短編小説|1話完結|Someday...Somebody...|白いシャツの横顔
白いシャツの横顔
いつもの書店。白いシャツの人が通り過ぎる。
私は横目でその気配を感じて、ふと顔を上げた。
目で追う後ろ姿は、私が期待する人のものではない。
それが彼でないことは分かっていた。
彼がこの書店に姿を見せなくなって1年。きっと彼はこの辺りを引っ越したか、ライフスタイルが変わったとかで、もうここを訪れることはないのだ。
それでも私はまだ反射的に、白いシャツの男性が通り過ぎると目で追ってしまう。全然違う人の姿に、彼の面影を重ねる。
真剣に本に目をやる横顔。意外に長い睫毛。骨ばった手で、静かにページを捲る仕草——
「その本、面白いですよね」
「——はい」
一度だけ交わされた、短い言葉。
彼が話しかけてくれても、私は返事をすることしか出来なかった。この本も面白いですよ、読んで感想聞かせてください、なんて言えていたら、今私はこんな風に白いシャツの人ばかりに気を取られることもないのだろう。
彼がどんな意図でその言葉を発したのかも、私には分からないまま。あの後、目線が重なる頻度が少しだけ多くなったような気がしたのは、何だったのか。
彼が面白いですよね、と言った本を、今日も買って帰る。
きっとレジの店員は私のことを、よほどこの本が好きな人として記憶しているのだろう。
白いシャツが好きです。
自分が着るのも、人が着ているのも。
夫は「白は太って見える」なんて言いますが、そこそこ良い年で、気にすべきは、ちょっとばかしスリムに見えるかどうかということよりも、清潔感だろうと思っています(超個人的意見)。
みんな、もっと白シャツを着よう!(え)
↓他のお話
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