介護のあと
5月17日、義母が90歳で旅立った。
長い介護の終わりだった。
妻は何年も母の世話を続けてきた。疲れ果てて声を荒らげる日もあった。それでも亡くなった日、妻は静かに泣いた。
今は奥浜名湖のほとりで暮らしている。
妻と私。そして十九歳九か月になる老犬・八太郎。
義母を見送ったと思ったら、今度は八太郎の介護が始まった。昨年末から歩けなくなり、食事も排泄も手助けが必要になった。
最近、妻はまた歩くようになった。
介護が終わってから、昔好きだったウォーキングを再開したのだ。帽子をかぶって出かけ、友人と話しながら何キロも歩いて帰ってくる。以前より表情が明るい。
私は相変わらず家にいる。
犬の世話をし、本を読み、毎日コラムを書く。
義母が亡くなった翌日からブログを始めた。なぜ始めたのか、自分でもよく分からない。ただ、年老いたことを実感したのだと思う。
「いつか書こう」
そう思っているうちに人生は終わる。
ふと『徒然草』を読み返したとき、兼好法師に背中を押された気がした。
それから毎日書いている。
歴史の話を書き、哲学の話を書き、国際情勢を書き、ときには犬のことも書く。テーマはばらばらだが、不思議と時間を無駄にしている気がしない。
外へ出て歩く妻。
家にこもって本を読む私。
ずいぶん違う生き方だと思う。
それでも気づけば、二人とも以前より少し陽気になった。
老後とは案外悪くない。
出世競争も終わり、人にどう見られるかを気にする必要もない。
残された時間は決して長くないが、その分だけ大切だ。
これからも妻と、そして八太郎との時間を大事にしたい。
静かで、実り多い。
それで十分だと思う。
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