【Answer】「人手を増やす」という幻想を捨てる ―― 熱情に対する、冷徹な構造からの反論
介護現場の過酷な現実を直視し、「送客」から「定着・育成」へと舵を切るなおき社長の覚悟に、大いなる敬意を表します。このアプローチは極めて誠実であり、人道的に見れば「正しい正論」です。しかし、一人のプロフェッショナルとしてこの社会構造を冷徹に見つめ直したとき、私はあえてなおき社長の「人を増やし、定着させる」という地道なアプローチの限界を指摘せざるを得ません。非常に酷な視点かもしれませんが、ビジネスと社会の持続可能性を問うために、この反論を展開します。
なおき社長のnoteの核心(エッセンス)は、以下の3点に集約されます。
・人手不足と労働環境の悪化、実の家族の面会途絶による精神的疲弊で現場が崩壊寸前であること
・インシデントの9割は人手不足が原因であり、「関わる人の数」と「定着・育成」で解決を目指すこと
・現状を嘆かず悲観せず、介護総合人材サービスとして一つずつ課題を解決していくこと
現場の痛みを誰よりも知るなおき社長の熱い原文は、以下のリンクからご覧いただけます。
労働人口の激減という「椅子の奪い合い」への懸念
なおき社長は「関わる人の数を増やすとともに、定着や育成に取り組む」と宣言されています。ですが、マクロな公的データが示す未来を突き合わせると、この戦略には構造的な罠が存在します。
厚生労働省や経済産業省の推計では、今後介護人材は数十万人規模で不足するとされています。この数字が意味するのは、単に「介護業界の不人気」ではなく、日本の生産年齢人口そのものが激減する中で、あらゆる産業との激しい「人間の奪い合い」が起きるという冷徹な現実です。
つまり、どれだけ処遇を改善し、採用後の定着率を最大化したとしても、物理的に「介護に割くことのできる人間の絶対数」が社会全体から消えていくのです。どれだけ優れた育成プログラムがあろうとも、分母となる人間がいない環境では、既存の人材サービスの延長線上にあるアプローチは「タイタニック号の沈没を数分遅らせる延命措置」にしかなり得ません。
また、「インシデントの9割は人手不足で解決できる」という点にも、私はあえて異論を唱えます。
『介護労働実態調査』が浮き彫りにする現場の疲弊や、メディアが報じる『面会途絶(家族の完全丸投げ)』。これらは本当に、人手が増えれば根本解決するのでしょうか。問題の本質は「人数」ではなく、「職員の善意に依存しすぎている業務構造」そのものにあります。人間の手による肉体労働に頼り続ける限り、現場の摩耗を止めることはできません。
ビジネス、そして社会への接続
介護がこの国の重要な「社会インフラ」であるからこそ、私たち人材ビジネスを営む者が果たすべき真の役割を再定義しなければなりません。
それは、「人を現場に送り込み、長く定着させること」ではなく、「人が少なくても回る圧倒的な省人化・生産性向上のシステムを現場に根付かせること」です。
経済産業省の報告書でも指摘されている通り、必要なのは精神論やマンパワーの増員ではなく、介護ロボットやAIの活用、DXによる業務の徹底的な削ぎ落としです。人材サービス会社の存在意義は、労働力を供給する側に留まることではありません。それでは人口減少というマクロの荒波に確実に飲み込まれます。
真にインフラを維持するためには、「人間でなければできないケア」を極限まで見極め、それ以外のすべてのオペレーションをテクノロジーで代替する。すなわち、現場のあり方そのものを変革する「ソリューションプロバイダー」への脱皮が必要です。人材を必要としない、あるいは最小限の人数で高いクオリティを維持できる強固な仕組みをクライアントと共に創り上げることこそが、私たちがビジネスを通じて社会に果たすべき究極の果実ではないでしょうか。
いま、あらためて自分に問いかけたいこと
ここまで論じてきたことは、現在の我々のサービスや存在意義を真っ向から否定する意見に他ならない。自らの生業を否定することほど、苦しく痛みを伴うことはないだろう。
しかし、目を背けてはならない真実がある。今の介護職が抱える圧倒的な業務量のまま、持ちこたえられる未来など万に一つもないということだ。
だからこそ私たちは今、パラダイムシフトを起こさなければならない。「人手を確保し、定着させること」と「省人化を進め、構造を改革すること」。この一見相反する両輪を同時に走らせ、今から打開策を練り上げていくことこそが、未来を生き残る唯一の道であるはずだ。
そして忘れてはならない。今後どれほど現場のDX化やAI導入が進もうとも、そのテクノロジーの指揮を執り、扱いこなすのは「人間」であるという事実を。
これからの福祉の現場に求められる真のニーズとは、ただの労働力ではない。テクノロジーを右腕として乗りこなし、より高度で人間味のあるケアに集中できる「新たな人材」だ。私たちはその未来を先回りし、これからの時代に必要な人材のあり方をどこよりも早く社会へ提唱していくべきではないか。
前向きな熱情だけでも、冷徹な絶望だけでも未来は変えられない。既存の枠組みを自ら破壊し、両輪の思想で業界の次の一手を切り拓いていく。その揺るぎない覚悟と情熱を胸に、私はこれからもこの巨大な課題に向き合い続けたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました♪♪♪
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■ 参考文献・資料
『介護労働実態調査』(公益財団法人 介護労働安定センター)
『介護職員の定着と育成のためのマネジメント』(専門書籍)
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