追いかける夢と、産声と。──あの日母になった私へ
あの日、母になった私へ
何を言えばいいのか思いつかない。
「ありがとう」「頑張ったね」「おつかれさま」「これからだよ」「人生の宝物ができたね」
…どれもしっくりこない。
だって、あの日、私の感情はぐちゃぐちゃだった。
子に出会えたかけがえのない喜びと、夢を失う悔しさや不安が、同時に押し寄せていたから。
仕事を始めて約1年。4歳から続けるダンスを仕事にしたいという自分の中の想いに、企業勤めしてから気付いた。退職して「ダンス一本に一度賭けてみよう」と思った矢先に妊娠した。
嬉しさ、期待、心配、悔しさ、色んな感情に押しつぶされそうな思いだった。
子がお腹に宿っている幸せを噛み締めながら、私の人生はどこに向かっていくんだろう?という漠然な不安を抱える妊娠生活。
ダンスの夢を追い続けられなくなった自分は、もう人生の主役じゃなくなったんじゃないだろうか。
でも、産まれた子の顔を見た瞬間、ぼろぼろと涙が溢れた。
私のところに来てくれてありがとう。
私をここに連れてきてくれてありがとう。
何をかなぐり捨てても大切にしたいと思わせてくれてありがとう。
あの日の私にどんな言葉をかけても、きっと届かない。何が心に響くのか、自分でも一生わからないだろう。
でもこれだけは言える。
言葉に出来ないそのぐちゃぐちゃな感情は、あなたが生きる長い人生で見つかるたった一つの宝物。
これから色んなことが起こる。3人分、産むこの瞬間を味わうことになる。
そして、今まで経験しなかった多くのことを学んで考えていく。
想像できないだろうけど、子供部屋が児童館のように玩具でいっぱいになる。
仕事をしながら3人の育児を慌ただしく回すことになる。苦手だった掃除も出来るようになる。妊娠で増えた20kg痩せるために、栄養を考えて食事を用意し、長谷川あかりさんに出会ってファンになる。出来ない日もあるけど、子供にも美味しく栄養を考えた料理をするようになる。
忙しい日々は風のように過ぎ去っていく。
「今は大変だろうけど、将来あの頃よかったなと感じるよ」なんて言葉は、全く響かないくらいに。
だから、そのままでいいよ。
あの頃よかったなと思わせるのは、未来の自分に任せればいい。
生活感溢れる毎日を「意義がないもの」に感じることもあるかもしれない。「でも家族のために頑張らなきゃ」と気負うこともあるかもしれない。
『がんばる日も、がんばらない日も、あなたらしく。』
あなたは、あの時諦めたダンスの夢を、形を変えて追い続けられる。
だから、「表現者」であることを諦めないでほしい。
そのぐちゃぐちゃな感情も、忙しい日々のすべてが、あなたの表現の源になるから。
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