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キャリア×メンタルヘルスの統合支援①「出勤できているから大丈夫」ではない

──キャリアの悩みとメンタルヘルスのサインに早く気づくために

ここでいう「統合支援」とは、個人の悩みを一面的に捉えるのではなく、キャリア、メンタルヘルス、職場環境、組織の関わりをつなげて考える支援のことです。

企業や組織の支援に関わる中で、「キャリアの悩み」と「メンタルヘルスの不調」は、決して別々に起きているものではないと感じることがあります。

仕事には来ている。
けれど、以前のような集中力がない。

役割は与えられている。
けれど、自分が何を大切に働きたいのかが見えなくなっている。

周囲からは問題なく見える。
けれど、本人の中では不安や迷いが積み重なっている。

こうした状態は、決して特別なことではありません。

「仕事がうまくいかない」
「働き方に悩んでいる」
「この先のキャリアが見えない」

こうしたキャリア上の迷いやつまずきが、知らず知らずのうちにストレスや不安につながり、メンタルヘルスに影響することがあります。

一方で、メンタルヘルスの不調や強い不安があることで、

「今の仕事を続けられるだろうか」
「これからどう働いていけばいいのだろうか」

と考えること自体が重くなり、キャリア形成に影響が出ることもあります。

つまり、キャリアとメンタルヘルスは、一方通行ではなく、互いに深く関わり合っている関係にあります。

だからこそ、どちらか一方だけを見る支援では、届かないことがあるのです。

この記事でお伝えしたいのは、管理職や人事が医療的な判断をする必要がある、ということではありません。

大切なのは、日々の仕事ぶりや対話の中で、「いつもと違う」変化に早く気づくことです。

出勤できているかどうかだけではなく、その人が本来の力を発揮できているか。
キャリアの迷いや役割への不安が、心身の負担につながっていないか。
安心して相談できる関係性が職場にあるか。

こうした視点を持つことが、キャリア支援とメンタルヘルス支援をつなぐ第一歩になります。

「キャリアの相談」の裏側にあるサイン

たとえば、キャリア面談が次のような相談から始まることがあります。

「自分の努力が認められていない気がする」

「今の仕事にやりがいを感じられない」

「これから何を目指せばよいのかわからない」

最初はキャリア上の悩みに見えていても、丁寧に話を聴いていくと、眠れない、集中できない、疲れが取れない、遅刻や早退が増えているなど、メンタルヘルス上のサインが見えてくることがあります。

これは、キャリア上の課題が心の状態に影響している場面です。

反対に、復職支援の場面では、

「以前のようには働けないかもしれない」

「責任のある仕事を任されるのが怖い」

「自分に何ができるのかわからなくなった」

という言葉が出てくることがあります。

この場合は、体調の回復だけでなく、これからの働き方、役割、強み、無理なく力を発揮できる環境を一緒に整理していくことが大切になります。

これは、メンタルヘルスの不調がキャリア形成に影響している場面です。

このように、支援の現場では、キャリアとメンタルヘルスのテーマはしばしば重なり合って現れます。

もちろん、医療的な判断や治療が必要な場合には、産業医、保健師、公認心理師、医療機関、EAPなど、適切な専門機関につなぐことが必要です。

そのうえで、日々の1on1やキャリア面談、復職支援、人材育成の場面において、キャリアとメンタルヘルスの両方の視点を持つことは、本人にとっても組織にとっても、より丁寧な支援につながっていきます。

「出勤できているから大丈夫」という誤解

組織の中で考えたい視点のひとつに、プレゼンティーズムとアブセンティーズムがあります。

プレゼンティーズム(presenteeism)とは、出勤はしているものの、心身の不調などにより、本来のパフォーマンスを発揮できていない状態のことです。
アブセンティーズム(absenteeism)とは、心身の不調などにより、欠勤、遅刻、早退、休職など、職場に不在となっている状態のことです。

※厚生労働省「こころの耳」の定義を参考に加筆

たとえば、プレゼンティーズムには、次のような状態があります。
「何とか出社はしているけれど、頭が働かない」
「気力が湧かず、ミスが増えてしまう」
「会議には参加しているけれど、集中できない」

一方で、アブセンティーズムは、欠勤や休職として表面化しやすいものです。

つまり、アブセンティーズムは勤怠上見えやすい一方で、プレゼンティーズムは周囲から見えにくいという特徴があります。

本人は苦しい状態にあるにもかかわらず、
「出勤できているから大丈夫」
「仕事はしているから問題ない」
と見過ごされてしまうことも少なくありません。

しかし、本来の力を発揮できない状態が続けば、本人の負担はさらに大きくなります。

そして組織にとっても、生産性の低下、ミスの増加、職場全体の活力低下につながっていきます。

これは、目に見えにくいコストでもあります。

本来なら発揮できた力が発揮されていない状態は、組織にとって次のような損失につながります。

・生産性の低下やミスの増加
・周囲のメンバーへの負担増
・職場全体の活力低下
・離職予備軍の増加
・ミドルシニア層の意欲低下や役割喪失感の深化

だからこそ、メンタルヘルスの不調を「個人の問題」で終わらせず、組織として早く気づき、支える仕組みが必要です。

健康経営にこそ、キャリア支援の視点を

近年、健康経営への関心が高まっています。

一方で、実際の組織では、健康管理やメンタルヘルス対策と、キャリア自律や人材育成が、別々の取り組みとして進められていることも少なくありません。

しかし本来、この二つは地続きです。

心身の状態は、仕事への向き合い方やパフォーマンスに影響します。

一方で、役割への迷い、成長実感の不足、将来への不安、働く意味の喪失は、メンタルヘルスにも影響します。

不調が起きてから対応するだけではなく、日頃の関わりの中で従業員の変化に気づき、必要な支援につなげること。

そして、本人が安心して自分の力を発揮できる環境を整えていくこと。

この統合的な視点こそが、健康経営、離職防止、人材育成、ミドルシニアの再活性化、そして組織の活力向上への鍵になると感じています。

管理職が一人で抱え込まない仕組みをつくる

このテーマは、個人面談の場だけでなく、企業研修として取り組む意味も大きいと感じています。

ここで大切なのは、管理職や人事担当者が医療的な判断をすることではありません。

管理職が一人で抱え込むことでもありません。

管理職に求められるのは、治療者になることではなく、次のような関わりです。

  1. 「いつもと違う」変化に早く気づくこと

  2. 安心して話せる入口になること

  3. 必要に応じて、専門機関や支援につなぐこと

この「気づく・聴く・つなぐ」関わりが、職場の中ではとても大切です。

そのためには、管理職個人の努力だけに頼るのではなく、人事、産業保健スタッフ、外部専門家、職場の上司が連携できる仕組みを整えておくことも重要です。

研修で育てたい、管理職と人事の視点

研修では、たとえば以下のようなテーマを扱うことができます。

・ラインケア研修/セルフケア研修
管理職がメンタルヘルスのサインに気づき、適切な支援につなぐ。また、一人ひとりが自分の状態に気づき、自分のメンタルヘルスを整えていく力を身につける。

・面談力研修
1on1で、業務確認だけでなく、キャリアと心の状態を丁寧に聴く。

・人事担当者向け研修
復職支援とキャリア再設計をつなげて考える。

・組織開発研修
プレゼンティーズムを見逃さない職場づくりを考える。

・キャリア開発研修
従業員が自分らしさ、強み、価値観、役割を整理し、これからの働き方を考える。

キャリア支援とメンタルヘルス支援をつなげて考えることは、従業員一人ひとりの安心につながるだけではありません。

離職防止、人材育成、ミドルシニアの再活性化、組織の活力向上にもつながっていきます。

不調を個人だけに背負わせない

メンタルヘルスの不調を、本人の弱さや努力不足として捉えてしまうと、本質的な支援にはつながりません。

大切なのは、その人の状態を丁寧に理解し、キャリア、役割、職場環境、心身の状態をつなげて捉えることです。

私は、個人の内面に寄り添うだけでなく、組織の中でどのような関わりや環境が必要なのかを一緒に考えることを大切にしています。

人が安心して働き、自分の力を発揮できること。

組織が、一人ひとりの可能性を活かしながら成長していくこと。

その両方を支えるために、これからも「キャリア」と「メンタルヘルス」を分けずに捉える支援を大切にしていきたいと思います。


【ご相談・お問い合わせ】

企業・労働組合・教育機関等で、キャリア支援、1on1、管理職の面談力向上、セルフケア・ラインケア研修、メンタルヘルスとキャリアをつなげた研修をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

医療的な判断や治療ではなく、キャリア支援・人材育成・組織開発の視点から、社員の変化に早く気づき、必要な支援につなげる仕組みづくりを支援しています。

組織の課題や対象者に合わせて、研修内容を設計しています。

ありがとうございます。
個人と組織のキャリア開発
米津 幸絵
国家資格キャリアコンサルタント
1級キャリアコンサルティング技能士
Finest代表

https://www.finest-career.com/

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【参考文献・参考資料】

・厚生労働省「こころの耳
・経済産業省「健康経営オフィスレポート」
・経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック」
・特定非営利活動法人EAPメンタルヘルスカウンセリング協会『EMCA機関誌 Cor No.23』掲載記事「『キャリア』と『メンタル』統合的アプローチの実践」P.16

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