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ゲイカップル老後不安ない理由|子どもや家族がいても安心できない現実と国の保障

完璧な消音装置を備えたシトロエンの古いエンジンのように、僕たちの時間は静かに、そして正確に流れていた。

十月のはじめの、耳の後ろがすうすうするような秋の火曜日の午後、僕(もうすぐ七十六歳になる)はキッチンのテーブルで、すっかり冷めてしまったアールグレイの紅茶をすすりながら、コールマン・ホーキンスの古いレコードに針を落としていた。スピーカーから流れてくるテナーサックスの音は、まるで乾いた砂漠に染み込んでいく水のように、古い賃貸マンションの壁に吸い込まれていった。そこには何一つ無駄な響きがなかった。

八十歳になったトシくんは、バルコニーの椅子に深く腰掛け、ペーパーバックのペリカン・ブックスを読んでいた。何年も前にロンドンの古本屋で買った、地政学に関するいささか退屈な本だ。彼の細い指先は、まるで熟練した時計職人のように静かにページをめくっていく。バルコニーのプランターに植えられたミントの葉が、十月の風に吹かれてかすかな香りをリビングに送り届けていた。

世間の人々は、テレビの四角い画面や、あるいはインターネットの薄暗い底から、僕たちのような存在に向けて執拗に不安を投げかけてくる。彼らはそれを「老後のリスク」と呼び、あるいは「身内のいない孤独」と呼び、親切そうな顔をして僕たちの平穏にひびを入れようとする。まるで、自分たちが抱えている底なしの恐怖を、誰か他の人間と分け合わなければ気が済まないみたいに。

「ねえ、トシくん」と僕はスピーカーのボリュームを少し下げてから言った。「テレビのニュースでは、また年金がどうとか、介護の担い手が足りないとか、そういうことを言っているよ。僕たちがやがて孤独の中で干からびて死んでいくに違いない、と彼らは真剣に信じ込んでいるようだ」

トシくんは本から目を離さず、ただ口元の片端をわずかに持ち上げた。それは彼が何かを深く納得したときに見せる、特有の小さな微笑みだった。

「それは彼らが、記号としての家族というシェルターの中に隠れていないと、一歩も前に進めないからさ」とトシくんは言った。彼の声は、秋の終わりの井戸の底から響いてくるように静かだった。「彼らは婚姻届という紙切れや、子どもという不確実な未来の保険を抱え込むことで、ようやく自分が安全な場所にいると思い込もうとする。でもね、僕に言わせれば、それは底の抜けたバケツで水を汲もうとするようなものさ。どんなに必死に水を溜めようとしても、バケツの底からは絶え間なく冷たい現実が零れ落ちていくんだ」

トシくんの言う通りだった。僕たちは知っている。世間が「正しい幸福」と呼ぶものの内側で、どれほど多くの人々が、逃げ場のない静かな地獄を生きているかということを。

何年か前、僕の知り合いの既婚者の男が、疲れ果てた顔で僕のところにやってきたことがあった。彼は絵に描いたようなマイホームを持ち、妻がいて、成人した二人の子どもがいた。世間一般の基準からすれば、彼は「勝ち組」のシェルターに守られているはずだった。しかし彼の家庭の実態は、一対三の冷酷な包囲網だった。リビングに入れば無視され、ろくな食事も作ってもらえず、彼がただ息をするだけで聞こえよがしの溜め息をつかれる。そして最後には、彼が必死に働いて稼いだお金も、三十年かけてローンを払った家も、すべてを離婚裁判の冷たい歯車に噛み砕かれて、放り出された。

「それでも世間は言うんだ」と僕は冷めた紅茶のカップを両手で包み込みながら続けた。「どれほど家庭内で悪口を言われ、精神をすり減らされ、財産をむしり取られようとも、子どもや妻がいる人生のほうが、僕たちのような二人の男が静かにジャズを聴きながら暮らす夜よりも、はるかに『人間として正しい幸せ』なんだってさ。滑稽だと思わないかい? 語るに及ばないほど愚かな、しかし誰もその歪みに気づこうとしない奇妙な喜劇だ」

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