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短編小説|1話完結|Someday...Somebody...|階段の先

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階段の先


 猫に踏まれて、目が覚める。
 空調の効いた部屋の中、本を手にしたまま、いつのまにかソファーで眠っていたらしかった。

 ぼんやりした頭のまま、夢と現実の境界を探る。そうか、あれは夢だったのか、となんとなく切ない気持ちになりながら、俺は身体を起こした。

 今頃、彼女はどうしているだろうか——
 そんな風に思いながら、夢で見た景色をもう一度思い浮かべる。俺と彼女は、手を繋いで、中学校の屋上へと続く階段を上っていた。実際には、彼女と手など繋いだことなどない。それどころか、中学校では言葉を交わしたことも数回だったように思う。彼女への淡い思いと、階段への好奇心が見せた夢だということは分かっていた。

 子どもの頃から、階段は密かに、俺の幼い好奇心の的だった。古いスーパーの階段にある、関係者以外立ち入り禁止の立て看板。中学校の教師が言う、「屋上は立ち入り禁止」。階段を上ると、物語へ通じる本を閉じ込めてある宝箱や、空を駆ける白いドラゴンが待っているのではないか。空に開けるキラキラとまばゆい景色なんかが広がっているのではないか。そんな風に思ったりした。

 そういえば中学校の同窓会の案内が来ていたな、と思いながら、ダイニングテーブルの上を見る。案内の中身を確認し、参加しないに丸を付けた。きっと彼女も、今頃は結婚している。子どももいるだろう。そのことが物凄く悔しいのではないが、そんな姿を見たいか見たくないかと言われると、どちらかといえば見たくなかった。

 階段の先に待つ景色をいつまでも知らないでいるように、俺はこの先も彼女という人をよくは知らないまま、ずっと過ごしていく——


 いただいたお題で書きました。
 怪談はちょっと思いつかなかったので、階段で。
 ひんやり具合が少々(だいぶ?)足りない気もしますが、何卒ご勘弁のほどを。
 

↓別のお話はこちら


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