短編小説|1話完結|Someday...Somebody...|コインランドリーの君
コインランドリーの君
土曜日の夜。私はいつも通り、1週間分の洗濯物を抱えて行きつけのコインランドリーを訪れる。
2ヶ月前に改装され、まるでカフェのように、綺麗におしゃれに生まれ変わった建物。足を踏み入れると、ひんやり冷たい空気が身体を包む。
店の奥、2人掛けの丸テーブルの席に、その人はいた。店が改装されてから目にするようになったその人は、私と同じように、いつも土曜日の夜にここを訪れた。今日も一人で、洗濯が終わるのを、本を読みながら待っている。紙の本をゆっくりめくるその姿は、ただ静かで、彼のいる場所だけがまるで凪いだ海を見ているかのように、安らかだった。
洗濯機に洗濯物を入れ、100円玉を入れる。と、あと100円足りない。両替機で交換できるだろうと両替機に500円を入れるが、両替機は何やらよく分からないランプが点滅していて、投入した500円がそのまま戻ってくる。もしかしてこれは、100円玉が足りないとかそういうことで、両替機は使えないということか。
困ったな、と思っていたときだった。ふと、例の彼が、こちらを見ていることに気付いた。
「その両替機、止まってますよね」
一瞬、彼は私に話しかけているのだということに気付かなかった。初めて聞いた彼の声が、頭の中でリフレインする。
「あ、ごめんなさい。突然話しかけて。さっき、俺もちょっと困ったんです。いくら足りない感じですか?」と彼が言う。
「あ。えっと。100円足りなくて」
「それなら、俺100円出しときますよ。来週、またここで会った時に返してくれたらいいんで」
「え?」
彼を認識しているのは、自分だけだと思っていた。でも、そうではなかったということを、彼の言葉が教えている。
「あ、ごめんなさい。いつも土曜日の夜、同じ時間帯に会うなと思っていて」
彼は言ってこちらに近づいてくると、何気ない仕草で、私の手に100円玉を握らせる。
「使ってください。同じコインランドリー仲間です」
彼はそう言って、見たことのない顔で笑った。
驚きのあまり、私はそれを断ることもなく、いつの間にか、私は流されるままに彼の提案を受け入れていた。
洗濯機の回る音と、自分の胸の音だけが聞こえる。
最近のコインランドリー、本当綺麗でおしゃれなところが増えましたよね。
待ち時間、私は読書ではなく、もっぱらnoteに書く小説を書いていますが。
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