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みちくさ探検隊💪スポーツの世界に学ぶと、新たな社会の仕組みがみえてきた

■IT統括部長の突然の退職

お世話になっている顧客のIT統括部長が急に退職するという。
社内のOAシステム(いわゆる情報システム)やFAシステム(工場の生産系システム)を一手に統括推進するやり手、少なくとも私からはそう見えた。そんなITを統括する責任者だけに、抜けた穴はどうする? 何よりも本人の心中はいかばかりか? 食事をする機会をもらったので、この際だから、なにがあったのか突っ込んで聞いてみた。

  • ►辞める理由は? もしかして何かやらかした?

    • ▻いきなり地方工場への異動内示がでた。複数の部下から不満や悲鳴が人事にあがっていて、〝マネジメントに問題あり〟との事らしい。

    • ▻〝仕事は単に生活のためで、指示されたことを粛々とこなせばいい〟と思っているメンバが多い。それでも生産性はあげていかなければならないので、仕事への取り組み姿勢や意識を変えさせようとやってきたことが、ことごとく裏目に出た格好。たとえば、自立=自分の頭で考えて行動=してほしくて仕事を任せるのだが、ギリギリになっても進捗がみられず、相談すらないのでつい口を出すと、それが詰問しているように取られる。人材育成のつもりで指導したことが叱責だと受けとられるらしい。

  • ►確かにミーティングではあまり自分の意見を聞いたことはなく、大人しいなとは感じていたが…。そんな自主性に欠けるローパフォーマーは、IT部門だけなのか?他の部署も同様なのか?

    • ▻彼らが育ってきた家庭環境もあるだろうが、おそらく新人時代あるいは前職の職場環境の産物だろう。人の意識ましてや企業風土を変えるのは難しい。それもマネジメントの仕事なんだろうけど…。

  • ►最近は◯◯ハラスメントと言ったもん勝ちですもんね。

    • ▻会社や社会は、厳しい強面マネジメントより、弱い子羊の訴えを優先する傾向にある。

  • ►辞めたあとのITは大丈夫? 後任は決まっているの?

    • ▻自分なりの信念に基づいて構築してきたシステムや運用体制が変わっていくかもしれないと思うと寂しい。自分のDNAを受け継いでくれる人材がいてほしかった。

  • ▻ 自分の後任は決まっているらしいけど、知らされていない。だから引継ぎは文書を残すのみで直接会話はできない。

  • ►次の仕事はどうする?

    • ▻ハイクラス向けエージェントなどいくつかの転職エージェントに登録して条件を伝えると、すぐに何件か紹介された。しかしなかなか希望に見合う企業はないなぁ。(→それ、私も経験あります)

要するに、窮鼠猫を噛む…おとなしい部下が結託して反乱を起こした…ということか。当人にも反省の余地はあるかもしれないが、マネジメント責任だけが取り沙汰され、採用した人事の責任や、仕事ができない思考停止社員の責任が不問なのは、やりきれない。

これまでも、

  • セキュリティインシデントに遭遇し事業停止を招いたとして、執行役員情報システム部長が、責任をとらされて左遷

  • 役員会での発言が会社への批判ととられた本部長が降格

など生々しい現場に遭遇したことがあって、その都度、〝責任ってなんだろう?〟と考えてしまう。〝責任=けじめ〟のはずだけど、多くの場合、〝責任=見せしめ〟と感じてしまう。
さらに見苦しいのは、従業員自身がよほどの不祥事やコンプライアンス違反でない限り、会社は決して「Fire!」を通告することはなく(できない)、降格や左遷という手段で当人から「諸般の都合により…」と言わせるよう仕向けること。組織としての士気は下がるし、機能は停滞するし、会社にとっても、当人にとっても、周りにとっても気持ちのいいものではないし、何より時間と労力の無駄
売り手市場においては、限られた予算の中でとにかく〝頭数〟をそろえることが先行しすぎていないだろうか…スキルや価値観には多少妥協してでも…⁉ そして分業制が行き過ぎた結果、「人を集めて採用するのは人事部門の役割り」、採用した後は「人を育てるのは現場の責任」みたいになっていないだろうか⁉

■始めるとき/辞めるとき…自分の意志は?

常々、思っていたことなのだが…。

  • 会社員にも、スポーツ選手と同じような「トレード(交換移籍)」があってもいいのではないか?

  • 会社員にも「現役ドラフト」「FA権」「ポスティングシステム」といった制度があってもいいのではないか?

  • また必要な時に一定期間、必要な人材を貸したり借りたりする「レンタル移籍」みたいな制度もアリなんじゃないか?

  • そして、会社員にもスポーツ選手と同じような「引退」という儀式があってもいいのではないか? 

そもそも一般企業とスポーツでは組織(チーム)の絶対数が違うし、仕事の性格や目的が異なるので、同じ土俵で検討すること自体に無理があるのは承知のうえで…、まず会社員とスポーツ選手の進退における本人の意志についてざっくり比較してみた。

►始めるときの意志
 ▻会社員…入りたい会社を自分で探す(入りたい>来てほしい)
 ▻スポーツ選手…チームからオファーくる(入りたい<来てほしい)
スポーツの選手の場合は、スポーツ推薦やドラフト会議のような制度があり、私たちはその華やかさばかりを目にするけど、その裏では多くの選手が会社員と同じように所属先を探しているのだろと推察。だからチームからオファーがくるのは、有名選手の場合だけかも…。

►変わるときの意志
 ▻会社員…異動(会社の意志)/転職(自分の意志)/解雇(会社の命令)
 ▻スポーツ選手…FAやポスティングシステム(自分の意志)/トレードや戦力外通告(チームの意志)
転属や転籍は、会社員もスポーツ選手も似たような制度(異動や転職≒FAやポスティングシステム/解雇≒トレードや戦力外通告)がみられる。業界の著名人や有名な経営者であれば、有名スポーツ選手と同様に他の組織(チーム)からスカウトがくることもあるが、ほんの一握りに過ぎない。

►終えるときの意志
 ▻会社員…定年(法令で定められている)
 ▻スポーツ選手…引退(自分の意志)
最後は全然違う。スポーツ選手の「引退」は自分の意志で決めることができるのに対して、会社員は自分の意思とは関係なく年齢とともに訪れる。

ちなみに、

  •  公務員は会社員とほぼ同じ。入りたい組織を自分で探し、定年で幕を閉じる。

  • 会社役員であっても、「職を辞する、退任する」とは言っても、「社長を引退する」とは言わない。

  • 自営業は、自分のやりたいことを始める場合(自分の意志)と、親の後継ぎ=事業承継の場合(自分の意志半分?)がある。辞める時は、廃業であれ事業承継であれ、最後は自分の意志で決める。

  • 芸能人タレントは、人気がでれば黙っていてもオファーが舞い込むものの、そこまでなれる人はほんの一握り。最初は自分の将来を夢みて目指すものの、そこに至る道のりは長く、途中であきらめる人も少なくない。

  • 伝統芸能(歌舞伎、狂言、能、茶道、華道など)の世界は、世襲制が多いのかな。とすると産まれたときから進路は決まっていて、生涯現役を貫くことに。その道を極めることに運命と責任と誇りを抱いているのでしょう。

  • 政治家は、自分の意志で立候補して選挙で選ばれる立場。にもかかわらず、無知丸出しの失言を繰り返したり、一国のトップだというのに無責任に辞める首相がいたり、明らかに老害なのに権力の座にしがみつくジジイたちが睨みを利かせていたりする。世襲も根強い。

《LIFE》

■スポーツに学ぶ新たな戦略人事のシクミとは…

FIFAワールドカップ2026では、残念ながら日本は決勝トーナメントで強豪ブラジルに惜敗。世界で戦っている姿には感動した、本当にあと一歩だった。個人の技術力に加えて卓越した組織力は、他の強豪国にもいえる共通した要素。サッカー元日本代表監督・岡田武史さんの、『「自立」した選手が、「自律」したチームをつくる』というお話しを思い出す。「個人のスキルを磨き(自立)、自立した人たちが集まると、自ら考えながらチームとして最適な行動をとる(自律)ことができる」という。

なるほど会社組織でも全く同じ! 個人のスキルを磨き、一人ひとりが高い意識で行動すると(自立すると)、おのずと組織のリテラシが向上し、自ら考えながらチームとして最適な行動をとることができ(自律的に)、その結果、属人的な形だけの体制図から、真の組織力(ガバナンス)が構築できるはず。
しかし会社組織は管理社会。マネジメントは社内規程などルールを定め、従業員を厳しく管理したり行動を監視したりする。従業員は指示されたことには従う一方、指示されていないことはしない。
今の組織が抱える課題(組織の活性化、優秀な人材確保、ビジネス規模拡大)を改善するためには、短絡的に厳しい管理を行使して従業員をコントロールするのではなく、時間をかけてでも、自立できる人材育成と、その結果としての自律的な組織づくりに注力すべきではないか。 

そのヒントを、サッカー日本代表チームに学んでみた。選手が日本代表に選ばれるには以下の①~④と言われている。それを会社組織に置き換えてみると…、

① 所属クラブでの活躍

  • ►会社への貢献(収益、技術力、顧客満足度、効率化、人材育成など)を評価する指標として、多くの会社には目標管理制度がある。しかし定量的な達成度(収益)に対して、定性的な達成度(技術力、効率化など)はマネジメントの感覚に依存しているのが現状。

    • ▻プロサッカー選手の評価指標には、OBV(ドリブルやパスなどの行動がチームの得点確率にどれだけ貢献したかを評価)や、FIFA Power Rankings(攻撃・創造性・守備の3つの観点から選手のパフォーマンスを評価)などがシステム化。

    • ▻プロ野球でも打率や防御率だけでなく、OPS(出塁率と長打率を足し合わせて、打者の総合的な攻撃力を測る指標)や、FIP(被本塁打、奪三振、与四死球から投手の責任能力を算出する指標)などが主流に。

  • ►スポーツの世界ではチームごとに、試合の詳細を記録し分析する「スコアラー(記録員、アナリスト)」が、明確な役割をもって存在している。会社組織においても、

    • ▻人事部門に「キャリアコンサルタント」のような専門技能を持たせ、定性的な貢献を定量的に評価できるようなスコアリング指標(決してマイナス評価ではなく、プラス評価)を策定する。

    • ▻各部署にはスコアリング指標に基づき記録・分析する専門職としての「業務スコアラー」を配置。業務スコアラーは、社内会議に参加したり、時には客先に同行したりする。また適宜マネジメントに進言したり、従業員にアドバイスしてもいい。定期的に業務スコアラー会議を行って情報交換・情報共有を行う。

    • ▻マネジメントは社内キャリアコンサルタント+業務スコアラーと連携し、本人も交えて最適化されたキャリアデザインを検討・策定する。

② 監督の戦術プランへの適合

  • ►スポーツでも会社組織でも、実はこれが一番大事! サッカー森保監督は、「自分がイメージするチームの戦い方に合った選手を選んだ」という。逆に、ビジョンが見えず4番バッターと先発ピッチャーばかり揃えたチームでは勝てないということを、くしくも今年のWBC(World Baseball Classic)が証明した。

  • ►今の会社組織においては、上司は部下を選べないし、部下も上司を選べない。しかし目標を達成するためには、自部門をデザインするマネジメント裁量があってもいいと思う。例えば、自部門に必要な才能(人材)を選ぶ裁量(社内スカウト制度)や、部下の強みに適した場所を探す裁量(社内トレード制度)。そのためには部下の強みを正確に把握し、信頼関係を築くことが必要不可欠。このとき、先に挙げた業務スコアラーが活躍する。

  • ►人材獲得を社外にまで拡張した場合に鍵となるのがエージェントの存在。エージェントは業務スコアラーと連携して、目星をつけた人材を長期間追いかけるとともに、適切なタイミングでスカウトまたは交換トレードに動く。ただ残念ながら今の転職エージェントは、単に登録した人には会社を紹介し、会社には登録した人の中から紹介するだけの〝数撃ちゃ当たる方式〟なのに対し、スポーツエージェントは代理人として最後までサポートする専門家であることが大きな違い。ヘッドハンティングの場合も、会社からの依頼を受けた一方的な活動のように感じる。だから今の転職エージェントには、スポーツエージェントのような人材マネジメントの専門家としての資格とスキルを持った存在=キャリアチェンジサポート・エキスパートであってほしいと切に願う。

  • ►一方、社員の権利として「現役ドラフト制度」「社内FA制度」なども考えてみた。ただ、すべての社員が権利を主張しだしたら組織として機能しないので、やはり、「現在の部署での勤続3年以上で、かつ一定以上の評価」など条件設定は必要。なおかつ、「262の法則」の上位2割は組織にとって欠かせない〝人財〟なので待遇面で優遇し、中間6割の中の上位2割にあたる人材を対象にするとか。ちなみに下位2割は戦力外通告…と言いたいけれど、あまりに無責任なので、最適な職場を求めてトレード候補としたい。

③ 欧州のトップリーグでのハイレベルな試合経験

  • ►様々な経験を積むことで自分のスキルを磨くことは、ひいては会社のためにもなるはず。その場が社外にあるならなおさら。しかし会社員の場合、所属はそのままに所属組織以外で業務する制度は、業務命令としての「出向」と「常駐」くらいか。「副業」を認めている会社もあるが、あくまで自社業務の隙間で行うことが条件。

  • ►希望する社員には職種を問わず、「社会人インターンシップ制度」「レンタル移籍(期限付き移籍)」などの制度を広く普及させたい。ただし期間中は転籍しないなどの就業契約条件を明確に定める必要はある。長い目で見れば、必ず有益なはず。人が抜けることで業務が回らなくなったり、社外での経験の結果退職されたりした場合は、会社の問題として真摯に受け止めるべきである。

  • ►Panasonicや日産のように、会社の利益を確保するために大規模なリストラが行われる場合は、まさに社内キャリアコンサルタント+業務スコアラーキャリアチェンジサポート・エキスパートの出番。自由契約選手が目の前にたくさんいるのだから、

④ ピッチ内外でのメンタリティとチームへの貢献

  • ►森保監督は、「自分が一番という自負、さらに仲間のために、日本のために戦える協調性。その両輪を備えた選手を選びたい」とも言っている。仕事の成果(目標達成度)だけでなく、日常の態度やコミュニケーション、役割に対する自覚と責任は、社会人としてあたりまえのことではあるものの、社会人になりたての新人教育や配属先でのOJTだけで養えるものではない。

  • ► ドイツサッカー協会の「7つの育成段階と指導概要」がわかり易い(…というかすごい)。子どもから大人まで多くの人がサッカーを始めて、長く続け、成長していくために、7つの育成段階に分け、各年代の目標や指導方針などがまとめられている。

《ドイツサッカー協会:「7つの育成段階と指導概要」》

「日本独自のサッカー選手育成システム」だって負けてはいない。「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」

《JFA:ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way》
  • ►つまり、社会人として当たり前で必要不可欠なヒューマンスキルは、幼少期から醸成されていかなければならないということ。少しづつ改善されつつあるとはいえ、いまだ詰め込み式の暗記が要求され、早く効率的に「答え」にたどり着くことが求められるあまり、〝考えること〟をしなくなった金太郎飴のような今の小中高の教育制度から見直す必要があると考える。

「優秀な人材を確保したい企業」の一方で、「転職をあおる転職エージェント」が活況な〝社会構造的な矛盾〟。企業内においては「優秀な人材を確保したい」といいながら、一方で冒頭に書いたような人を追い詰める人事の〝自己矛盾〟。優秀な人材を一企業だけで囲い込むことで差別化を図る時代は終わった。もはや人材育成は一企業の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題だと考える。

■働く環境…あらたな選択肢のひとつとして…

以前、新たな組織のカタチについて〝組織視点〟で書いた。
みちくさ探検隊🤝「新たな組織のカタチ」の世界に行ってみた
の再掲になるが、あらためて〝人視点〟での内容を抜粋した。

―――フリーランスの私がお世話になっている中には、

  • F社…「フリーランサーやパートナ企業の方々によるバーチャル組織で、お客様の課題に挑み、そして解決」

  • K社…「秀でたプロフェッショナル集団によるコミュニティ企業」

をキャッチフレーズとしている会社があって、共通する特長は、

  • 正社員は、社長以下、取締役、事務担当など最小限。

  • 顧客サービスの実務の多くを担うのは、提携関係(アライアンス契約)にある自立している個人事業主やフリーランサー。しかも彼らは人が人を呼ぶことで輪を広げてきた信頼できる集団(信頼できる人が連れてきた人は、やはり信頼できる)。

  • これまで断らざるを得なかった顧客からの相談(一人ではできない/得意分野ではない)でも、案件を創出できるようになった。

  • 案件対応においては、個人事業主やフリーランサーで自律的にプロジェクトチームを組んで対応。

  • なにより社長がいつも元気よく笑っていて魅力的(経営者として辛いこと、苦しいこともあるだろうに…)。

  • ちょうどティール組織において、従業員を個人事業主やフリーランサーに置き換えたようなイメージ。

《最適なメンバでプロジェクトを推進》

フリーランスの私にはとても居心地がよく、ときにはプロジェクトメンバであり、ときにはプロジェクトリーダであり、ときにはフォロワーであり、ときにはコーディネータを演じる。各々は自立して自発的に活動しているので、チームを組んだメンバが持っているノウハウ(技術、セッションの進め方、資料の構成、勘どころなど)バックグラウンド(キャリア、活動フィールドなど)に接するのは超刺激的。自分の価値(単価)は自分で決める、必要以上に安売りする必要もない。
転職で天職に巡り合えるか?…というと必ずしもそうではない。自分にスキルと自信があると思うのなら(可能性があると思うなら)、このようなコミュニティに参加するのも選択肢の一つである。

■さいごに

総務省や厚生労働省による最新の長期推計によると、労働力人口は2025年平均で7004万人と過去最多(働く高齢者や女性、外国人が増えているため)だが、本格的な少子高齢化の影響が懸念されている2030年以降は再び減少傾向になると予測されており、業界を問わず人材不足が懸念されている。
いずれにしても優秀な人材を確保するためには、「会社の存在意義」①明快な目標(ビジョン、フィロソフィ)、②働きがい(達成意欲、承認欲求、明るく元気な風土)、③相互の信頼関係(マネジメントとメンバ、メンバ同士)が組織の基盤であり、「そこにいる人が魅力的」であることが大前提!
このようなあたりまえと思えることが課題である以上、会社組織…そして社会全体が、発想と仕組みの転換期にきているのではないだろうか。 

(PS.)

■著名人に学ぶ〝引き際〟の哲学

スポーツ選手の場合は…、

  • 五郎丸歩さん:「パフォーマンスを第一線で出し続けるのは、35歳が限界だという決断に至った」

  • 千代の富士さん:「体力の限界。気力もなくなり引退することになりました」

  • 浅田真央さん:「自分が望む演技や結果を出すことができず、選手として続ける自分の気力もなくなった」

など、やはり体力や気力の限界を悟ることが、自身の〝引き際〟のきっかけになることが多いよう。
偉人では…、

  • アーダーン・ニュージーランド元首相:「私が辞めるのは、このような特権には責任が伴うからです。自分が今、リーダーとして適切な時かそうでないときかを見分ける責任です」

  • 稲盛和夫さん:「情熱が尽きるような状態まで追求してそれでも成功しないのであれば、満足して撤退するのが真の引き際である」

  • 高田明・元ジャパネットたかた社長:「新社長が思い切りできるように、私は完全引退です」

  • 堀場雅夫・元堀場製作所社長:「ワンマン社長の首を切るのは自分自身しかない」と腹を決めた。

など、立派な政治家や経営者こそ〝引き際〟の判断を誤らないように思う。
 一方で、生涯現役を続ける人も。

  • NHKドラマ「カーネーション」で、ファッションデザイナーの小篠綾子さん(コシノ三姉妹の母)がモデルの小原糸子は、70歳を過ぎて引退(職人には「引退」という言葉が似あう)を勧める娘たちに向かって、「ウチを殺す気か!」と言い返し、「ウチはオモロないのはイヤや!」と72歳で自分のブランドを立ち上げるという場面があった。

  • 今なお現役の三浦知良選手は、「体力面に関しては、相手に走り勝てるかと言えば、正直、大変になってきているし、若い人と比べて回復にかかる時間は長くなっている。でも、試合に出たいという情熱は持ち続けていて、それがある限りは現役を続けたいと思っている」と。 

現役を退く人・続ける人にかかわらず共通しているのは、ワクワク感や情熱や潔さ純粋さ
そこは一般企業でも同じ。〝仕事をしている自分にワクワクするかどうか〟〝辛いことや苦しいことが、楽しいこと嬉しいことを上回っていないか〟。これが〝引き際〟の判断基準ではないか。
さらに、定年退職には一定の寂しさや不安が伴うものだけど、人生100年時代を迎えて、定年後も新たな仕事・居場所を見つけて第2・第3の人生をおくる人も多い。だから、定年とは、「老いて引退させられる」というイベントではなく、〝引き際〟というか〝明日への扉〟のきっかけを与えてくれるもの…と考えると、映画「マイ・インターン」でロバート・デ・ニーロ演じるベンが言った「Experience never gets old(経験は決して古くならない)」が沁みる。

《映画:マイ・インターン》

(おわり)

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