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台湾映画を観たので思い出話を一つ

その会社は中小企業だが 台北に現地代理店があった
そして 年に一度くらい 日本から現地語の堪能な専務が出向き
現況視察などをしていた

この出張に若手が同行することがある
名目は専務の秘書だが 実際には何もしない
彼らの後をついて行くだけ

ある年 専務から何気なく
「君は台湾に行ったことある?」
「いや ないです」
「じゃぁ 行こうか」
というノリでこの大役が回ってきた

言葉は分からないからホントについて歩くだけ
それでも初めて訪れる異国は
町を歩くだけでも それなりに楽しめる
旧字体漢字が溢れる光景は
アルファベットまみれより居心地が良い

自由な時間はあまりないのは仕方ない
それでも 昼も夜もその後のお酒も
なかなかの店に連れて行ってもらった

ホテルもセミスイート
一人で泊まるには充分すぎる広さがある
専務と同室だったらキツイなぁという思いは杞憂だった

そんな呑気な出張のさなか現地の人が
「どこか行きたいところはあるか」
と訪ねてきた

くっついているだけでツマラナイだろう
という配慮と思われる

下準備も予備知識も
ほとんどなく台湾に来ているので
行きたいところ と急に聞かれても
返答に困ってしまった

「前の担当者は
テレサ・テンのお墓に行きたいって
言ったよ」

代々の若造にそう聞いていることが分かった
それよりも そんな 極めて 個人的すぎる
希望を言うヤツがいたのかと驚かされた

そんなヤツのおかげなのか 難しく考えず 思いついたのが
夜市
飲食屋台がずらっと並ぶ光景が浮かんだ

「夜市に行ってみたい」

先方にしてみればイイお店で
食事しているのにそんな場所へ行きたいのか
という疑念もあったようだが
その夜彼らは夜市に連れて行ってくれた

夜市に到着
賑わう屋台を目の前にして
さてどれを食べようかなと
思いながらグルッと見て回る

この時も現地の人の先導で歩いている
詳しくは知らないし 言葉も通じないから
くっついて歩いていた

これはこうゆう食べ物
あれは何という食べ物と説明してくれた
 もうすべて覚えていないが

そして一周すると彼らは再び車に乗った
私も車に乗るの と疑問符が脳裏を駆け巡りつつも
車に乗り込んだ

どうやらホントに
「夜市を見る」だけ
らしく 食事はちゃんとした店に案内された

夜市で好きなもん食わせてもらえるわけじゃなかったのだ

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