「『I am』で、私の心がまた、動き出した。」美神依華さん③
(前回からの続き)
⑪FANKSになったことでの人生の変化を教えてください。
金谷:そこから抜けるきっかけっていうのは?
美神:きっかけっていうのが、(ペットの犬の)「コムギ」。
(当時の加害者が)「犬がほしい。」と突然言い出し、私は大反対したの。なぜなら、そういうDVをする人だから。絶対犬もやられると思ったから、私はもう大反対。
私はもうちっちゃい頃から犬をずっと飼っている生活をしていたから、「犬っていうのはかわいいだけじゃ飼えないんだよ。」「命を育てる。守っていかなきゃいけないものだから。」って。「お世話とかいう問題じゃなくて、上からも下からも汚いものも出すし、そういうのもひっくるめて、すべて面倒を見なきゃいけないんだよ。だから、(あなたには)無理だよ」って言ったんだけど、「俺が全部やるから。」って言って、もう勝手に連れてきちゃった。
(それまでは)私は一睡もできない日々を過ごしていて。一瞬でも寝ちゃうと、遊んで遅く帰ってきた加害者から「何、俺より先に寝てんだよ。」とボコボコにされていたから。眠れない苦しみの中、ずっと起きっぱなしで朝も昼もなく廃人のごとく過ごしていて。
「コムギ」が来て、その加害者が世話をしたのは1日だけ。ご飯もあげない。水もあげない。自分の都合の良い時だけかわいがる。自分の機嫌の悪い時は無視。無視だけだったらまだ良かったんですけど、段々「コムギ」にも手を上げるようになった。
私も、もうどん底で寝たきりの状態だったりしたんだけれども、「コムギ」が来たことによって、朝ご飯あげなきゃいけない。で、まだワンちゃんって、ちっちゃいうちは小分けに小さくして、朝昼晩3回ご飯をあげなきゃいけない。
まだ眠れないんですけれども、朝の区別と昼の区別と夜の区別がつくようになった。
金谷:パートナーの方はお仕事はされていたんですか?
美神:していましたね。家にいない時間はあったんだけど、もう、やっぱり洗脳っていうのがあって。一切周りとは遮断されちゃって、孤立した状況になっていたので。監禁、軟禁状態。
(後に) 警察からもそういう風に言われて。「もう、監禁されている状態だから。」って。そう言われた時に「私は監禁されてるんだ。」って初めて気づくみたいな。その時はそんな風に気づかず、後から気づくみたいな闇の中をさまよっていて。
それが「コムギ」が来たことによって、ちょっと動けるようになってきた。
そして、その時に、TMが「I am」っていう曲を出した。
あの辺から私の心もまた動き出したっていうか。
「TMが動き出した。私も『コムギ』が来て動き始めてる。」みたいな。
金谷:ちょうどそこがシンクロしたんですね。
美神:うん、そう。でも、「I am」は聴けなかったんですよ。ネット環境もなくって。
たまたまテレビかな。体調も悪いんだけど、なんか新曲出したっていうのは耳に残っていて。「I am」っていうタイトルも知らなかったの、初めは。ただ、新曲が出たっていうのを何かで聞いたのが引っかかって。
で、勇気を出して、加害者に「なんかTMが新曲を出したらしいんだけれども。」って。
その時私、働いて貯蓄していたお金はすべて没収されていたから、一文なしで。加害者からお金も一切持たされていなかったから、勇気を振り絞って、そのCDを買ってほしいと。でも、案の定、却下。
でも、そのTMが動き出したっていう、新曲が出ましたっていうのを聞いた時から、「私も動きたいな。」みたいな。あの情報がなかったら、まだ闇の中だったかもしれない。
それで、新曲が出た。「聴きたいな、聴きたいな。」って思いつつ、聴けずにずっといて。それと同時に、その加害者からのDVもさらに輪をかけて増していって、「コムギ」への虐待もエスカレートしていって。本当に大げさではなく、いつ殺されるか?ボコボコにされながら、このまま死ぬのかな?なんて時も何度もあって。
私がふと気づいた時に「コムギ」の目が死んでいた。人間でいう100円ハゲみたいな感じで毛が脱毛しちゃって、何ヶ所か。毛が抜け落ちて皮膚が見えている。目がうつろで。
それに初めて気づいて、「これは、何としてもこの状況からこの子を守らなきゃいけない。」って思った。この頃はいつも頭の中に、ずっと「Nights of The Knife」が流れていて。
で、ブラックな時期に警察沙汰にも何回もなっていて、その度に警察からも何回もひどい仕打ちを受けたことがいろいろあって、だから警察はまったくあてにはならないんだけれども、もし、私が逃げた場合、自営業で店舗兼住宅の家族とかに嫌がらせに来られるのが一番心配なことだから、相談しに行ったんです。
そうしたら、たまたまその時、DVやストーカー被害者の殺人事件が多発していた時期で、警察が非難されていた時期で、「もう今すぐにでも、私のことを保護する。」と。「犬も後で保護するから大丈夫。」って言われたんだけど、警察は絶対それをやらないって知っていたから、それを振り切っていつ殺されるかも分からない家に帰ってきてっていうのがあって。
その時に警察が、私が絶対に帰るっていう意思が強かったのを見て、ひと言だけぼそっと言った言葉があって。
「市役所に相談しなさい。男女共同参画室っていうのがあって、そこに相談できるから。」って。そういう情報を初めて知って、すぐそこに相談に行った。
でも、私、住所を変えていなくて、ずっと実家に住所を置いたままにしていて。(当時)住んでいるのは、違う市だったんですね。市区町村が違って。だから、(警察で言われるまでは、)自分の住民票を置いてある市に相談するのが筋だから、住民税も払っていないのに、(今住んでいる場所の市役所に) 相談するのもおかしいよねって、私、思っていて。勝手に思い込んでたのね。
金谷:いやぁ、そこは頼って良いか、と。
(次回へ続く)
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