親に出来るのは、その夢を可能な限り応援することだ。そのうち、もしかしてサッカーの次に好きなゲームで、その後画期的なサッカーゲームを作る人になるかもしれないし、サッカーの指導者の側になるかもしれない。無難だからと、市役所職員の道をゴリ押しするのだけは違うと思う。
そんなことを考えていると、知らぬ間に喉の違和感はなくなっていた。ついでに、いい加減限界なこの職場には再来月でさよならを告げ、友人が立ち上げたカフェでケーキを焼く仕事に就くことにする。
自宅に、散々試作したケーキのレシピがたんまりある。3ヶ月後には、私は念願のケーキ職人。
学生時代、私は服のデザイナーになるのが夢でした。私は高校から家政科、服飾関係に進みたかったのですが、家族の勧めもあり、結果的に選んだのは普通科でした。
今はネットの時代。個人でブランドを立ち上げ、ネットで販売されている方は沢山います。働き方もさまざま。今どき、企業は簡単に従業員を裏切りますが、自らが手にした技術、人脈は裏切りません。
この年になって、親に恨み節を言う気はないですが、まあ大人って間違えるよね、という話。
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