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短編小説|1話完結|Someday...Somebody...|失くし物

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失くし物


 指輪がない。
 そのことに気が付いたのは、勤務終わりだった。

 出勤時、勤務時間ギリギリに職場に到着した私は、「こんなところに入れたら失くしそう」と思いながら、とりあえずのつもりで、制服の胸ポケットに左手薬指の指輪を放り込んだ。とりあえず、とりあえず——

 しかしその選択は、やはり不味かった。勤務開始後から仕事は常に忙しく、とりあえずで胸ポケットに放り込んだ指輪を、移動させる暇などなかった。移動させないと、移動させないと、と思いながら、いつしか指輪のことを忘れ、その存在を思い出したのが、今。 

 念の為、職場のフロアを見渡し、棚の下などを見てみるが、当然、そこに指輪などあるはずもなく。 

 これまでも、アクセサリーを失くしたことは複数回あった。大抵、今回のように焦って外して、きちんと決まった場所に戻さず、適当にポケットなどに放り込んで失くしていた。お気に入りだったピアスも、昔の恋人から貰ったネックレスも、そうして失くした。

 人は、失って初めて気付く——
 よく言われることではある。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、とも言うが、だとしたら自分の経験からも学べない私は、とんでもない大馬鹿者ということになるだろう。不倫なんてリスキーだからやめておけと何度言われても、私はやめることが出来ないのだから、もうそれは分かりきったことか。お気に入りのピアス、昔の恋人から貰ったネックレス、不倫相手から貰った指輪——

 次に私が失くすのは、なんだろう——


 人は本当に、どうして失くさないと気付けないんでしょうね。
 戦後80年。日本の義務教育の学習システムにおいて、歴史が「ただの暗記科目」であることに憤りを感じる今日この頃です。


↓こちらはAIさんとの実験企画


↓他のお話


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