ADVの未来を担う超優等生 AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ【ゲームレビュー】
AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブのクリアレビューになります。
前作も含め、ストーリーのネタバレはありません。
前作のレビューはこちら。
はじめに
今年は打越鋼太郎氏のEver17に感銘を受けた一年だった。そのため、同氏が手掛けるライブラリに一年以上眠っていたAI:ソムニウムファイルシリーズにも同じようにどハマり。前作に続き、そのままの勢いで開始した。そんなタイトルが非常に長い続編のレビューを行なっていく。
概要
あらすじ
最初に【右側】が発見されたのは、今から6年前のことだった。中心からまっぷたつに切り裂かれた死体……。当時どれだけ捜索しても、もう片方が見つかることはなかった。
それから6年後、行方がわからなかった【左側】が発見される。時空を越えて現れた半分の死体……。それはまったく腐敗しておらず、まるでついさっきまで生きていたかのようだった。特殊捜査班ABISの新人捜査官であるみずきと龍木はパートナーの眼球型AI――アイボゥやタマとともに過去と現在、夢と現実を行き交いながらこの【ハーフボディ連続殺人事件】の真相を解き明かすべく捜査を始める。
システム
プレイヤーは警視庁の特殊捜査班「ABIS」に所属する二人の主人公みずきと龍木として、事件解決に挑む。
現実世界で現場検証や聞き込みを行う「捜査パート」と、重要参考人の夢に侵入する「ソムニウムパート」で構成されており、二つのパートを行き来しながら事件の真相を探る。
プレイ概要
クリア時間:約40時間(難易度:スタンダード)
ゲーム内実績及びおまけ要素コンプリート済み。


良かった点
ストーリー
結論から言おう。本作のシナリオの出来は本当に素晴らしい。過去発売されたどの名作ADVにも全く引けを取らないものであると確信している。

正直な話、シリーズに対する慣れもあったのか序盤は前作ほど乗れなかった。
しかし、真相に近づくにつれ、次々と衝撃の事実が明らかになる。終盤になってくるとびっくりし過ぎて逆に些細な事では驚かなくなる。

その様はまさにEver17を彷彿とさせるものであり、それを超えたという意見があっても全くおかしくないと思っている。
具体的な内容を明言できないのが本当にもどかしい。初見の方は真相を是非自分の目で確かめていただきたい。
キャラクター
個性豊かなキャラクターも健在で、新キャラも魅力的だ。

ゲームの続編としては既存キャラの扱い方も比較的上手かったように感じている。

今回は前作の時系列に近い6年前と、6年後の現在の2つの時間を龍木という新キャラクターと成長しABIS所属のPsyncerとなったみずき、2人の捜査官が主人公になった。



操作性、UIの向上
シリーズの特徴であったお洒落で使いやすいUIは、更にユーザーフレンドリーに進化した。

例えば、賛否あったであろうQTEとソムニウムパートの難易度変更が可能になったり、

ソムニウムパートを一度クリアすると時間無制限モードが追加され、オマケ要素解放に必要な目玉を探しやすくなったり、

鍵則(きそく)という行動指針の追加で、ソムニウムパート内の行動を推理しやすくなった点が挙げられる。
そして極め付けはこれ。
本作は前作から地続きの話、ということでネタバレは避けられないかと思いきや、この手のゲームにしては珍しくきちんと配慮されている。

前作を知っていると答えると、シナリオ内で前作の事件に関与していた人物から当時の話について、そしてその後どうなったかについての台詞が追加される仕組みだ。
そのため今作からプレイしても全く支障はない。
前作のフィードバックを活かし、隅々まで行き渡らせたプレイヤーへの配慮がこのゲームの素晴らしいポイントだ。
パロディ、ミーム全開
相変わらずパロディ、ミーム満載のネタ全開な作風である。

先ほど述べたように、ソムニウム内の掛け合いが圧倒的に見やすくなったことも相まって、より強く印象に残るようになっている。






個性的な新システム
新しく導入されたシステムも、このゲームを彩っている重要な要素だ。
象徴的なのが捜査パート中に行うWink Psyncで、その時相手が何を考えているかをすぐに見ることができる。


その他にも捜査パートに拡張視覚という詳しく現場検証を行うモードが追加されたり、

めだまっぺというたまごっちのような育成ゲーム、

AI達による人生相談コーナーも追加されるなど、遊び心満載である。

悪かった点
露骨に悪い点は正直見つからなかった。
前作で問題だった部分は殆どユーザーの裁量で調整することができるようになったし、新たな問題点も無いように感じている。
強いて言うならエンディングムービーの出来とそこに至るまでのカタルシスが前作を越えられなかった、という点だけである。
しかし依然として以下の"人によっては問題に感じるであろう点"は残っている。
相変わらず・・・な点
人を選ぶ
前作のレビューでも散々申し上げたが、今作も同様に人を選ぶゲームである。
CEROレーティングがCに下がったことから分かるようにグロ表現はほぼ消えたが、代わりにオカルトチックな恐ろしさがかなり増えた。

そして相変わらず下ネタは全開である。
例えば...






これには打越氏なりのポリシーがあるらしく...
打越:2作目では極力下ネタは減らそうと思っていたのですが、通しでプレイするとやっぱり多く感じますよね……。もしも下ネタがあることで、ゲームの評価が少しでも下がってしまっているのだとしたら、もうこれ以上、下ネタは書くべきではないのかもしれない。笑いの手段としても安易だし、封印すべきなのかもしれない。
そんなふうに思って、深く反省していたある日のこと……。テレビでオアシズの大久保さんがこんなことを言っているのを耳にしました。
「下ネタはね、誰も傷つけることがない優しい笑いなのよ」
その言葉を聞いてはっとしました。そうだ、その通りだ! 下ネタは誰かを蔑むわけじゃない。失敗や容姿や身分や知力を嘲笑うものでもない。自虐でも加虐でもなく、唯一平和的な手段をもって人々に可笑(おか)しみを与えるもの。それこそが下ネタなのだ! と、僕はその瞬間気づいたのです。というわけで、僕はこれからも下ネタを書き続けていこうと、固くなったあれに誓ったのでした。
確かにここまで来たら貫き通して欲しいものだ。
難解なシナリオ
シナリオ全体の難解さは打越氏のお家芸と言えるが、本作もそれは健在だ。
今回はオカルトや陰謀論が中心であるが、それ以外にも科学的側面や精神論まで...その内容は多岐に渡る。

ただ、難解な用語を解説してくれる"補記"も続投しているのでご安心を。
逆に言うと人を選ぶ点はこれだけである。
それ以外は本当にユーザーフレンドリーだし、どうしてもっと流行らないの⁇と思って仕方ない。
終わりに
衝撃的なシナリオでプレイヤーを驚かせたAI:ソムニウムファイルの次回作は、全く期待を裏切らない正統進化の続編だった。
贔屓目無しに見ても、ADVとしては欠点の少ないかなりの良作である。前作の欠点であった強制される煩わしさとかなり強かったグロ表現を排除し、より広い層に目を向けた格段に遊びやすい作品になっている。
シナリオのクオリティはそのままに、シリーズの良さを潰さない程度に粗を削った正当進化の続編と言えるだろう。前述したクセの強さや下ネタを許容できる方には自信を持ってお勧めできる。
何よりこのシリーズはセール時に冗談みたいな価格で購入可能なのも良い。
私としても、今年の7月に発売されたばかりのシリーズ最新作、"伊達鍵は眠らない"をこの記事を書いている段階でついに買ってしまった。
こちらも終わり次第レビュー記事を書きたいと思う。
追記:感想記事投稿しました。
Switch2でも発売されているので是非一緒に遊んでいただきたい。
最後までご覧いただきありがとうございました。

