見出し画像

矯正医療にも課題はある


当投稿は法務省及び各矯正施設、並びに関係機関の意見を述べるものではありません。

既に発表済みの資料等の要約、それを踏まえた投稿者個人の経験に基づく意見や見解です。

また、本投稿は投稿者本人の勤務時の状況に基づき作成しております。

そのため、その後の法改正等により現状が変化している場合があります。

あらかじめご了承ください。


前回は矯正医療の基本的な仕組みや特殊性について、簡単に説明しました。

ドラマや映画ではほとんど描かれず、知られていない未知の世界だと思います。

私自身、実際に勤務するまで全く想像が出来ませんでしたし、働き始めても一般的な医療現場との差に慣れるまで時間がかかりました。

一般の医療現場と比べると、ずいぶんとタフな精神が要求される場所ですし、様々な疾患や外傷などに関する幅広く深い知識がなければ通用しません。

たった10数年程度ですが、続けてこられたのは、ひとえに経験豊富で優秀なスタッフの皆さんが助けてくれたからだと思います。


矯正医療が抱える課題

さて、今回はそんな矯正医療の場でどんなことが課題とされているかご紹介します。

矯正施設に勤務する医師の確保


矯正施設で働きたいと考える医師が非常に少なく、人員の確保が大きな課題となっています。

施設ごとの収容人員、医療設備がそれぞれに異なっており、一概には言えませんが、医師一人が診察を行う患者数が多く対応する疾患や外傷は多岐に渡るものの、多くの矯正施設は診療所レベルの設備・薬剤しか備えていません。
医師の専門外の疾患を診察することも決して稀ではありません。

加えて夜間休日の、いわゆる宅直対応もある。
常勤医師が一名の場合、ほとんど365日対応することになります。。

要するに医師一人にかかる負担が非常に大きすぎることが医師不足の要因の一つであると言えます。


常勤医師の負担軽減のため、多様な働き方を採用する施設もありますが、問題解決に至ってはいません。



一部の施設では長い期間、常勤医師が不在となっているケースもあります。

抜本的な解決策が必要な問題であると考えますが、矯正医療が法務省の管轄である点も問題解決を阻害している要因のひとつと考えます。

一般的な国民医療制度は厚生労働省の管轄で、矯正医療はそこから切り離されているのです。

このことが医療の独立性やアクセスの面で制約を生じてるのではないでしょうか。


医療共助


前回、矯正医療の仕組みとして、刑務所・少年院内診療所医療刑務所の事をご紹介しました。

成人施設の場合、この二つの間に、医療重点施設という施設が全国に9か所存在します。

届け出区分としては診療所ですが、一般の矯正施設に比べ医療設備が整っており、手術や人工透析などの対応を行うことができる施設です。

一般施設医療重点施設医療専門施設(少年施設の場合は一般施設、第三種少年院)は互いに医療共助体制と呼ばれる関係を有しており、

全体として最も効果的な医療が行われるよう、階層化した医療システムを構築し、限られた予算・資源を有効活用

https://www.moj.go.jp/content/001323825.pdf

しています。

つまり、必要な医療を、対応可能な施設が受け持ち、治療が終了または一般施設で対応可能な程度になれば元の施設に帰ってくる、といった対応をし、持ちうるリソースを最大限活用しているのです。

近年の多様な医療的配慮の必要な被収容者の増加により、医療共助は今後さらに重要な取り組みとなってくると考えます。


高齢者の増加と医療ニーズの多様化


近年、高齢受刑者の割合が増加しています。

令和5年版 犯罪白書によると、令和4年の男性被収容者の高齢化率は14.0%女性被収容者だと令和4年は21.4%でした。
平成15年は男性被収容者が4.3%、女性被収容者が5.4%

令和5年版 犯罪白書 第4編/第8章/第2節/2

なので、約20年で大幅な増加となっています。

教施設内は多くの場合、老朽化が進み、いわゆるバリアフリーの配慮を行っていない建物も多く、段差や階段が点在しています。

多くの矯正施設の敷地は広大で、長距離を歩かなければならない場面も多く散見されます。

そのような環境は高齢者が自立して生活するハードルは高く、十分な受刑生活を送ることすらも困難になるため、近年ではスロープや手すりの設置などの施設の改装といったハード面の対応を行う施設が増えています。

また、歩行や入浴が困難な被収容者を、比較的若年の被収容者が介護するといった取り組みをしている施設もあります。

このように矯正施設が介護施設のような役割を果たす場面が出ています。
こういった取り組みは、罪を悔い改め、更正を促すという矯正の範疇を超えた役割のように見えます。

しかし、矯正施設には社会の最後のセーフティネットという側面もあります。

それゆえ、高齢化の波に対応していくことも矯正の使命の一つであると考えます。


まとめ


矯正医療は、被収容者の健康と社会復帰を支える重要な基盤ですが、医師不足高齢化制度構造などいった多くの課題が重なっています。

今後も医療従事者の待遇改善や、制度連携の強化高齢者への一層の支援再犯防止策の拡充が求められているのではないでしょうか。


最後に


前回に引き続き、矯正医療について書かせていただきました。

少しでも興味を持っていただけれると幸いです。

質問もお待ちしています!

最後までご覧くださり、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!